定職についたら負けであった
「先生? 泣いてるんですか?」
聞こえたのはスバルの声だった。
「いや、ちょっとな・・・」
てか、このふわふわの感触なんだ?
頭に柔らかくてすごく気持ちいのがあるのだが。
この体勢ってことは? 膝枕かよ! これか! いいことってやつは。
「先生。先ほどは、ほんとうに、すいませんでした。傷は大丈夫ですか?」
「あれくらいは平気よ。 ん? 治ってね? てか今何時だ?」
「今は、0時くらいですよ。あれから、下で私泣いてて、五十嵐先生とかも、別に他の人にいう気はなくて、そのまま帰って、
チサトさんが、『風呂も、トイレも、家賃を払ってないのだから、所有権は自分にあるから使いなさい! あいつが目覚めるまで遠慮して使わなさそうだから、使わないとあいつを差し出すから! どーせ大人数で攻めれば勝てる』と気を遣ってくださって、
カナニはお風呂借りてます。
ちなみに、気絶させてしまった成分はカナニ由来なんですよ。おそらく能力でないから、先生の治癒力も強化されたんだとは思います」
「本当に、気にするな。なるほど。だから毒として体が認識できなかったのか。おかげで治ったよ。 ありがとう」
「あの、先生。謝って許されるとは思っていません。私は自分を許せません。生徒解除しますか? それか、気が済むまで拷問していただいて構いません」
「おいおい。オレは最強だぜ? あんなもん朝飯前だ。だって夕飯食べた後の話だろ?
とにかく、オレこそすまない。変にトアウマを植え付けてしまった。
正直、オレはあの場からも逃げれたし、殺されるように誘導してた。
一応、昼の時点で、妹だって1パーセントくらい思っていたからさ。
モモも妹に渡したかったのかなって思ってさ。
それにさ、遺族としては、彼女を守れなかった彼氏にイライラをぶつけたいじゃん?
だから殺されようと思ってさ。やっぱ今思うとそれは、婆さんの言った通り悪手だったのかもしれないけどな。
とにかく、気まづいかもしれないが、普通に接してほしい。じゃないと退学にします」
「そんな・・・一応、わかりました・・・」
「それに、モモなんて訓練でオレのことをボコボコにしてたぜ? 多分そういう遺伝子なんだよ。今なら勝てるけどね? 多分・・・」
「そう思いたいです・・・」
「とにかく、一緒に暮らすんだ。綺麗なことだけじゃ済まねーだろ」
「あんなことしたのになんで平気な笑顔なんですか。 あーー。おねーちゃんが惚れるのもわかりました。じゃあ、普通に接します。嫌なことあったら退学にしてください」
「それで良い」
「じゃあ、先生。私のこと好きにしていいですからね? おねーちゃんより大きいですよ?
顔はおねーちゃんのほうが可愛いかもしれませんが・・・」
スバルは自分の大きな胸を持ち上げた。
拝啓、モモ様 先程の約束は守れそうにありません。
手も足も、その他出してはいけない物も出してしまいそうです。
スバルは続けて、
「おねーちゃんに怒られそうなのでこれくらいにしておきますね。今のウザくないですか? 冗談はこれくらいにし
ておきますね」
えええええ。
完全に本気にしたオレが恥ずかしいではないか。もう口聞いてなんかあげないぞ?
血縁関係者なら浮気じゃないと思っていたのに残念だ。
そういえば、なんで今まで、10年間一回も夢にも出てこなかったのに、今日になって、しかもあんなにリアルだったのだろう。
スバルの能力を受けてから、今のオレの能力がすごく成長した感覚があったが、それと関係あるのだろうか。効果範囲が今までより広げられそうな気がしたんだけどな。
いや、勘違いか。ずっと戦ってこなかったし。無効化のオレに効くわけないもんな。
古代の人が世界全体に無効化能力を覆えた理由を考えていたが答えは出なさそうなので諦めよう。
スバルは膝枕をやめるという鬼畜な所業を行ったかと思えば、洗面所の方を確認し、冷蔵庫からプリンを取り出してきた。
「先生? あーん」どうやら、プリンをオレにくれるらしい。
「食べていいのか? それに、じ、自分で食えるよ・・・」
「仲直りの儀式としてしたいです・・・受け取ってくれたら、許されたと思いたいです・・・」
「あ、あーん」27歳。マヌケ面のオレ。
人生で1番のマヌケ面をしたかもしれない。こんな経験して良いのであろうか。
決して下心があるわけではないぞ、モモ様。スバルのためを思ってですな。
あ、プリンがめちゃくちゃうまい。
「うまい。今度買いに行こうか?」
「いいんですか? やった!」この子笑顔はやはり素晴らしい。
何回も食べさせてくれて、あっという間に一個食べてしまった。
ただ、最後の一口はスバルが食べた。
「あ、先生おきたの? 」パジャマ姿のカナニが髪を拭きながら近づいてきた。
「あ、お風呂先にもらったよ~」
正直、パジャマ姿ってのはエロい。
「好きに使ってくれ。じゃあ、夜も遅いから、スバルも先に入ってきな」
「もう体調、大丈夫ですか? 一緒でもいいですよ?」
なんか、亀裂が入ると思った関係が前より近くなった気がする。
「いいから言ってきんしゃい」
その間、オレはカナニとカナニの過去について話し合った。
カナニも、オレの過去を聞いて、打ち明けたいと思ったそうだ。
えげつない話であった。男嫌いも当たり前である。あっという間に時間が過ぎた。
スバルが、風呂から出てきたので、オレも入ることにした。
風呂のドアを開けると、女物のシャンプーやらなんやらが並んでいた。
最近は、シャワーしか使わなかったから浴槽に水がある光景は久しぶりだ。
ん? この水って・・・いやいや・・
そういえば、プリンは甘いから喉が渇いたしな・・・・
心頭滅却をして、水を飲むのは諦め、体を洗い浴槽に浸かることにした。
とりあえず、1日の汚れを落とし、浴槽に浸かった。久々の、浴槽は結構気持ちよかった。
色々考え事をしていると喉が渇いてきた。
最強はまたしても、水を飲むのを我慢した。
オレが、風呂を上がっても、二人はまだ起きていた。
「先生一緒に寝よ?」
ん? ん? カナニの発言なのか?
誰かに操られていると思ったので効果領域を発動しておいた。
「部屋で二人で寝れるだろ?」
「えー。はじめての部屋で女の子二人寝せるの? 襲われたらどーするのよ! 」
一応、カナニに触れてみたが態度も変わらない。操られてはいないらしい。
「いや、逆にオレに襲われたらどうするのよ?」
「別にいいよ?」酔ってんのか、眠いのかわからないが、これ以上は危険だ。
スバルも近くにいたので助けてもらおうと思ったが、
スバルも「そうだね! 一緒に寝よー!」とオレを部屋に引っ張っていった。
「オレの布団、リビングにあるしさ? な? 襲われたら死んでも助けるから! やめない?」
「えーー。先生が真ん中で寝ればいいじゃん!」
電車じゃないんだから・・・
「オレ、寝相悪くて、殴っちゃうと困るし」
2人の意志は固く、結局、帰りの電車と同じ配置で寝ることになってしまった。
「おやすみ! 先生!」
「おやすみなさい! 先生」
「ああ。おやすみ。」二人はすぐに寝てしまった。疲れが溜まっていたのだろう。
オレも早く寝たかったが、目を瞑っても全く寝れない。
目も息子もギンギンじゃねーか。目を開けると暗さに目が慣れてよく周りが見える。
二人ともパジャマのボタンがはだけているではないか。
最強とは言えない『息子』の自主性を尊重をしたいところではある。
しかし、先生になった以上はそんなことは言っていられない。
担任法と青少年育成条例の条文をしっかり思い出し、心頭滅却を行なっていると、枕元のスマホが光った。メッセ
ージがきたようだ。
『先生寝た? 無事解決して良かったよ。2人を襲っちゃダメだよ~! 代わりにあーしのパジャマ姿で我慢してね! 魔王様! 』と、写真付きのエマからのメッセージであった。
あーあ。これはダメだ。いくら最強でもダメだ。全員が強すぎるよ。
やはり、定職についたら負けであった。
最強の長かった1日が終わった。
これで、【就活編】が終わりました。
少し長くなってしまいましたが、読者の皆様ありがとうございました。
しばらくしたら、教師編、復讐編を作りたいと思います。
その時はよろしくお願いします。
何か直して欲しいところがあれば、コメントで遠慮なくお申し付けください。




