悪い奴だったの!?
颯太の気持ちもわかる。
クズ野郎のさっきまでの優しい発言からは悪い奴には見えず、これは訓練であり、爆発しないであろうと考えたのであろう。
その上、実際に、物理的爆弾を設置したわけではない。
ただ、生徒に握手をして触れただけである。
本当に奴が爆発することができる人物とは考えなかったのであろう。
オレ自身、爆発するとは考えていなかった。
おそらく、クズ野郎の能力は触れたものに印か何かをつけ指を鳴らすことでそのものを爆発できるのであろう。
ただ、これで恐ろしい事実が判明した。
さっき英賀に穴を開けた時、オレは残り2人の中に、カナニと同じ治癒することのできる能力者がいると思っていた。
が、一人は心を読む能力であり、もう一人は爆弾を爆発させた。
さっき爆発しないと考えたのも、どちらかが治癒能力者だと考えていたからだ。
もちろん、心を読めると言ってた金魚の糞が、治癒能力者の可能性があるが、カナニも言っていた通り、治癒には体力を使うのである。
見た目からして体力のない金魚の糞が、治癒能力者である可能性はオレは低いと思っている。
と、いうことはあの3人組は、治すことを前提に攻撃していないのか?
カナニの能力練習のために行っているのか?
正直、担任さんの知り合いの性格が恐ろしく感じた。
カナニが颯太の元に走っていき、颯太の手当をした。
みるみる火傷した皮膚は再生したが、意識は英賀同様に戻らない。
カナニは、治癒能力者として優秀であると思う。
この年齢で瀕死の人物を元通りに戻せるのはすごいことだと思う。
しかし、カナニも疲れてきている。当たり前の話である。
瀕死状態を二人も治したのである。
カナニの残りの体力を考えると、傷の程度にもよるが、治せて後1人か2人であろう。
「こいつ厄介だな。殺すか?」と大男がクズ野郎に聞いた。
「いいえまだ結構。どーせ、後数回しか治せない。その時の絶望の方が面白いでしょう」
3人の関係図がなんとなくわかった気がする。
大男は見立て通り一番強い。ただ、頭を使うことは苦手なのであろう。
作戦などはクズ野郎に委託しているようだ。
大男はクズ野郎を信頼しており、それに基づいて行動している可能性が高い。
金魚の糞は、能力的に集められたってところであろう。
「あの! ありがたいとは思っていますがやりすぎです! 私も今後はそこまで治せません! お見かけしたところ皆さんの能力では治せないと思います! 少しレベルを下げていただきたいです!」
カナニが少し怒った表情で訴えている。
3人は特に何も言わなかった。
「おい! そこで寝てるやつ! 五十嵐と連絡取れるか?」
「さっき、スマホもらった気がします。本当に繋がるかは知りませんけど」
オレは、ポケットから取り出し、大男に投げた。
オレは安心した。
『訓練終了したら電話してくれ』、と言われていたが彼らが代わりにしてくれるからだ。
カナニが治せないと聞いて、一応、訓練をやめることにしてくれたみたいだ。
実戦訓練とは言っていたけど、特に生徒たちに何も教えていないし、ただ生徒をボコしただけな気もするが、そこは人それぞれということで、気にしないでおこう。
3人はニヤニヤしながら、大男がスピーカーモードにして電話し始めた。
「なんかようか。あたしは暇じゃないんだが」
担任さんはイヤイヤそうに電話に出た。
あんたが電話かけろって言ったんだろうよ。
オレが電話してたら、少し精神的にやられるところであった。
「いやーーーー訓練終わりましたよーーー五十嵐先生」
「お前は誰だ? これは副担任に渡した携帯だが?」
知り合いのくせに他人のふりをする担任さん。
最後の最後まで演技をする担任さんが意外で面白かった。
「あー副担任は教室の後ろで寝っ転がっているぜ!」
大男に殺意が湧いた。別に言わなくても良いことであろう。
オレがまるでサボっているようではないか。
『副担任は後ろにいるぜ』で良いであろう。
オレは、一応、あぐら座りに体制を変えた。
「そんなことはどうでもいい。一体誰なんだ。私の知り合いではないようだが?」
オレも含め、クラス全員が驚いた。
ただ、ドッキリのネタバレのタイミングを失って、ネタバラシができない状況にも思えてはきた。
「俺様の名前は剛力だ。この間は俺様の仲間が世話になった。生徒を殺されたくなかったら、1億もってこい!」
「持ってこいって言われて持ってくバカがいるか?」
「まあ、そうなるはな。ただ、そうも、言っていられなくなるぞ?」
大男は自分たちのやったことを説明し始めた。
2人の生徒を見せしめに使ったこと。死にそうだったが1人の生徒が治し、今は気絶中であること。
その生徒ももう回復が使えないレベルであること。生徒全員に爆弾を設置したこと。
以上のことを、簡潔に伝えた。
「副担任の知り合いのイタズラか? 見えないと思って嘘をついているようだが、ここにはドローンがあるからそう簡単には入れない。それに私の知り合いは、かなり強く簡単にはやられない。それとも私が状況を把握できないとでも思っているのか?」
いったいオレをなんだと思っているのだ。だいたい友達は0人だ
小学校1年生の目標の友達100人も未だ達成できていない。
「じゃあ、知り合いに電話してみろよ?」
「そのつもりだ」
こちらと通信中だが、担任さんは知り合いに電話をかけ始めた。
正直、オレは機械に詳しくないので、どうやって同時通信できるのかが気になっていた。
しばらくして、担任さんもがボソッと、
「なぜ電話に出ないのだ・・・それに戦闘用ドローンが動いていないようだ」
こちらにも通信中であったため声が聞こえてきた。
演技にしてはリアルな声であった。
そういえば、あの金属音が壊れる音が、ドローンが壊れる音だったのかもしれないとも思った。
なぜなら、肉体強化系は、普通の垂直とびで数十メートルは飛べるし、パンチ力も数十トンあると言われているからである。
となると、3人が担任さんの知り合いでない確率が高くなってきた。
ただオレは、担任さんがどうやって教室の状況を確認するのかが気になっていた。
そんな中、いきなり天井から『ぐいーーーん』という音が聞こえてきた。
新しい攻撃かと注意して見てみると、天井の四隅からカメラが出てきて、教室を映し出した。
映し出した映像は教室の黒板に表示された。
担任さんと共有されており、教室の全体が死角なく映し出された。
状況を把握できるとはこのことを意味していたのか。
あぐら座りにしておいてよかったと思った。
ちょっとだけ、大男に感謝した。
黒板に担任さんの顔が写った。




