熱湯地獄or呼吸困難地獄
「えと…なにを、見てらっしゃるのでしょうか?」
「わかんないの?これですよ」
少女の指が示す先には、アサリがあった。
「あ…お求めの商品はこのアサr…」
「ちがーう!」
「も、申し訳ございませんでした…ではなぜ、アサリを?」
「面白いじゃないですか。」
少女はそう言ってアサリに視線を戻す。
「面白い…ですか?」
「ええ。少なくとも、あなたの顔を見るのに比べたらとても面白いですね」
褒め言葉か貶し言葉かはわからなかったが、なんとなくショックだった。
「ここにいるアサリって、もう幸せになることはないじゃないですか?」
「それはどういう意味で…?」
「熱湯地獄か呼吸困難地獄。」
「熱湯地獄と呼吸困難地獄…?」
「客に買われたら、茹でられて死んでいく。買われなかったら、廃棄にされ、水がない環境で息を出来ずに死んでいく」
「た、確かにそうですが…」
「それなのに、一生懸命出水管を出して呼吸してる。今ここで諦めたほうがずっと楽なのに、そんなことも知らないで生きている。滑稽でとても面白い…そう思いません?」
そう語る少女の目の瞳孔の中の闇はとても深い。そんな瞳に、大量のアサリが映されている。
「お客様、その、申し訳ございませんが、そろそろ閉店時間なので…」
少女は不機嫌そうな顔になる。
「もっと、見てたかったのに…」
そう思うならアサリ買えよ…と思ったが、そもそもこの少女はお金持ってるのだろうか。
「んじゃ、お兄さんの顔見てていいです?アサリの代わりに。さっきはアサリと比べたら面白くないって言いましたけど…まあ、何もしてないよりは楽しそうですし。」




