地雷を踏んだ時は踏み抜こう
トレイにアボカド2つ乗っけているのは、頼んだ本人にとってもシュールであった。
一つは手で半分にしてタネを取り、『ご自由にお取りください』、と書いてあるマヨネーズを用意して、もう一つは夕食用にポケットにしまった。
無事に夕食を手に入れることができたのである。
金持ち学園では珍しい光景だったのであろうか。
一人で食べようと思っていたら、生徒が興味津々に関わってきた。
「白銀先生一緒にくおーぜ」英賀が声をかけてきた。
「そーだよ!」エマも賛成してくれた。
おそらく生徒にとって、27歳のオレでも、出来の悪い先輩って感じなのであろう。
英賀は単純だからわかるが、エマまで声をかけてきてくれたのは意外であった。
ギャルというのは陰キャに厳しいものばかりかと思っていた。
陰キャに優しいギャルは、世界遺産に登録できる存在だ。
生徒の何人かが席を避けてくれて、オレの席ができた。
周りには、エマ、英賀、スバル カナニ、颯太などがいた。
「アボカドだけって受けるーーー。お金ないのー?」
エマはギャル特有の必殺技で、軽いノリで話しかけてきた。
「ない!」と少しビビりながら10代のテンションで答えてみた。
「ウケる! いいよ、あーしのあげる!」と言って、余っていたさらにエマがお昼ご飯を分けてくれた。
間接キスに興奮しつつ、「ありがとう」とクールに答えた。
残りの生徒も少しづつ分けてくれた。
男子もくれたので、間接キスの件は忘れることにした。
「師匠! なんで師匠は5級なのですか?」
英賀は聞いてはいけないことを平気で聞くタイプだが悪意はないのであろう。
「それはね、テストがオレに合っていないからだよ。最強のオレを測れないなんてダメなテストだよ全く。本気出せば1級なんて余裕さ」
「そうだったんですね師匠!!!」
「4級だったらアボカドじゃない料理頼めたのにー?」
エマが、笑いながらいじってくる。
「あ、そうだ! 先生! 彼女いるのー?」ギャルは止まらない。
「いねえーーよ」この質問は来ることはなんとなく予想していたが、ちょっと首をくくりたい気分になった。
「自称最強じゃ、頭おかしいと思われるよーー! 五十嵐先生と付き合わないのー?」
「あの人が、オレに興味ないでしょうよ」
「そーかな。先生が認めたの珍しいよ? 正直どう思うの?」
「そりゃ綺麗だろ」
性格がきついところに難ありといは黙っておこう。
「先生何歳?」
「何歳だと思う?」この答え方がベストであろう。
「32!」
「まだ、27だ!」
「えーーーーー髪白いのに」
「生まれつきだは!」
「てか、五十嵐先生と3歳差なんだ」
「3歳? あの人30歳?」
「24だよ? 聞いてないの?」
年下に偉そうにされていたのか。
見た目が美しいから28くらいだと思っていた。
会話も少し盛り上がりを無くしてきたから、オレから話をふった。
「男子どもお前らあれだろ? 五十嵐先生の外見だけでここに入ったろ」
「なくはないですね・・・」
「変態だな!」
「そーいえば変態ってなに?」
エマが思い出したかのように聞いてきた。
男子も女子も食いついた。墓穴を掘るとはまさにこのことだ。
スバルが電車で起きたことを一部始終説明した。
「んー。あーしは先生の性格からすると事故だと思う。多分席立ったのはNTR隊とバレたくなかったんでしょ。それに紙を丸めたのも車両間のゴミ箱に瞬時に捨てるためだと思う」
ありがとう。エマ君。君はなんて賢い子なんだ。
「師匠は悪い人じゃありません!」
英賀は何も考えずに発言しているようにも思えるが、悪い気はしなかった。
「ま、信じてあげてもいいわよ! 特別ね!」
カナニも一応納得してくれたらしい。
他の女子も、冤罪だと納得してくれた。
一部の男子はその広告をどこで手に入れられるかを教えて欲しいと言ってきたので、詳しく説明しておいた。
「あれ? まだしてるの包帯。カナニが治してくれたんでしょ?」
エマは非論理的なことにすぐ気がつく。
「ふ、この包帯はオレの真の力を封印しているのさ」
一か八かのギャグは何故か意外とウけた。
27歳がそんなことを言っていることが滑稽だったのか、非日常を楽しんでいるのか。
「だから彼女できないんだよ!」エマにもウけていたようだ。
「・・・」
正直、これまでを踏まえて、謎だったことがある。
金持ちの割に結構、直感的に親しみやすいということだ。
ドラマとかでは悪役令嬢とかいて、オレなんかは靴磨きをさせられているはずであろう。
ここの生徒の容姿なら、それもそれでオプション代なしでできるなら良いであろう。
それはおいといて、担任さんがどのくらい授業料をぼったくっているのかが気になってきた。
さっきのノリで、聞くことにした。
「てか、授業料がいくら? みんな実家は太い方なの? 五十嵐先生にぼったくられてない?」
そう言った瞬間、さっきまでの和やかな雰囲気から一点、地獄の空気に変わった。
ああ、完全に地雷を踏んでしまった。もう帰ります。さようなら。
そんな中、エマが地獄の空気の中、笑いながら、
「確かに先生は何も知らなそうだもんねーー。 あーし達訳ありなの! 家族とかいなくてさ。そんな中、五十嵐先生は賞金で稼いでくれて設備も良くしてくれて、授業料もタダなの。頑張ったらお小遣いもくれるし本当にいい先生だよ!」
エマにはマジで感謝する。みんなも少し呆れてくれた。
うまいこと全員のトラウマを踏んだオレをうまくフォローしてくれた。
話を聞いて、オレの五十嵐を見る目が変わった。
金儲けしか興味ない女かと思っていたが真逆であったか。
オレのランクを気にしていたのは、より良い教育のためであり、生徒のためだったのか。
てっきり、客寄せのためかと思っていた。
正義は存在しないと思っているオレだが、五十嵐みたいな奴のためなら、困った時、最強のオレが助けてあげても良いなとは思った。
そんなことより、謝らなければ。
恩人以上の五十嵐を、冗談混じりにディスってしまったのだから。
「ごめん。家族のことは、し、知らなくてさ。やっぱいい先生だよね。オレもあった時からそうは思っていたんだよ。だからあえてね? いじったというか・・・」
思った以上にテンパってしまった。
そんな発言を聞いて、スバルも空気を読んで会話をしてくれた。
「別にみんな、そんな気にしてないですよー?
私も、唯一の家族のおねーちゃんがいたのですが、戦争で殺されてしまって。結構強かったんですよ?
七福人の一人でして。
でも、確かではないですが、魔王に殺されたと噂で聞きました。いつか倒せたらいいですけどね! 魔王を!
ま、最強の先生ならできるんじゃないですか? 10兆ゼニー楽しみにしております!」
クラスのみんなに笑顔が戻った。
辛いであろう過去をオレのフォローのために、ギャグっぽく言ってくれたのだ。
早く答えなきゃと思うと同時に、どーしても考えてしまうことがあって必然的に試行時間が長くなってしまった。
「先生? どーしたんですか? 考え事ですか? もちろん冗談ですよ?」
「あ、ごめんごめん! シュミレーションしてたは! 今のオレなら倒せると思うよ!」
冗談ぽく誤魔化してみたが、どーしても気になることができてしまった。
が、聞くに聞けないことでもあるので悩んでいた。
そんな中、
「午後の授業のアドバイスあります?」とスバルは天使らしく話題を変えてくれた。
正直、オレは午後に何をするか知らないが、とりあえず、さっきのしんみりさをぶち壊したいので、
「オレ様のアドバイスが欲しいかー?」と少し学生らしく叫んでみた。
「欲しいぜーーー!」と男子たちを中心に悪ノリが成功した。
30近いと、酒なしで高いテンションにするのは至難の業だ。
とりあえず、アドバイスを頑張ることにした。
「ひとーーつ! 人を信じないことーーー」
「つまり、彼氏、彼女の携帯はよくチェックすること」
「ふたーーつ! 諦めないことーーーー」
「振られ続けてもいつか人生いいことあるさ!」
「みーーつ ! 最強だと思うことーーー」
「それ思ってるのは先生だけだから!」
少し呆れた顔でエマがツッコミを入れてくれた。
まともな学生活を送れなかったオレにはここの生徒が性格の良い人間に見えて仕方がなかった。
やめようと思っていたが、案外もう少し続けても良いかとも思った。
昼食も終わり残り少しの、昼休憩。
女子はみんなで話をしている。
この年頃の女の子たちはなかなか大変だ。
自主性というものがなく、流れに身を任せないといけないからだ。
おそらく、ここの生徒たちはそこまでいやいや付き合っていうはけではなさそうだが、
1人くらいこっそりトイレで屁をこきたい奴もいるだろう。
一方、男子はバラバラに、
トイレにこもってる奴。
話の内容が面白いのに、表紙が卑猥だから、ブックカバーつけて、ラノベ読んでる奴。
昼休憩、残り5分くらいしかないのに、野球をして楽しんでる奴。
様々な生徒がいた。
個人的にはピッチャーが颯太で、ボールを操って、野球をして 何が楽しいのか分からなかった。
どうせ三振だろと思って見ていると、デットボールという学生らしい柔軟な発想で度肝を抜かれた。




