自称最強の勝利?
赤い稲妻が剛力の全身を覆った。
「力がみなぎってくるぜ! これはすごい! 俺様の部下入れてやるよ! 俺様といれば世界征服もできるぞ?」
「・・・・」スバルは無視していた。
「おいおい! 大男! 振られてんじゃねーか! キモさも増したか?」
相変わらず副担任はすごい男である。まだ煽る勇気があるのだから。
もしかして、ただのバカなのか?
普通この状況なら絶望的であり、煽ることもできないのが普通だ。
「相変わらず、口の減らねー奴だな。なんか作戦でもできたか? ま、どんなのでも無理だろーけど。」
「んーーーー。土下座で許してくれる? 無理だよね。じゃあ、武器使えば勝てそうな気がする!」
と言って、近くにあった、颯太が使ったであろうバットを取り出してきた。
「おめー本当に狂ってるな! バットで俺様を破壊できると思っているのかよ!」
「だってそうだろ?『素手』対『素手』より、『素手』対『武器』なら勝てそうだろ?」
申し訳ないがやはり、バカだったのかもしれない。
それとも、死を目の前に、そう考えないとやっていけないくらい追い込まれているのか。
剛力は、ダイヤモンドより硬いドローンを破壊できる男だ。
武器を攻撃しても、スバルの能力で強化しているから攻撃が効くことはないであろう。
ただ、生徒をここまで守り、剛力をここまで追い詰めた男を私は一生忘れない。
いつか来世で会えたのなら、その時は、こんな私でよければ、好きにしてくれて構わない。
ま、副担任のような人が、私なんかに興味を持つとは思えないがな。
副担任が死ぬことがわかってはいたが、私はこの戦いから目を逸らさないと決めた。
もちろん、最後まで副担任の勇気ある行動を見るためである。
「じゃあ、死ね! ただ、おめーは強かった。それだけは死後の世界で自慢してこい!」
「だから、最強はオレなんだよ!」
副担任は、バットを剣道の面を打つように構えた。
その瞬間、剛力はものすごいスピードで副担任に近づき、空いている腹に思いっきり右ストレートを打ち込んだ。
「おっせえ、上がったのはパワーだけじゃないんだぜ? カウンターも打てなかったな!」
「・・・・・・・・・・」
副担任は、そのまま前に倒れてしまった。
すまない。
すまない。
今までありがとう。一生忘れない。
私は心からご冥福をお祈りした。
「やはり強いな。久々に強い奴だっだ。過去一番と言っても良いだろう。
最後の攻撃で腹に穴は開くと思ったがな。タフな奴だぜ。
ま、この威力なら流石に臓器は全部破壊されているだろう。じゃあな!」
剛力は勝ちを確信し、副担任に背を向けた。
正直、私は悔しかった。あと一発たった一発。
副担任は最後まで、生徒を守る選択を取った。
カナニを守らなければ、勝てていたのかもしれない。
おかげさまで、剛力はボロボロだ。
私のために体力を削っておいてくれたのだ。
これなら私は、剛力を倒すことができる。
副担任の努力は無駄にしない。そう誓った。
ただ、私も最悪な状況を見落としていた。
剛力は、
「おいそこの金髪! 俺様の傷を治せ。それくらいはまだできるだろ?」とカナニを脅し始めた。
忘れていた。
治されてしまったら、副担任の努力が、無駄になってしまう。
「無理よそんな体力残ってないし」
カナニは泣いている。怖さではないであろう。
悔しさ、悲しさ、などあらゆる感情が心の中で混沌としているからであろう。
「こいつ、嘘ついてまっせ! 剛力さん!」カナニの心が読まれてしまった。
相変わらず厄介な能力だ。
「じゃあ殺せ!」
副担任が命をかけて守ったのに、こんなにあっさりと殺されてしまうのか?
許さない。 許せない。 許せない。 私がお前らを殺す。
風を足に集中させ、飛ぶ準備をした刹那、聞き覚えのある声が聞こえた。
「すきあり! めーーーん!!」
ふざけた声であった。副担任の声だ。
剛力の後頭部目掛けて、ジャンプしながら面を打ったのだ。
「ドーーーーン』というバットの鈍い金属音が、静かな教室ではよく聞こえた。
その後、剛力が頭から血が吹き出して、バタっと倒れた。
カナニが目に涙を浮かべながら、
「先生・・・・なの?」
「どーも変態です!」
副担任は、とびっきりの笑顔で返事をした。
剛力が倒れたところを初めて見て動揺したメガネをかけたやつが、
「た、たしかに耐えたのは? すばらしい。だ、だけどバットで剛力さんの頭を破壊できるわけありません!
おそらく、血糊でそう思わせる作戦だ!」
かなり動揺しているようだ。
そもそも、血糊の意味がわからない。
副担任も、
「そんなことしてなんの意味があるのか? いいから確かめてみろよ? クズ野郎!」と笑っている。
メガネをかけたやつが、「剛力さん、大丈夫ですか?」と言いながら剛力の頭を触った。
「頭蓋骨が完全に折れていて気を失っている」
そう言ったメガネをかけたやつの顔はひどいものだった。
「だからいったろ? オレは最強なんだ!」
ありえない。
副担任は本当に、一人で、剛力を倒してしまった。
ただ、体はボロボロであろう。
今、私が向かえば一瞬でのこり二人を倒せる。
待っててくれ。今行く。
そして、どうやったかはわからないが、生きててくれてありがとう。
「おっと。お忘れかもしれないが、生徒に爆弾ついています。五十嵐さん。あなたは来ないでいただきたい。動いたら生徒を爆破します!」
剛力のことで頭がいっぱいだったから忘れていたが、爆弾を解除しなければならなかったのだ。




