エロ本の隠し場所はいまだに悩む
五十嵐はなぜか、キラキラした目をしている。
1件のメッセージが来た。エマからだった。
『先生おひさ! もう家ついた? エッチな本かくせなくて悩んでる? 』
『さっき会ったばっかだろ。怖いくらいその状況だ。アドバイスくれ。電話していいか?』
『ウケるんですけど。いいよ!』
「5分待ってて!」
そう五十嵐に言って、オレは部屋の中に入ってエマに電話をかけた。
「まずさ、部屋の構造を教えてよ」
「うまく説明できないけど、風呂、トイレ、洗面所、使っていない部屋が一つ、大きさは8畳くらいね、あとキッチンとリビング」
「あんま、隠せそうなとこないね」
「今、部屋は全く使っていないから二人に使ってもらう。基本的にオレはリビングで過ごしている」
「んー・・・本棚ないの?」
「ない! あったらそこに隠す!」
「てか、何冊あるの?」
「3冊!」
「ほんとは?」
「はい。7冊だと思う」
「んーー。とりま、床下はやめたほうがいいね。五十嵐先生の能力で床下掃除された時に出てくると困るし」
「そうだな」
「てか、ベットなの?」
「いや、マットレスの上に布団敷いて寝てる」
「じゃあ、マットレスに沿って置いとけば良くない? 布団ならあんま触らなくない?
遠慮するよ普通。それに、掛け布団を丁寧に敷けば動かしにくいよ!」
「天才! 今やってみるは!」オレはエロ本をマットレスの上に一冊づつ並べてた。
はじめての割に素早く、綺麗に並べられた。大きさ的に、あと1冊分のスペースがあり、もったいない気もした。
その上に、布団を敷いて、掛け布団も丁寧にかけて置いた。
今日の夜はいい夢が見れそうだ。
散乱している部屋の中に、唯一、整頓されている布団があるのが、逆に目立つが、気にしないでおこう。
「できたぞ! 完璧だ! 助かった!」
「いつでもどーぞ」
「そういえば、今日はスバルからのサプライズがありそうね!」
「サプライズ?」
「今、メッセージ来てさ、ちょっと色々教えちゃった! 楽しみにしていてね!」
電話しながらメッセージって送れるんだ。
「ま、楽しみにしておくけど痛くないよね?」
「それは保障できないかな・・・スバルなんて、拷問好きだからね? あんな顔して。何個か作らされたもん。拷問器具。」
肛門好きかともって一瞬期待した自分が恥ずかしい。
大切な生徒が変なプレイに目覚めても困るしな。
教師としてあとでしっかり言っておかないと。
『こうもんで遊ばないでください』と。そう決心した。
「一応気をつけておくよ」
「周の人や動物とかには使っていなかったけど、何に使うんだろーね!あのカバンにも何個か入っているんじゃないかな? 小さく畳めるものもあるし。ま、先生には使わないでしょ!」
「そう祈るよ・・・」
「また電話していい?」
「別に?」
「じゃあ、暇な時、鬼電するからよろしく!」
「無視してやる!」
「じゃあ、また!」
「先生、 またね!」
エマとの電話は、あっという間に終わった。
ちょうど、5分経っていたので、玄関を開けると五十嵐は大人しく空を見ながら待っていた。
「待たせてごめん。汚いから本当に覚悟しておいて」
「気にしないから大丈夫だ」
五十嵐が入り玄関が閉まった音で、女の人が家にいるという実感が湧いた。
あれ、茶色いうがい薬は使ったっけ?
そうではない。集中しろ白銀。
五十嵐は、部屋に入り全体を見回すと、
「思ってた以上に汚いな」
「だから、近寄るなって言ったじゃないか」
「いやいいのだ。それに布団が綺麗なのは私も同じだ。忙しくてもきちんと直すのが大切だからな。気持ちも良くなるし」
ごめんなさい。ごめんなさい。ごめんなさい。ごめんなさい。
「じゃあ、床だけ軽く掃除するがいいか?」
「じゃあ、お願いする。あ、できれば布団は綺麗なままで」
「言わなくてもわかっている。人様の布団を荒らすほど無礼な女ではない」
「じゃあ、始めるぞ」見てみると面白い能力の使い方だった。
小さな竜巻が、部屋のゴミを拾って、部屋中を一周するイメージだ。
まずは、試しに何もない部屋をやってもらった。
使っていない1部屋は、短時間で、埃ひとつない綺麗な部屋になった。
次に各部屋もやってもらうと、結構汚れが取れた。洗濯機の下などはかなり埃が溜まっていた。
最後にキッチンとリビングをやってもらった。
結構、アメの袋や硬めのティッシュ、使い終わったペンなどいろいろなものが出てきた。
集めたゴミをゴミ袋に入れるには、手で触る必要があるため、オレがやっていたのだが、何故か五十嵐も手伝い始めた。
「おい、白銀! 本当に金は大丈夫か?」
「いきなりどうした。」
「いや、ここの家のティッシュがな結構、質が悪いのか、硬くてな?」
「ああああああああ、いいの。いいの気にしないで。はい。しまってー。ゴミ触ったら手洗おうねー」
オレは無理矢理、五十嵐を洗面台に連れて行き手を洗わせた。
そして、三人で暮らすということで、キッチンのテーブルの位置を変えることにした。
今のままでは、部屋のスペースを広くするため、テーブルを壁にくっつけており、三人が座れなかったのだ。
五十嵐がテーブルを上げてくれたその時、
「おいなんかあったぞ? 椅子に引っかっているみたいだ。本かな?」
五十嵐は左手でテーブルを浮かせながら、しゃがみ、右手でその本を取った。
オレは、気がついた。あれは隠し忘れたエロ本だ。
そういえば、以前、5年くらい前、布団の下に引いて、いい夢を見ようとしたことがあった気がする。
だからさっき、素早く並べられたのか。
体が覚えていたのか。
その時、7冊では、中途半端だから買ったのだった。
その本には、おそらく巫女服を着た女性が乗っている。
オレは急いで五十嵐に近づき、右手にある本を取り上げようとした。
その時、無意識に能力を発動してしまい、五十嵐が能力を発動し続けることができなくなり、テーブルが五十嵐に向かって落ちてきた。
『ズドン!』という大きな音が床に響いた。五十嵐には当たらなかった。
何故ならば、オレがしゃがんでいる五十嵐を押し倒して、テーブルはオレの背中にあった後、床に落ちたのだ。
正直、背中が痛い。
「ごめん。いきなり能力を発動してしまって・・・」
「いや・・・いいのだ。その・・この体勢は・・ちょっと・・恥ずかしいというか・・・」
五十嵐は床に仰向けの状態で寝ており、オレが五十嵐に覆い被さる状態だ。
正直、今にもおっ始める体勢だった。
「わざとじゃない」
「わかっている・・・」
「ただ、もう少し待ってくれ」
「もう少しこの体勢でいろと?」
なぜなら、勢いで手放した本のページがめくれて、床の上で広がっているからである。
特によろしくないページである。
しばらく対策を考えていると、玄関がなぜか空いた。
「お邪魔します。先生達、大丈夫~?」
カナニとスバルが入ってきてしまった。
テーブルの音で大家の婆さんに、見てくるよう頼まれたのであろう。
部屋の構造上、キッチンとリビングは、玄関と、一本で繋がっている。
オレらの体勢が丸見えであった。
スバルとカナニはオレらを見て固まってしまった。
何故か五十嵐は上の空で二人に気が付いていない。
エマだったらなんとなく察してもらえるが、ダメであろう。
せっかく名誉挽回したのに、カナニに『変態』扱いされてしまう。
カナニがスバルに何か耳打ちし、二人とも盛り上がっている。
カナニがゆっくりと歩いてきて本を手に取った。
そして・・・
なぜか、空いていた部屋を指差して、そこに投げ入れてくれた。
よくわからないが助かった。
二人は下に戻っていった。
何故か、スバルの表情がさっきまでと違って見えた。
やっと、オレは五十嵐から離れた。五十嵐も起き上がってきた。
「ごめんな。ひどいことして悪かった。ビンタの一つでもしてくれて構わない」
「わ、私こそ、見苦しい姿を・・ああいうのははじめてで・・・」
「どちらかというと。いや。とりあえず、テーブル戻せそう?」
「あ、ああ。任せてくれ」
部屋は綺麗になり、家具の位置とかも布団の位置以外、変化した。
あまり家具とかはないので、部屋が広々としていた。
「終わったな!」
「ありがとう。変なことに能力使わなくてもいいのに」
「これくらい当然だ!」
「本当は、茶でも出さないといけないんだろうが、ないので、下の店に行こう」
オレ達は下の店に戻った。
下の店では、案の定、音がうるさいと怒られたが、軽く受け流しといた。
二人もあんなことがあったのに特に変わりがない。
五十嵐とスバルが大家の婆さんと話をしていたので、カナニになぜ、あの行動を取ったのか聞いてみた。
「先生あれでしょ? 五十嵐先生があの本見つけちゃって驚いて、怪我しそうになったから守ったんでしょ? 五十嵐先生そういうの苦手そうだし? だから、先生は目につかないようにしたかったんでしょ?」
「ま、まあな」
「ちゃんと今回は頭使ったから! もう変態なんて言わないし!」
「あ・・・・ありがとう」
今回はオレが変態なだけで、そういう時は言っていいんだが・・
黙っておこう。うまく教育できたということで良しとしよう。
「今からでも遅くないぜ? 断っていいからな?」
「全然平気。あまり見えなかったけど、リビングで寝ていいの?」
「いや、さっき本投げた部屋使ってなかったから、そこを二人で分けてくれれば・・嫌だったらいいんだけど・・」
「え? あそこ使っていいの?」
「嫌じゃなきゃな」
「やったー! ありがと先生。でも大丈夫? どこで寝るの?」
「オレはいつもリビングで寝てるからそこで寝るつもり」
「部屋じゃなくていいの?」
「リビングがいいくらい! てか、あの・・・なんで本のこと何も言わないの? 怖いんですけど・・・」
「それは、先生が持ってても、変態じゃなくて、なんか理由あんのかな?って。
別に、先生じゃなかったらやっぱ嫌かな」
「なんかよくわからないが、ごめんなさい」
「何よそれ。とりあえず、部屋のことスバルにも伝えてくる!」
そう言って、オレ以外の4人は談笑を楽しんでいた。
18時くらいになって、五十嵐が帰ることになった。
「あら。帰っちゃうの? ご飯食べてく?」
「いいえ。大丈夫です。仕事が残っていますので。また、遊びに来ます」
「いつでもいらっしゃい!」
五十嵐と大家の婆さんの会話が終わったので、全員店を出た。
「では、私はこれで失礼する」
「おお。なんかあったら連絡する! 気をつけてな。他の生徒によろしく。交流はしよう!
気持ち的にはオレ、五十嵐組の副担任だから! 会えるの楽しみにしてる!」
たった数時間しか会ってないのに、別れが少し辛かった。
「先生、今までお世話になりました。ただ、別れだとは思ってません。白銀先生が五十嵐先生との交流をしてくれると思うので、すぐに会えるからです。先生のことは大好きですしこれからもずっと大好きです。
副担任の先生のところに、合宿に行ったと思って欲しいです」
「私こそ、こんな担任ですまない。またスバルに会えることを楽しみにしている」
と五十嵐とスバルは抱き合った。
「先生。散々お世話になっておいて、なんか軽く出て行く感じで申し訳ないですが、私は五十嵐先生と白銀先生の二人がいてはじめて私たちが成り立つと思っています。
担任が二人いるクラスなのです! なので、私たちが交流する限り、絆は消えないと思っています」
「ああ、私も大切な生徒を白銀だから任せられる。
正直、白銀の元にいくって言ってくれた時、嬉しかった。自分が教えるよりいい環境で育つんだから。
また会える日が楽しみだな!」
と五十嵐とカナニも抱き合った。
そういえばオレとは抱き合ってくれなかったような・・
ま、いいか。
五十嵐は「また会おう!」と言って足に風をまとった。
その風を利用して空を飛ぶようだ。相変わらず便利な能力だ。
「あ、待って、先生! 強化してあげる!」
スバルが能力を五十嵐に使った。
「おお。これで速く帰れるな?! では!」
と言って空を飛んで、数秒で見えなくなった。
「じゃあ、部屋行くか?」
なんか、ホテルに誘う人のような発言をしてしまったと反省。
「私たちの家に帰りましょう!」
「イエーイ!」と別れの後だが、テンションは高いようだ。
後々、ホームシックになられても困るから良いことなのだが。
大家の婆さんのところに置いてある、二人が持ってきた荷物を持って部屋に帰った。
時間も時間であったので、夕飯の心配をしていると、スバルが今夜の晩ごはんを作ってくれるらしい。
サプライズとはこのことか?
材料は、オレらが部屋の掃除をしているときに、隣にあるスーパーで買っていたらしい。
今日のメニューはなんと! カレーだそうだ。
料理らしい料理は何年ぶりだろうか。
今晩はアボカド一つだと思っていたから余計に嬉しい。
そういえば、あのアボカドどこにやったっけ。
とにかく、キッチンで綺麗な子が、オレのために料理をしてくれるのはとても嬉しいことだ。
エプロン姿も良いな。
個人的には服を着ていなくてもいいとは思うけど。
鍋を煮ている間、一応部屋の説明をした。
と、いっても、特にいうことはなく、とにかく自由に使ってくれとお願いした。
「できたよーーー!」
2つの皿がテーブルに並べられた。
「スバルはいらないの?」
「実は・・下の店でプリン食べ過ぎて・・・お腹いっぱいなの」
「そうだったのか。健康には気を付けてな」と無意識に、おじさん発言をしてしまった。スバルは綺麗にご飯を盛り付け、その上に出来立てのルーをかけた。
オレとカナニが座り、スバルは反対側に座った。
「いただきます!」オレは、まだ湯気が出ていて、熱々なカレーを口に運んだ。
ゆっくり味わってみると・・・
え。
嘘だろ?
マズイ。
マズイというレベルではないぞ?
食べたことはないからわからないが、言い表すなら、『ウンコ味』だ。
困ったことに、かわいい顔して、ウンコ味のカレー作っちゃたよ。
いや、あり得ないか。
天使だからうんこは出ない。
だから、ウンコ味もわからないか。
てことは、そうかオレの味覚がおかしいのか? その可能性しかない。
オレは、恐る恐る、二口目を食べてみた。
あれ。おかしいな。味がな。
正直、ここまでキャラが薄かったが、味を濃くしなくても。
ウンコ味だから単純に濃いと言うわけでもないんだが。
匂いはカレーなんだけどな。ただ、カナニは美味しそうに食べている。
スバルが毒を盛った痕跡もない。
何故なら世の中の毒はオレにはほとんど効かないよう訓練しているからだ。
カナニは自分の舌を治してるのか?
いや、カナニは自分を治せないはず。
じゃあ、なぜだ? オレは頭をフル回転させた。
そういえば、今朝あいつ・・・激辛調味料とか言ってなかったか?
そうか。
カナニは味覚が死んでいるのか。
案の定、スバルのカレーに今朝買ったであろう調味料をかけ、おいしそうに食べ始めた。
正直、見ているこっちが涙が出てくる。
だからウンコ味の美味しそうに食べているのか。
そんな中、天使が味の感想を待っている。
オレとしては悪気がない女の子、しかも天使を傷つけることはできない。
ただ、口が麻痺して、『おいしい』と言いたいが声が出ない。
なら体でアピールだ。
オレは皿を持ち、思いっきりカレーを口のなかにかきこんだ。
「先生、はやっ!」
あとは、グッドの手の形を作れば良い。
「そんな美味しかった?」
オレは、首を縦に振った。
「やったーー!」この笑顔を見れてオレは幸せだ。
「おかわりいります?」
断りたいが、あの笑顔をもう一度見たい。
体は限界だが最強は屈してはならない。
カナニの能力が効かない自分が不便に思えてくる。
頭ではダメだとわかっているが、おかわりをもらった。
そのあとことは、覚えていない。
意識が遠くなるのを感じた。
なぜか床が近付いてくる。




