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第47話 魔族令嬢は、見舞いに訪れた国王の言葉にただ驚く

 ヴィアトリス王妃を断罪することが、王族としては正しいのだろう。

 でも、クラリッサとマリアンヌが泣いて暮らすようなことは、同じ女として受け入れられない。ベルフィオレ公爵夫人の思いが見えた。


「クラリッサとマリアンヌを助けるために箝口令を敷く。だから、ヴィアトリス王妃を重病人に仕立てるのですね?」

「理解が早くて助かるよ。表向きは王家の別邸があるベルフィオレ公爵領で、療養をすることになっている」

「表向き……?」

「実際はデズモンド預かりとなる。十日後、移送されることが決まった」

「えっ、デズモンド?」

「……フェルナンド卿が、随分お怒りでな」


 少し肩を竦めたエドワードは、私の手からティーカップを取り、それをテーブルに置いた。そうして、手を握りしめると、唐突に「すまなかった」といって頭を下げた。


「君を苦しめた王妃を裁くことが出来ない。私の力不足だ。許して欲しい。本当であれば、民の前でその首を──」

「エド、私は大丈夫よ。クラリッサとマリアンヌも守られるなら、それに越したことはないわ。それに、私も倒れていなかったら、ベルフィオレ公爵夫人と同じことをいっていたと思うの」

「リリアナ……」

「エド、こっちを見て。私は、あなたの憎しみに染まった顔を見たかったんじゃないのよ。だから……決断を悔やまないで」


 そんな顔を見るために、ヴィアトリス王妃を追い詰めたんじゃない。ましてや、王妃の首を民衆の前に晒したかったわけじゃない。

 そっとエドワードの頬に触れると、彼の鋭かった瞳が見開かれ、小さなため息が零れた。


「君は、本当に優しいな。それに、とても強い」

「そんなことないわ」

「そんなことあるさ。エリザを死に追いやり、君を傷つけた王妃を許せるんだから」

「許したわけじゃないのよ。でも、フェルナンド家に移送されるなら……死ぬ方がどんなに楽かと思うことでしょう。お兄様を怒らせてしまったのですから」

「フェルナンド卿はそんなに恐ろしいのか?」

「ええ、とっても。魔狼の群れさえ尻尾を丸めて逃げ出しますわ」

「……それは、心強いな」


 あのお兄様を怒らせたのだから、仕方がない。後は、お兄様にお任せするのが一番だろう。


「でも、クラリッサとマリアンヌ、それに子爵たちのお気持ちは晴れないでしょうね。ヴィアトリス王妃を憎まれておいででしょう」

「そうだな。そこは、これから話し合わなければならないだろう」


 それに、今までヴィアトリス王妃に媚びてきた諸侯たちは、これからどう出るのか。きっと、ロベルト王とエドワードは、乱れた内政を整えるのに大変だろう。


「……陛下のお心は、大丈夫ですか?」

「それがだな……」


 口籠ったエドワードがやや困った顔をしたその時、扉がノックされ、サフィアが顔を出した。


「リリアナ様、国王陛下がおいでですが、お通ししてよろしいでしょうか?」

「陛下が?……このような格好で失礼じゃないかしら」

「そんなこと、気にする人じゃないよ。デイジー、リリアナのショールを」


 ベッドの上でお会いするのも申し訳ないと思っていると、苦笑を見せるエドワードはデイジーからショールを受け取るり、私の肩にかけた。

 それから迎えたロベルト王は、憑き物が落ちたようなさっぱりとした顔をしていた。


「気分はどうだ、リリアナ」

「はい。おかげさまで、こうして体を起こせるようになりました」

「それはなによりだ」


 にこにこと笑いながら、デイジーが用意した椅子に腰を下ろしたロベルト王はエドワードを見ると「話はしたか?」と問いかけた。

 話ってなんのことかしら。ヴィアトリス王妃がフェルナンド家に移送される話かしら?


「その顔は、まだしていないのだな」

「兄上……私はお断りしたはずです」

「なにをいう。国家の先を考えるのも、王族の務めだろう」

「そうですが……」


 困り果てた様子のエドワードを説得するようなロベルト王は、私の方を見て「リリアナからも説得をして欲しい」といった。


「……あの、陛下。なんのお話かわからないと、説得のしようがありません」

「いや、なに。そう難しいことではない。私は王位をエドワードに譲ろうと考えている」


 とんでもない発言をさらりと口にしたロベルト王に反し、エドワードは額を押さえて大きくため息をついた。

次回、明日8時頃の更新となります


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