自称最強 vs リアル最強
(五十嵐視点)
私、五十嵐美鈴は、能力に恵まれた。
私は風を操れる。
ある時は、強風を起こし、人を攻撃できる。
ある時は、空を飛び、移動できる。
ある時は、大勢の人や多くの物を風で運べ、便利である。
他にもいろいろなことができる。恵まれたからこそ、人の役に立つべきだと思う。
私は、悪党が嫌いだ。
なので、この間までNTR隊に所属していた。
担任なった理由は、少しでも悪い能力者を減らしたかったからだ。
正直、賞金稼ぎと言われているが、私自身、金にはそこまで興味がない。
ただ、強く、心優しい能力者を育てていきたい
だから、設備をよくしてより良い環境を作り、立派に育てることを行なっていた。
初めは1人か2人くらいで十分だと思っていた生徒が、20人近くに増えてくれた。
生徒は、私の命である。それなのに私は生徒を危険にさらしている。
生徒のために行ってきたことで、生徒を危険に晒しては、本末転倒である。
今までの副担任はひどいものだった。
今の副担任は、正直、なんといっていいかわからない。
信頼できる大家さんがある日電話をくれた。
副担任で悩んでいるなら、凄腕がいるから雇ってみればと。
私は、副担任が自分と同じく強ければ、生徒にも目標となって良いのではないかと考えていた。
ただ、来たのはマヌケ面した5級であり、しかもお金で動くと言われ、正直がっかりした。
実際に見てみると実力は弱かったが、あいつは他の先生にはない物を持っていた。
私と同じ生徒に対する思いやりだった。
午前の授業では、お金よりも、カナニを守った。
しかも自分の身を挺してまで。
会って数分しか経っておらず、しかも、カナニには嫌われているのに、無意識に体が動いていたのである。
今までそんな奴はいなかった。
あの授業以降、私は自分の愚かさに失望していた。
副担任として採用すべきだったのは、思いやりのある人だった。
もちろん、面接に来た人々の中に、思いやりがありそうな奴は、ほとんどいなかったと思う。
副担任は稀に見るいい奴だ。生徒と昼食を食べた副担任もいなかった。
実際、わたしから契約延長をお願いしたいくらいだ。
私は見たのだ。
大男と戦うことを決意した時。
いつものマヌケ面ではなく本気の顔を。
彼は『生徒のことなどどうでもいい』と言っていたが、私にはそう思えなかった。
私がそう思いたいのかもしれないが、あの顔は、子が襲われそうな時の親の顔であった。
だから言いたい。もう戦わなくて良いと。
たしかに、生徒に危害が及ぶのは避けたい。
おそらく彼は少しでも敵の体力を削る作戦なのであろう。
ただ、『最強なので、自主性を尊重しますは!』と言った顔が何故か、何故だか、全てを解決しますという顔に見えたのだ。
ありえないことはわかっている。
ここから、一人の犠牲も出さないことは、万に1つもないであろう。
私のために剛力の体力を削ろうとしてくれるのはありがたいが、私自身、生徒を人質に取られ3人を相手にすると流石に勝ち目がない。
剛力一人でも勝てるかは分からない。
でも、私は行かなければならない。
金を失っても。命を失っても。
生徒を守らなければならないのは私である。
いいのだ逃げて。頼むから逃げてくれ。
これは私がまいた種である。
こんな私たちのために命を捨てないでくれ。
たしかに自称最強というだけあって、それなりに剛力の攻撃を耐えている。
ただ副担任は、『諦めない!』 と言いながらなんども果敢に攻めては飛ばされてしまっている。
今は剛力がバカにして本気にしていないからいいものの。
そうはいっても体力が尽きるのも時間の問題であろう。
そんな中、私は、気がついた。
一回飛ばされるごとに、生徒に近づいて触れながら顔や仕草で慰めている。
エマには何か頼み事をしていたようだ。涙が溢れてきた。
自分が窮地の時に生徒を思いやる奴はいないであろう。
すまない。あなたをなめていたこと。
そして、失礼な態度をとってしまったこと。
『白黒はっきりつけようぜ!』という副担任の言葉は私にとって、それこそ絶望であった。
とうとうきてしまったのだ。時間を戻せるならやり直したい。
死へのカウントダウンが始まってしまった。
戦いが始まってしまった。
副担任は剛力に突進していった。
正直、今までと全く同じである。
少し、呆れてしまった。
私は、副担任に少し期待していて、彼の表情や画面越しにも伝わる殺気から、何か策があると思っていたからだ。
もちろん、私の立場で偉そうに言えることではないが。
先ほどから観察するに、副担任は結構、剛力の攻撃に耐えることができている。
これはすごいことだ。
やはり、同じ肉体強化系だからであろうか。
剣は刺さっていたのに、なぜ剛力の攻撃に耐えられているかのは不思議なことではあるが、この際どうでも良い。
私が、剛力の攻撃を受けたらかなりのダメージになってしまうだろう。
ただ、副担任には、攻撃力がないと私は考えている。
剛力を倒すには、英賀の破壊光線よりも威力の強い攻撃をしなければならない。
午前の授業を見る限り、飛んできた剣を破壊することもできていなかった。
スバルに強化してもらっていたにもかかわらずだ。
それから予想するに、副担任の攻撃が剛力に効くことはまず考えられない。
もちろん、弱い力でも何回も当てればいつかは効くかもしれない。
ただ、それには何回も当てるスピードが必要だが、副担任の攻撃はさっきから受け流されたりかわされたりしている。
画面越しから見ても普通のスピードに見えた。
同じやり方では。
何回やってもダメージを与えるどころか攻撃を与えることすらできない。
突進してきた副担任に対し、剛力は反射的に右足で副担任の顔面へとハイキックをした。
私は、また飛ばされての繰り返しだと思っていた。
が、ここから予想外のことが起こったのである。
副担任は、剛力の右ハイキックを左腕でブロックした。
もちろん飛ばされることなくだ。
そして、副担任は、驚いている剛力の顔を思いっきり右ストレートで殴った。
身長差はあったものの、右ハイキックを蹴り少し体重を後ろに避けていたためか、顔面に当たり、
剛力が思いっきり飛んでいった。
あの、剛力が飛んでいったのだ。




