本当の歴史なんて誰も知らない
(スバル視点)
私だけは知っている。
白銀先生の秘密を。
能力者だと公表できないのには他にも理由があることを。
あの無効化能力は、本当の歴史にとっても重要なものなのである。
そして先生の能力は、私の唯一の家族である、おねーちゃんと同じ能力でもあった。
私は、今のクラスに来るまでは、おねーちゃんと孤児院で暮らしていた。
おねーちゃんはとても優秀で、将来有望だった。
明るくて、優しくて、妹の私でさえ可愛いと思った。
背も高く、私と同じピンク色の髪を長く伸ばしていた。
そんなおねーちゃんは、ある日、無効化能力が発現したのだ。
その日は、私たちがお世話になっていた孤児院の長が死んだ日でもあった。
時期も重なり、どこか神妙な面持ちをしていた。
能力が発現したおねーちゃんは、用事があると孤児院を出てしまった。
別に、私のことを嫌いになったわけではないとのこと。
ただ、どうしてもやらなければいけないことがあったそうだ。
ついていきたかったが、幼いからダメだと言われ、私は孤児院に残るしかなかったのである。
孤児院を出る前、本当の歴史と言って不思議なことを教えてくれた。
おねーちゃん曰く、人類ははるか前から存在していた。
今わかっているこの世界の数千年の歴史よりはるか昔にも人類は存在した。
その時代の文明は今よりもはるかに優れており、空想上の生き物とされている、ドラゴンなども多くいたらしい。
地形も、今とは大きく異なっていたそうだ。
そして、人類全員、能力者であったらしい。
そんな世界をある能力者が支配していた。
そいつは、人類、生物、全てを支配しようとした。
どんな能力かは謎ではあるが、とても強かったらしい。
どの時代でも、生物の感情は変わらないのである。
どんな生物でも、感情がある
赤子を守ろうとするし、異性にモテようとするし、欲もある。
自由を取り戻すために戦争を起こした。
どんなに強い能力者で戦いに望んでも、その支配者には勝てなかった。
そんな中、革命家の中に、ある子供が生まれた。
その子は神の子として奉られた。
そう。それが、先生やおねーちゃんと同じ能力を持つ子であったからだ。
戦争は一気に終結へと向かった。
どんな能力でも倒せなかったやつを無効化したからである。
そして、方法は謎だが、二度とそのような支配者が現れないように地球全体を無効化領域で覆った。
その後、大幅に減少した生物、能力を使えなくなった人間、戦争によるダメージ人類、生物は滅亡した。
また、長い年月を経て進化が起こり、今、私たちが習う歴史が起こったのである。
そして、無効化能力が世界を覆っていたため、150年前まで超能力という概念はなかった。
そして、白い光が降り注がれたあの時、地球を覆っていた、無効化能力が解除されたのである。
能力を発現させる光ではなく、あれは無効化がなくなる白い光、というのが正しい理解なのである。
そして、一部の能力を持つ人間達が、能力を使えるようになったのである。
無効化能力は消滅したかと思われたが、世界の選ばれし人間の体に寄生するようになった。
能力自体が人間性を選び代々伝えていく。
前の寄生主が死ぬと、近くにいる善人にまた寄生する。
今後、あのような、古代人類が受けた酷い歴史を繰り返さないために。
基本的には悪人には入り込まないようプログラムされていたらしい。
こんな嘘みたいな話を聞かされた。
おねーちゃんは優秀だったが、この事は流石に他の人にはいえなった。
一人ぼっちになる私に対し、冗談を言っているのかとさえ思ったからだ。
もちろん、私は信じていた。
ただ、正直、おかしい人に思われたくはなかった。
五十嵐先生にも、カナニにもいえなかった。
ただ、今日確信した。おねーちゃんが言っていたのは正しかった。
今まで、無効化能力を見たかったことがなかったが、目の前におねーちゃん以外の人が現れた。
先生も能力を開示できないのは、この能力を他の人に知られることを防ぐ必要があるからと言っていた。
本当の歴史を知っているからこそ、守らなければならないのであろう。
正義感の強かったおねーちゃんは、きっと無効化能力の力で無駄な争いを避けるために戦争に参加したのであろう。
そんな中、10年前の戦争によりおねーちゃんは死んだ。
【魔王】と呼ばれる世界最強の男が殺したのだ。
別に、殺したところを直接見たわけではない。
戦争が終わって3年後、おねーちゃんを探してる私は、
戦争中に魔王に七福人の一人であるピンク色の髪の女の子が殺されるのを見たという人に会えて、
手配書の内容と一致し殺されたことが分かったのだ。
世界最強の男は殺人鬼である。
平気でおねーちゃんを殺したことは容易に想像できる。
悔しかった。私の唯一の家族を殺した奴が。
おねーちゃんは正義のために戦争に参加していたはずなのに。
もしかしたら、能力が怖かったのかもしれない。
絶対復讐してやると誓った。
ただ、復讐しようにも私の能力では戦えない。
アイツの能力を逆に強化してしまう。
ちょうどその頃、五十嵐先生に出会い、クラスに誘われた。
そこで、1級の五十嵐先生に能力を強化して戦って貰えば、復讐を成し遂げることができるかもしれないと思った。
もちろん、五十嵐先生も大好きだし、クラスに入った理由はそれだけではない。
正直、他力本願な自分は惨めだと思う。
でも、そんなことはどうでも良い。
やつを倒すことしか興味がない。
そんな中、白銀先生もおねーちゃんと同じ能力をもっていた。
先生の人間性を考えれば当たり前である。
見知らぬ私たちを命懸けで助けたのだから。
おねーちゃんと同じ善人。
そして、あの身体能力・心理を操る力。
まさに、最強である。
能力が寄生したくなるはずである。
魔王は何個も能力を持っている特殊な男というのを聞いたことがある。
でも、白銀先生なら無効化して、殺してくれるであろう。
正直、白銀先生にそんな重荷を背負わせたくはないが、
もしかしたら、同じ能力者である先生が命を狙われるかもしれない。
もしかしたら、おねーちゃんのことを知っているかもしれない。
それに、最強の人から色々学べるかもしれない。
もちろんそれだけが理由で生徒になったわけではない。
普通に優しくて、強くて、一緒にいたいと思ったからである。
ただ、いつかは五十嵐先生と白銀先生に魔王退治に行ってもらいたい。
考え事しながらの荷造りは、予想より早く終わった。
*
(カナニ視点)
名前の由来は輝きという意味があるらしい。
何故か、笑われることも多かった。
私はこの名前を気に入っている。
家はパパが早くに死んでしまって、貧乏だった。
それでも、毎日、楽しかった。
ただ、ママは仕事から帰ってくるといつも傷ついていた。
何があったかはわからなかったが、帰ってくるたび私は傷を治していた。
ただ、私はママの心の傷を治せなかった。
ある日、私が起きたらママは自殺していたのである。
後でわかったことがあった。
ママは私の生活費のために体を売っていた。
ある男に騙され、多額の借金を負い、体を売るしかなかったのだ。
美人のママは、ジジイにとっても人気であったのであろう。
男嫌いになった。
男の悍ましい性欲がママを殺したのである。
ママはいつも、いい男の人もいると言っていた。
頭ではわかっている。
パパみたいにいい人もいることを。
ただ、どうしても男は好きになれなかった。
もちろん、今のクラスの男子は好きである。
それは同学年だからかな。
白銀先生にあった時、電車での一件で先生もいつもの男連中の類だと思ってしまった。
でも、酷い態度を取ったにも関わらず、先生は私を守ってくれた。
先生がいなかったら今頃・・・・・・
ママの言っていたことがやっと実感できた。
先生はいい男の人であった。
近くで色々感じてみたい。
一緒に暮らしてみたい。
この感情はなんなんだろう。




