表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
4/7

縁と責任



 困ったことになったね。実際さ。

 人の世の時間で言うところの、午後六時。

 酔っ払った人の子が、私の住処⸻祠を壊して、そのままいなくなってしまった。

 ああ、恨みはしてないよ。するものか。でもね、困った。人間世界の物質には干渉できない、してはいけない決まりだからね。


 祠を前に悩んでいる私の後ろを、トラックが通り過ぎて⸻止まった。

 降りてきたのは、二十代そこそこの、背の高い青年だったよ。


「壊れてる……」

 青年はそう言って、祠の前にしゃがみ込んだ。折れた柱を拾って、泥を払って。元の場所に戻してくれた。

 最後に手を合わせて、立ち上がる。

「あとは管理してる所に連絡すればいいか……? どこに訊けばいいんだ?」

 そこ、そこに神社あるよ。そこで訊いて。

「あ、神社……」

 青年は神社の敷地内の社務所へ、駆け込んだ。素晴らしくいい子だね。


 やがて青年が社務所から出てきた。

 ふむ、何かお礼がしたいね。まあ、私が何もしなくても、心根の優しい子にはいいことが起こるものだけど。


 なんて考えていたらね、彼の乗り込もうとしたトラックの前輪のあたりで、何か黒いものがぞわりと動いたんだ。

 いけないね。あれは、よくないものだよ。

 黒いものは、青年の首にぐるりと巻き付いた。私はちょっと焦ったよ。お礼がまだだったからね。


「うっ……? なんだ?」

 彼は顔を歪めたよ。苦しいんだろう、息が出来ないんだろう。彼は座り込んで呻いた。

 いけないね。祠に触ったせいか、この地に巣食うよくないものに目をつけられたかな。私のせいだね……。

 やむを得ないよ。

 私は苦しそうに首を押さえて身を縮める青年に近づいて、その背に手をかざしたよ。

 浄化の炎よ、彼の手に宿り、彼の力となれ。

 彼の手が燃え出した。

「うわ!?」

 大丈夫大丈夫、それは熱くないよ、きみにはね。

 彼の首に巻き付いた黒いものは、燃えて、炭になって、消えた。

「何だったんだ……?」

 彼は首を傾げたよ。

 うーん、言えたらいいんだけどね。

 まあ、またいずれ機会があれば。


 いつでもきみを見ているよ。

 それが私にとれる責任ってものだ。




【つづく】

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ