生徒に負けるわけが・・・・
*(五十嵐視点)
お手並み拝見といこうではないか。私は副担任の本気に期待していた。
お金をちらつかせれば、それなりに本気を出す性格だとチサトさんが言っていた。
舞台は揃っている。
こういうところで、実力を見せて無双するのが、王道中の王道だ。
先程、奴の能力が肉体強化系と言っていたのが聞こえた。
パンチだけでビルを破棄できる者もいるらしい。
また、剣や銃で攻撃されても、傷一つつかないものもいるそうだ。
5級とは言ってはいるが、チサトさんのお墨付き。
しかも自分で最強と名乗っているから、よほどのバカでなきゃ強いのであろう。
あのタイプは、カッコをつけたいから低い級にいるのであろう。
相手のクリスタルを、自分の陣地から一瞬で壊すのであろうか。
生徒たちの攻撃を一瞬で効かないことを見せつけるのか。
ただ、そう言う奴は、実力を隠している奴で、自分で最強と言っている奴に当てはまるかは疑問ではあるが。
とにかく、この授業で私は副担任の強さを知ることができる。
第3試合が開始した。
間もなく、奴は『ギヤあああああーーーー』と叫びながらクリスタルを持って走って逃げているだけだ。
『英賀の光線全部、紙一重のところで避けているよ。意外とすごいじゃん』と何人かの生徒は感心している。
すごくは見える。
ただ普通だ。
何故かというと、スバルの能力で奴の能力を向上しているはずだからである。
そこから逆算すると、本気で5級にギリギリ受かったレベルだ。
まだ何か隠しているのであろうか。
副担任の強さが心配になってきた。
*(白銀視点)
『よーい、スタート』というと同時に、英賀が『ファイトーーーー』叫びながら、予想通り、一番先に近づいてきた。
陣地間を猛スピードで走ってくる。
オレは、残りの2人が近づかないのを確認しつつ、クリスタルを持ち、溝を作る作戦に移行した。
「おい! オレはクリスタルを持っているがそのまま攻撃してくれて構わない! 全力で来てくれ! ただ、オレはこれを持って逃げる。捕まえられるか勝負だ! 遠慮はいらない!」
単純な性格を利用して溝をつくらせることを悟られないようにするための発言である。
また、溝を深くするために威力は大きくしてもらう必要があった。
「漢ですね! 先生! 全力で行かせていただきます。」
案の定、手にオレンジ色の破壊光線ためて、オレにめがけて高くジャンプをして放った。
威力だけで言えばかなりのものだ。
オレは紙一重のところでよけ、地面に深く、幅広い溝が一瞬うちに出来上がった。土埃もかなり出ている。
オレは、計画通りに、クリスタル置き場から半径28メートルを意識して逃げ回った。
所々、調子に乗らせるため『ギヤあああーーーー』と叫んだりもした。
逃げながら気がかりだったのは、相手チームの2人がなにもしてこないことである。
オレが弱いと思ったなら近づいた方が楽なのに。
もしかしたら、まだ未知数とみこんで、攻撃してこないだけか。
どっちにしろ、溝が完成次第、攻撃はできないだろう。
策士と聞いていたが守りに転じただけか。
なんとか、英賀の攻撃を避け、計画通りの溝を作ることに成功した。
そして、クリスタルを元の陣地に置きオレは英賀に声をかけた。
「よし! やっぱ正面から戦おう! 漢なら!」
「それでこそ漢ですね!」
「オレは最強だ! お前の攻撃なんぞはねかえしてやる! オレは大人だ! 殺してしまうとは考えなくて良いぞ」
オレは、あえて、クリスタルの前に立った。
オレが避けたら、負けが確定することをアピールするためだ。
いよいよ、最強の力を見せる時が来たか。
ま、オレが1対1で英賀と戦っている間に、スバルが隙をみて攻撃するという、漢らしからぬ行動をしようとしているが、そこはよいだろう。
英賀は両手にものすごいエネルギーを蓄え始めた。
オレは、右手に力を入れて拳を握った。
正直、オレにとってこんなもん朝飯前だが、一応構えておくことにした。
ふと、残りの相手チームを見ると大きな剣が宙に浮いている。
ものすごい念動力を感じる。
オレは、クリスタル付近を守っているカナニに「クリスタルから離れろ!」と叫んだが、カナニは剣の存在に気がついていない。
オレの体は、無意識にカナニの方に走り出していた。
*(エマ視点)
あーしたちは、『よーい、スタート』と同時にクリスタルを持った先生が英賀の攻撃を避けるのを確認した。
「やっぱあの逃げ方、溝を作ってるな」
「でしょ?」
「本当、お前は天才だよ」
「じゃあ、今から剣作るから待っててね!」と言って、少し時間はかかったが、なんとかゲームに出てくるような大剣を作る事ができた。
「でっけな」
「はあ、はあ、とにかくあーしはここまで。あとは任せたわよ」
「へいよ」
颯太も集中して念動力を高め始めた。
「意外と先生、動けるね。スバルの能力のおかげかな。無理に攻めなくて正解だったかも」
「さすがだよ」
「もーそろ、溝完成するよ!」
「てか、意外。先生、英賀の攻撃をまっ正面から受けるみたい」
「少し見てみたい気もするなーーーー」
「念動力終わったぜ。英賀との様子見るか?」
「いや、もちろん勝ちに行くよ! カナニには当てないでね!」
「当てる気ねーよ。クリスタルに向かってまっすぐ飛ぶから大丈夫だよ」
「合図したら打ってね」
「あれ? 先生にきづかれったぽいな」
「やめるか?」
「いえ止める手段はないから大丈夫」
「打って!」
合図と同時に飛ばした大剣は一直線にクリスタルの方に飛んでいった。
全てが計画通りのはずだった。
が、予想外のことに途中で剣が空中で回転しはじめた。
真っ直ぐに飛ぶはずの剣が、カナニの方に向かい始めた。このままではカナニに当たってしまう。
予想外の出来事に声が出なかった。
『カナニ逃げて』が言えない。
あーしは別にカナニを傷つけたいわけじゃ無いのに。
あまりの恐怖に目を閉じてしまった。
数秒後、フィールドの空気が変わったので、恐る恐る目を開けた。
そこには、なんと・・・・・・
左腕に大剣を刺した先生が立っていた。
そして、相手チームのクリスタルは破壊されていた。
先生が身を挺してカナニを守ってくれたようだった。先生ありがとう。
本当にありがとう。
『試合終了~』五十嵐先生の声が、静かなフィールドに響いた。




