昼寝は大切
昼休みも終わり、担任さんが避難訓練の説明をし始めた。
正直、思った以上に飯を食って、眠くなっていたのであまり話は聞いてなかったがなんとなくは覚えていた。
知り合いのNTR隊で3人組の男の人がやってきてくるそうだ。
戦闘経験が十分にある方々なので、存分に揉んでもらえとのこと。
オレだって揉みたいが、おそらくその意味ではないだろう。
午前の授業のように、演者さん達を直接攻撃しても構わないそうだ。
授業の目的は教室が襲撃されたときの対処方法を学ぶことだそうだ。
いかに格上の相手でも、怯むことなく立ち向かい状況に応じて能力を使い分け、クラスで協力して全員で教室の外に出きればクリアらしい。
「それでは今から準備を始めるのでみんな席を離れてくれ!」と担任さんが言うと、生徒達は言われた通り立ち上がった。
オレも重たい腰を起こし、一応、席をたった。
教室のボタンを押して、床が開き机と椅子が収納された。
机や椅子のない教室はやたらと広く感じる。
避難訓練の合図があるまで、自由に過ごしてくれとのことだった。
担任さんがいなくなるということで、寝ようとしたところ、オレのところにやってきてしまった。
用件としては、仕事があるらしく学校にはいられないから、あとは任せたとのことだった。
とは言っても、オレには特にやることがないので、教室の後ろで座って生徒達の行動を観察してくれとのことだった。
演者によっては、副担任にも協力してもらって避難訓練する人もいるが、今回は3人で回していきたい人達らしくそれもないからである。
避難訓練が終わったら、これで連絡してくれと、スマホが渡された。
オレは、担任さんと気持ち的には今生の別れをして、担任さんが教室を出たのを確認してから、教室の後ろで横になって、寝っ転がった。
これより素晴らしい仕事は、この世にはないであろう。
観察という名の、さぼりを与えてくれるのだから。
とはいっても、実は監視カメラで勤務態度でもみられているのではないかとは心配になったが、睡魔には勝てないので気にしないことにした。
「先生眠いんですか~」とスバルが覗き込んできた。
この天使はダメだ。眠いのに違うところが起こされてしまう。
うまいボケが思いつかなかったが、スバルの後ろにカナニがいたので
「ひ、左手が、とってもい、イタイのだよ・・・・」と少し挑戦したボケをしてみた。
「申し訳ないと思っているわよ。でも、治してあげたから大丈夫でしょ?」意外な返答であった。
どーせ『うざい。一回くらいで大袈裟』とかばっかり言われるものだと思っていた。
「うん。ありがとう・・・・」
予想外の返答に、ボケた自分が詰まるという恥ずかしい返答をしてしまった。
「とにかく、サボっていると先生にバレたときクビになるよ!」
スバルの発言かと思ったらカナニの声だった。
さっきからの違和感でなんとなく察しがついた。
オレが助けて怪我をしたから、気を遣ってくれてるとオレは思った。
「さっきのは、オレがしたくてしたことだから、無理に話さなくていいからね」
「別に? そんなんじゃないし!」といってカナニは消えてしまった。
「あーあ。先生、今のは先生が悪いですよ!」スバルがニヤニヤしながら話しかけてきた。
「いや、気使わせたくなくて、なんかひどいことした?」
「んー。 ま、カナニはいい子だからこれからもよろしくお願いします!」
「かわいいし、オレから嫌うことはないよ!」
「そっか! よかった! じゃあおやすみなさーい!」
なんやかんやで、寝せてくれる良い子達であった。
*
15分くらいたったあと、
『侵入者発見! 侵入者発見! 排除します!』と聞こえてきた。
個人的には、不愉快な目覚ましだった。戦闘用ドローンが作動した設定なのであろう。
外ではドローンたちがビームを打っている音のような爆発音が聞こえる。
そこのリアリティーは流石に不必要だと思った。
避難訓練のアラートを真面目に聞いている人をオレは見たことがない。
ま、担任さんの性格ならやりそうなことではあるが。
ただ、そこまでリアリティーを追求するなら、机とか収納しないほうがよかったのにとも思ってはいる。
何回かの金属が破裂する音のあとアラートが静かになった。
避難訓練が始まるのを察知し、生徒たちが集中していく様子が見えた。
数秒後、男の3人組が後ろのドアからではなく、黒板の左側の壁を思いっきりぶち破って入ってきた。
教室は一階であり地上から襲撃されるのをリアルに表現しようとしたのであろうか。
金持ちの考えることは理解できない。教室で戦闘訓練をするからある程度の損壊は覚悟しているだろうけども。
それにしても、教室の修復に、いくらかかると思ってんだよ。
給料あげてくれよ、とオレは懇願し始めた。
ただ、そこまでやるのかと、流石に、生徒たちも驚いてた。
担任さんよ。
一生懸命なのはわかるが、そこまでの熱血には誰もついて来れてないぞ、と思ったが、誰もではなかった。
唯一、英賀が『やはりリアルは素晴らしい!』と言いながら情熱的な視線を3人に送っている。
最強であるオレは、自分よりどれくらい弱いのかと品定めを始めた。
まず、リーダー的な存在の大男、身長は2メートル近くあるだろう。
ジーパンに白いランニングシャツを着ている。悔しいが、オレより筋肉のあるやつだ。
その上、髪型からして迫力ある。とても、トゲトゲしている髪型だ。
おそらく、こいつが壁をぶち破ったやつであろう。
個人的な予想では、肉体を強化して物理攻撃をする能力だと思った。
もう1人は、メガネをかけていて随分紳士的なやつだった。
身長はオレくらいだが細身である。
ただ、女受けしそうな顔はしている。
サラサラヘアーが特徴的だ。
ただ、偏見だが性格があまり良いとは言えない雰囲気を感じた。
別に、イケメンだから思っているわけではない。
ただ、なんとなくだ。
最後に入ってきた奴は、チビの出っ歯だった。
失礼な言い方だが、どうみても金魚の糞的な感じが否めない。
160センチくらいでスーツをぎこちなく着て、ポケットに手を突っ込んで入ってきた。
行動からして、リーダーかもう一人に気に入られようと頑張っている感じが見て取れる。
3人とも私服なのが意外であった。
NTR隊なら、大きく背中にNTRと書いてある制服があるのでそれを着てくるものとばかり思っていた。
品定めの結果、3人ともオレの相手になるような奴はいなかった。
大男が、教室を見渡した時、オレと目が合ってしまった。
「ん? 大人がいるのか? おめー誰だ? 資料にはなかったぞ!」とオレに向かって言ってきた。
昼食の時AIにも登録されていないから期待はしていなかったけど、せめて授業くらいは登録してほしかった。
ただ、大男も大男で随分と口が悪いとは思う。
「あ、副担任です」
「副担任? まーとにかく、邪魔したら生徒を殺す! いいな?」
「はい。わかってます」
やはり、口悪すぎるだろ。
ま、よくドッキリ番組とかでも、エキストラがめちゃくちゃ演技うまくて、ビビることもあるしな。
ただ、前回のトラウマかは知らないけど、そこまでいうこともないとも思える。
とりあえず、横の体制はキープしたまま、生徒達の様子を見ることにした。
教壇に大男が立って『訓練を始める!』と大声で叫んだ。




