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職場は近くあるべし!

目的地は、電車で僅か35分しか経っていないにも関わらず、駅の目の前には大きな山がそびえ立っており、自然に囲まれており、空気がとてもおいしかった。


駅も、ホームに自動販売機がポツンとあるだけで閑散としていた。


オレは深呼吸をし、電車での疲れを癒した。


久々に電車に乗っただけで色々なことがあった。


やはり忘れることのできないことは、手に残る柔らかい感触であろう。


せっかく気持ちがいいのに、駅の至る所には手配書の写真が貼ってあり、せっかくの景観及び興奮が台無しであった。


外出もそこまでしない上、賞金稼ぎもしないので手配書を見る機会はなかったので、じっくりと見ることとした。


色々、顔写真とかもあって面白い物である。

中でもとりわけ目立つのは、懸賞金1000億ゼニーと破格の値段がつけられているやつの手配書が目立っている。

高くても50億であるため、かなりの額である。

世界中で手配されている唯一の人物だ。


世界最強の人物、名前も素顔もわからないが、髪色は赤色との目撃情報もあるそうだ。

あまりの強さゆえ、この世の人類とは思われず、名前は厨二病の全開の『魔王』と呼ばれている。


前回の戦争で連合軍の数カ国の兵士及び政治家などを一人で殺害したと書かれている。

その一方で、スシ島で活躍した七福人のうちの一人を殺したとの情報も書いてある。


正体がわからず、強さも桁違いのため、額もふざけた値段なのであろう。

そのため、世界中で世界最強として手配されているそうだ。


正直、オレは、この手配書を見て思うことは色々あった。


まず、何が世界最強だ。

実際、戦ったら、今のオレの方が強いであろう。全くムカつく手配書である。


とりあえず、1000億ゼニーは手に入れなさそうなので諦めることにした。


改札に向かって歩き出すと、なぜか目の前に見覚えのある2人が仲良く歩っている。


髪の色や、スタイルの良さからして絶対にカナニとスバルだ。


出会ってしまったら今度こそ『変態! ストーカー!』とカナニに罵られることだろう。オレは気配をできるだけ断ち、自動販売機の後ろに隠れながら2人が改札を出るのを観察した。


周りの人の視線を感じるが、何故オレに注目しているのか皆目検討もつかない。


大きい駅ではないのですぐに改札を出てくれた。

2人はここが地元なのであろう。


タクシーに乗ってどこかに消えてしまった。


少し寂しい気持ちにもなった。

正直、カナニはどうでも良いが、スバルみたいな天使には、そうそう会うことはできないだろう。

まあ、カナニにもひどいことをしたのは確かであるし、友達を守るためにオレと戦おうとしていることから、いい奴なのであろう。


オレには、タクシーに乗るお金はないので、歩いて職場に向かわなければならない。


都会とは違い、高層ビルがないせいか、太陽の暑さをより感じる。


駅からの道は、調べてこなかった。

基本的に、地図アプリを使えば辿り着くことができるからである。


スマホが古く、地図アプリがアップデートできていないのは、少し気がかりだが。

しかし、今回の職場は、目の前に見える山の付近にあるらしいので、迷うこともないのであろう。オレは、ゆっくりと歩き出した。


すぐに着くであろうと思っていたが、意外と距離があった。


かれこれ20分くらい歩っているが、目的地まであと少しかかりそうだ。

スマホの音声案内も疲れてしまったのか『次の角を右に左折してください』と意味不明なことを言い出している。


やはり、新しいスマホに変えるべきであったか。


今、8時55分だが、9時15分に集合とのことなので、走らなくてもギリギリ間に合うであろう。


オレには、社会人に共通概念の10分前行動は通用しない。

10分前行動をしてはいけないという、オレの作った宗教の掟に従っているからだ。

文句がある奴は出てこい。憲法の話でもしようではないか。


それに、走って汗をかきたくはない。

脇汗が気になって授業に集中できなくなるのは嫌だからである。


しばらくすると、一本の坂道があった。

どうやらここを登っていけば、目的地へと着くらしい。

急な坂ではないが長く続いている。


駅からの距離を考えると明日の仕事は、急な体調不良、又は、親戚の葬儀で休むかもしれないと思った。

歩いている間暇なので、おそらく来るであろう、オレにとっての最難関の試練に備えることとした。


それは、自己紹介だ。


個人的には、自己紹介という制度はなくして欲しいと思っている。

学生も同じ気持ちである人が多いであろう。

確かに、同じグループとして行動する以上、必要なことだと思う。


ただ、名前を言えば十分だと思う。

暗黙の了解として、面白いことをいわなければならない制度は、どうにかならないのであろうか。

学生なんて自己紹介だけで、1学期のカースト制度が決まってしまうといっても、過言ではない。

滑ってしまったら地獄行き決定なのである。


何故、これから始まろうというのに、最後の審判を行うのかが、皆目検討もつかない。

どのような生徒がいるかわからないが、挨拶するからには、ある程度、好印象を持ってもらいたいのも事実である。


1つ目の方法としては、名前と『よろしくお願いします』というシンプルパターンだ。

この方法では、副担任としての威厳を感じさせることができるとも思える。


ただし、この方法には重大な前提条件が必要だ。


イケメン、又は、美女であること。


オレみたいな、イケメンや美女でないものがこの方法をとってしまうと、『無愛想』や、面白いことを言えなかっ

た『臆病者』などのレッテルを貼られてしまう。


しまいには、自己紹介が終わったと思われず、拍手がされず微妙な空気になることもある。


一方で、前提条件の揃った方々が行うと、教室の後ろの方から『クール』や『知的』と言った声が聞こえるであろう。

自分がイケメンなのか美女なのか悩んでいる諸君は、ぜひこの方法で自分を客観視して欲しい。


2つ目の方法としてはやはり王道だが、面白いことを言うことであろう。

普通ならこの方法は、人気者か嫌われ者という、デッド・オア・アライブ、状態になるのである。


ただ、年上、特に教師という立場だと、滑ったとしても、『滑り芸のおじさん』というイメージで逃れられることがある。


オレは、面白いことを言うことにした。ここからが難題なのだ。


何をいうかが問題なのである。もちろん下ネタはご法度だ。


バレなければ、面白い話は脚色しても構わないであろう。


芸人やアイドルのエピソードトークは、120パーセント脚色されていると思って構わないであろう。


ただ、あまり人と接しないオレにとっては、脚色するためのエピソードがない。


あるといえば、今日電車に乗った時人と接したぐらいだ。


今日起こった出来事を思い出し、なんとなくウケるであろうネタが思い浮かんだところで、どうやら目的地についたようだ。


現在時刻は9時12分。全く問題ない。


やはり、考え事をしていると時間が過ぎるのが早く感じる。


そこの山は高さが10メートル以上ある塀でグルッと、1周囲まれている。


その上、上空の至る所にドローンが浮いており、防犯カメラの役割をしている。

また、塀の上には、戦闘用ドローンも飛んでいた。


ちなみに戦闘用ドローンとは、侵入者がいた場合に、侵入者を感知し、上空から【破壊光線】を発して攻撃してくれる。


破壊光線の威力は、一瞬で戦車は破壊できるくらいと言われている。

侵入者か否かは内蔵されているAIが、骨格・顔などから判断して未登録かを判断する。


ドローンの大きさは他の一般的なドローンと変わらないが、特殊な素材でできており、ダイヤモンドより硬度が高いと言われている。

最強のオレでさえも、上空20メートルにある戦闘用ドローンを壊すことは至難技といえよう。


とりあえず、敷地外ではあるが、怖いので、両手を上げながら、玄関を探すことにした。

このドローンといい、敷地面積といい、五十嵐というやつはいくらの授業料をぼったくっているのだ。


それに、そんな高い値段を払える家の子供などはロクなやつがいないであろう。

家に帰りたい気持ちを抑えながら、玄関を見つけることができた。


寺の門のような玄関には、大きく『五十嵐組』と書かれた表札がある。


セキュリティーを万全にしていて、この広さ。しかもこの表札。


就職先を間違えた気がする。今日のオレの仕事は本当に副担任なのか?

職務内容が『白い粉を運べ』だったらどうしよう。


大家の婆さんが、オレを抹殺するためにここまで来させたのではないのか。

玄関開けたら、20人くらいのおっさんに、リンチされるのではないか。

海の水は本当に冷たいのか。


最強のオレは、不安になりながらインターホンを押した。

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