第一話 よく知らないけど知ってる世界。
人生とは一本道である。
人間二十年、下天のうちをくらぶった私がいうのだから間違いがない。
間違いはないのだが。
「一本道にもほどがあるでしょ……」
茉莉子が目を開けば、そこは平原のような場所だった。
平原というには宙に浮かぶブロックのようなものが見えたり、ブロックを積み上げた階段があったり、変な土管が生えている。
ただ、そのすべてを凌駕するような狭さがあった。
「これ、見えてるだけだ」
見えているだけだった。実際に遠くには平原が広がっているのがわかる。右も、左も。見渡す限りの大平原だ。
ただ、右にも左にも進みようがない。
進もうとすれば、見えない壁に阻まれるように体がつんのめってしまう。
必然、進めるのは前後だけ。
「これ、あれだ。あの、横スクロールの、アクションゲームだ。たぶん」
生きていた現実では見たことのない景色。
されどどこか、もっとポリゴンじみたどこかで見たことのある景色。
そして極めつけは前後にしか進めない不自由性。
茉莉子は、自分が異世界転生をしたのだと悟った。
「でも、よりにもよって、横スクロールの世界!?」
満足に動けないせかい。
もうちょっと、こう、ほら、乙女ゲームとか、オンラインゲームの世界とか、自由度高いところはいっぱいあっただろうに、茉莉子は変な世界に転生してしまったと嘆いた。
「でも、まあ、慣れ親しんでるからこれはこれでいいか」
諦めて、茉莉子は前を向く。
横に道がない世界。
であるのならば、えらばれたのは前方でした。
茉莉子は前に向き直る。
「とはいえ、何をしたものかな。誰もいないし、何もわからないんじゃしょうがない」
何とか目を細めてみたら、遠くに旗のような何かが見えた。
「旗があるならたぶん、誰かいるんでしょう。とりあえず、あそこめがけて進んでいくか」
よし、とひとまず気合を入れて。
さあ、とすっかり元気を出して。
右にも左にも進めない世界で、前だけを見るしかない世界で。
茉莉子は、一歩を踏み出した。
むぎゅり。
ぽわん。
その足元でぽわんとつぶされる小さな羊を犠牲にして。




