好き嫌いはあったほうが良い
*(白銀視点)
正直生徒を舐めていた。
完全に、エマの作戦がオレを上回っていた。
最強のオレを上回るとは、なかなかやる奴だな。
そんなことを考えていると、
「あ、ありがとう・・・」
とカナ二がお礼を言ってくれた。
「いえいえ」
「てか、なんで私なんか助けたのよ。ひどい態度とってきたんだし、わたしは治せるの!」
「自分の傷は治せないですよね? 前に似たような能力者に会いましたから」
「そ、そうだけど・・あんた怪我してるじゃない!」
「これぐらい、大したことありません!」
正直、腕に剣がブッ刺さっているのだから痛いしお家に帰りたい気分ではある。
オレは、14歳頃からの癖でポケットに包帯を入れていたので、それを取り出し、止血を兼ねて、口と右手で左腕に巻いた。
「いいから貸しなさいよ! 手!」
カナニがオレの包帯を巻いた左腕に手をかざすと、緑色の優しいオーラみたいなのがオレの手を覆った。
「おお! 治ったぞ! ありがとうございます!」
オレは、腕を動かして治ったことをアピールした。
「気にしないで。大したことしてないから」
会話も人段落ついたところで、カナニの周りに、相手チームが走ってやってきた。
「カナニごめんええええーーーあーしのせいでえええ・・・・」
「いや、俺のせいだ本当にすまない。まっすぐ進むはずが曲がってしまった。わざとではない。今まではまっすぐだったんだ」
エマと颯太はカナニが無事で一安心した様子であった。
「わかってるって。それに私は無傷よ! 気にしないで!」
何故かオレのところにエマがやってきて話しかけてきた。
「先生、知ってたんですか? あーしたちが遠距離攻撃をすること」
「いや? 最後に気がついた。作戦には入れてなかった。できるって知らなかったし。あの技は上級者でないとできないから正直すごいと思う。ただ、質量が大きく、距離が遠くなるとあの技が上手く行かなくなることを知ってたし、それで一応対応できただけ」
「あーし最初、変態って言われているし、自己紹介で、名前だけだし、無愛想な先生が来たと思ったのに、いい人だった・・・」と何故か謝罪をしてくれた。
英賀は「先生こそ漢中の漢です。勝負より命! 自分が恥ずかしい! 弟子にしてください! いや、無理ですよね。今、筋トレしておきます」と何故か腕立てを始めた。
「仲間を傷つけなかったのは先生のおかげです」ありがとうございます。
颯太もお礼を言ってくれた。
「気にすんなって!」とオレは少し教師らしく振る舞った。
正直、自分でも大したことをしたとは思っていないが、好感度が上がったならよしとしよう。
しばらくすると、担任さんがオレの元にやってきてオレに声をかけた。
「お疲れ様。とんだ災難だったな。結局、実力はあまりわからなかった。
欲を言えば、あの程度、最強ならば跳ね返して欲しかったけどな。
ただ、生徒を守るという判断はよかったと思う。
それに・・今までで1番いい副担任だったことは認める。1番弱いけどな。
おそらく、チサトさんは、そういうことを言いたかったのであろう。力は弱くても、優しい心。
そういう意味では、腕は確かかもな」
『弱くないし』と言いたかったが、我慢した。
「あのーじゃあ、10万の方は?」
「敗者にはないぞ?」と、そこは、厳しかった。
授業も終わったので、昼食のため食堂に向かっていく途中、
「ごめん負けちゃって。プリン買えなくなっちゃった」
一応、オレはスバルに謝った。
「いえいえ。親友を助けてくれてありがとうございます。やっぱ先生は優しい人でしたね! 先生こそ大丈夫ですか?」
「最強だからヘーキ、ヘーキ、ま、治してもらえたし」
オレは、未だ包帯を巻いたままの左腕をかっこよく見せつけた。
やっぱり包帯を巻いていると強くなった気がして気分が良い。
少し歩くと食堂に着いた。
食堂はそこまで大きくなかったが、大きな冷蔵庫みたいなのがあった。
オレは食べるとしたら、スタミナがつきやすい肉料理とかを所望していた。
電車、授業での災難、そして久々に人と接したからである。
生徒たちは、好きなメニューを好きなだけ頼めるらしい。
しかもタダでだ。副担任のオレも自由に頼めるらしい。
どうやって頼むのか悩んでいると、最新版AIによる自動料理機を発見した。
巨大な冷蔵庫ではなく、自動料理機だったようだ。オレも初めて見た。
この機械には大量に肉や野菜が入っており、各々適温で保存されている。
画面にいるAIのお姉さんらしき人に話すことで注文ができ、料理を作り提供してくれると、CMでみたことがあった。
頼もうとしたところ、AIのお姉さんが作ってくれない。
「だから、オレは副担任なんだって」少しイライラしながらお姉さんに説明した。
「いいえ。登録されておりません。一般客は失礼ですがお金をお支払いください」
これほど、担任さんを恨んだことはあったであろうか。
何か食べたかったので注文することにはした。
メニューを見ると、トマトサラダが一番安かった。
写真を見る限り、レタス・トマト・きゅうり・ドレッシングはお好みで好きなものを、という感じだろう。量も多そうだった。
ただ、トマトが・・・無理なのだ。あの柔らかい食感が苦手なのだ。
なぜ、スイカの種は出すのに、トマトにはついてくるのだ。
残る物でオレが買えるのは、2番目に安いアボカドサラダしかない。
どう考えてもおかしいだろ。今どきOLでも食べなくなってるぞ。
中ライスも同じ値段だが、米だけを食べるのはどうも苦手だ
ただ、これを買ってしまうと金銭的に、何も買えなくなくなってしまう。
そういえば、前の生徒が、『マシマシ』と言っているのが聞こえたが、AIと仲良くすると可能なのであろうか。
個人的には、トマトなしなし、レタス、マシマシをやってみたい。
そいうのはやはり、常連になって初めてできるものだ。
初めて訪れる店で『いつものやつください』という勇気はない。
オレは初出勤でそう頼めるほど肝は据わっていない。
そして、どちらかといえば、常連の店でも『いつものやつください』と言って『なんでしたっけ』と聞き返されるタイプである。
ましてAIが学習していないことをできないであろう。
いいこと思いついた。
ウィンウィンの関係でAIと仲良くなろう。
「アボカドサラダってアボカド何個分ですか?」
「2個分になります」
「アボカドサラダ1つ・サラダにしないでください」
「は、はい?」AIも驚くのかとオレも驚いた。
「料理しないで2つのアボカドください。別に料理しないから疲れないでしょ!」
「お気遣いありがとうございます。私たちは作るために製造されているので遠慮なさらずに」
「いや、ここは曲げられない」
「そ、そうでしたか。では、アボカド2つでございます」
金を投入すると、取り出し口に、アボカドが2つが置かれた。
「ありがとうございます」
「では」
今日であのAIも学習したであろう。人間様の無限の可能性を。




