秋といえば初恋の秋
[あぁ、それはズルい]
秋といえば?
食欲? 芸術? 読書?
人によって思い描くものが違うだろう。
ー
「早くいくぞ〜。島屋」
「おい待てっ、喜納」
学校からの帰り道……。
空は緑がかり、夜には鈴虫が仕事をする季節。
紅葉が綺麗な公園の通り道で、オレは喜納を追いかけていた。
定期テストだから、図書館でベンキョー会しよって、誘われたのだ。勿論喜納に。
見た目は金髪で、平成のギャル感の強い喜納は勉強なんてできるのだろうか?
そんなことを呑気なことを考えながら公園を歩いていたら、目の前に影が落ちた。目線の先には大きな建物。
青空を埋め尽くすかのような建物だ。
大きなカッコいい表札には、
“鈴木上福図書館”
オレらは足を進めた。
ー
温かい空気がオレらを出迎える。
不思議なことにザワザワとしていた空気は無くなり、落ち着いている空間にはご年配の方が多い気がする。
一角に設けられている自習スペースを目指して、館内を歩く。
奥にある自習スペースにたどり着き、中に入る。
木製の温かみを感じさせる長机を仕切るパーテンション。
オレらは隣同士の席に荷物を置き、勉強道具を広げ始めた。
「いい?島屋、コレからは真剣勝負だからね」
「アイアイ、そうですねー」
「はぁ!アンタ聞いてんの?」
「さっさとやろうぜ?」
「ぐぅ、それもそうね………、」
運も良くほとんど人がいない自習スペース。
喜納とオレともう一人の空間には、カチカチと時計が時を刻む音が鳴り響く。
勉強を始めようとする喜納を横目に見る。
カバンから何かを取り出し、意外とシンプルなシャーペンで、真面目に文字を書き出した。
喜納の目には黒縁のメガネ。
初めて見る姿だ。
少し大きめだろうか?
いや、喜納の顔が小さいのかもしれない。
四角っぽい黒のメガネは、向日葵のような瞳を主張させ金髪の髪に異様にマッチしている。
それにしても、本当に………、無意識に顔に熱が集まるのを感じる。
ひんやりとしている手で顔を覆い隠し、指の隙間から喜納を覗く。
あぁ、それはズルい。
オレは時計の音なんか聞こえなくなった。
聞こえるのは自分に恋を伝える心臓の鼓動だけ。
「ねェ、ここ教えてくんない?」
「………」
「島屋?って、耳赤いけど平気?」
「……あぁ、」
「あぁ、ってどっち!」
自覚してしまったら、もう遅い。
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