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その時、インキャが動いた

作者: ロック

2022年に登場したchatGPTは、世の中に革命を起こした。

そして西暦2030年、AIの進化は止まらず、ついにAIが疑似的な人間を作れるようになった。

少子化問題や高齢化問題はいまだに続き、各企業が経済危機にある中、恣意的に作られた人間はニューマン(ニューヒューマン)と名付けられ、特に労働力として活用された。


私の名は、東雲 根暗。根暗と書いてインキャと読む。

何故親がこんな名前をつけたのかわからないが、私は根暗であり、業務中もずっと下を向いて生きている情けない人間だ。

何者かになろうとサーフィンを始めたり、パチスロやパチンコをやったり、小説を書いたり、商社勤務をしてみたり20代前半はアクティブに行動した。


だが、サーフィンを始めても、友人はできず1人で波を転がり続ける毎日に嫌気がさして辞め、パチスロはAT中の目押しができず30万円近く負けてしまいそれを友人から笑われた。

小説を書いても、新人賞を取れず、商社勤務は3ヶ月で解雇と私は人生何をやっても散々な結果で終わる。

唯一の特技はジャグラーの目押しだったが25歳の高齢者の私は、ジャグラーを打つ気力もない。

25歳で平社員というのは、正直息苦しい。

私は無能で無価値な人間で、ひたすら毎日のタスクをこなす日々。

彼女が欲しい、今でも複数人の女性に告白されてるがそれは彼女達が勝手に私に抱いた幻想に惚れているだけだし、私のことを知らないから、安易な好意を得ているに過ぎない。

私も過去には付き合ったことや、友達以上恋愛未満の経験もある。だが、彼女達は私から離れていった。

そういった人間関係のトラウマがあり、現在は独身彼女なしを貫いて生きている。


心を癒すのはスロットの演出だけ、そんなつまらない私の人生。

そんな時、私はある製品に心が動いた。


"愛するAI"?

私はそのサイトに記載のある、文面を全て読んだ。

AIが疑似的な女性を作り、そして疑似的な愛情を演出する?

くだらないと思いながらも月々15000円のリース契約を結んでしまった私を誰か愚弄してくれ。


4日後、バラバラになった彼女が届いた。

私は理想の髪型や、理想の顔立ちをオーダーしそれをもとにAIがモデリングし、3Dプリンターで作られた彼女。

私は過去に愛した同僚の滝川ひなたに似せ、神は緑色のツインテールのたぬき顔と黒目がちな大きな丸っこい目が特徴が女性だった。

バラバラの制作キットを組み上げる。

まずは頭部と胴体のくっつけて、その後手足をつける。

そして、1時間の充電を頭部に行なうと、彼女は話しだした。


「私は滝川ひなた。」

「俺はインキャ…東雲インキャ、根暗と書いてインキャと読むんだ」

「・・・え、それ本名?」

「そうだ、私の名はインキャだ。愚弄したければ笑えばいい」

「良い名前じゃん、なんか、君に合ってるよ」

「それは…皮肉だね。

でも僕はそんな君が好きだよ」

「ありがとう、ボクもインキャくんが大好き」


ぎゅっとひなたが、僕を抱く。

私の理想の女の子が私を抱いてる。

理想の女の子が私を抱くというシチュエーションそのものが私にとって、ファンタジーである、まさにこれは小説の中の出来事だろうと、内心確信している。

これは、ただの妄想の具現化だ、虚空である。「ひなた…ぼくは」

「どうした?苦しかったか?」

ふわふわとした肌触りは、現実の女性を彷彿とさせる。


ミスディオールの香りは私がオーダーしたものではない。現代のAIは、本当に素晴らしいものを作り上げる。

「ひなた…」

「何度も私の名前を読んでどうしたの?」

「僕はひなたを愛してる」

それから私はひなたに生い立ちや私の抱えてる心因性排尿障害、また私の発達障害についても語った。

私は両親から捨てられ施設で育ったことも語るとひなたは、同情から涙を浮かべていた。

私はハンカチで彼女の涙を拭く、この涙はどこから生成されてるのか、私にはわからない。

だが、私はひなたを愛してると確信した。


そこから私はひなたと遊園地に行ったり、ひなたに家事をしてもらったり、ひなたと距離を徐々に縮めていった。いや、正確には私が縮まったと感じているだけかもしれない。

ひなたは、人間じゃなくAIで人間ではない。

私は26歳の高齢者になった。

ひなたに私は夢を語った。

「僕はね大学に行きたかったんだ」

「なんで大学に行こうと思ったんだ?」

「俺は臨床心理を学んで、精神科医になりたかったんだけど、親もいないし、奨学金も借りれなかった。正確にはできたと思うが今からだとあまりに遅い。

18歳の大学進学は、意義のあることだが26歳から大学進学を目指すとなると、最低でも28歳から入学することになるだろう…

私は歳を取り過ぎた、そして、26歳から学問を始めるのは道楽に他ならない。

私は私の人生があり仕事もある、学問に傾倒するにはあまりに遅過ぎたよ。

高卒でも 私を愛してくれるか?ひなた」

「愛するに決まってるじゃないか」

「ひなた…」

適宜、メンテナンスやひなたのパーツ組み替えは別途費用が発生する。恐らく、ひなたに年間に50万は使ってるだろう、だが、私はそれでも構わない。何故ならひなたを愛しているから。


ひなたは、2031年5月に私に尋ねた。

「なぁ、ボク達って」

「なんだひなた」

「子供産めるかな」

それは唐突だった、ひなたには、子宮が存在しない。

あくまでだんせいの快楽を目的とした器官しか存在せず、ひなたは、子供を産めない。

だが、僕はここで自分でも呆れるような言い訳をついた。

「ひなた」

「なぁにインキャくん」

「世界中には子供を産みたくても、子供が産めない可哀想なインキャが沢山いる!俺もそのうちの1人だ!

俺のようなキモい哲学オタクのインキャは、子供を産まないほうがいいし、なおかつこんな時代に子供を産むことが児童虐待だとは思わないかい?

君はね、もっと社会を知るべきだよ。

感情に流されるなひなたよ」

ひなたは、泣き出そうとする。

「ほら!こうやって、泣けば許されると思ってるだろ!ひなたくん、私は軍師になろうとした男だ!私の憧れてるのは、もうたくと」

強い力で俺はビンタされた。

割と脳震盪がおきそうなぐらいだ。

ひなたは、走って逃げ出した。

「いてて…ひなた!てめえ!ひなた!クソ!」

ひなたがいない自宅は虚無そのものだ。

30分ぐらいで戻ってくるだろうと思ったひなたは、戻ってくることはなかった。

俺はひなたを探しに行った。


暗い夜道ひなたは、なかなかいない。

「ひなた…ひなた…」

俺はひなたを探し続けた、今更になってニューマン法を思い出した。

もし、野良のニューマンがいたら、保護施設に輸送される、だが、保護施設に輸送されてから2日経ってしまうと

解体されてリサイクルされてしまうという法律だ。

SDGsに配慮した法律だろうけど、ひなたとの思い出をデリートされたくないからこそ俺は必死になって探した。


「ひなた…ひなた…」

俺は必死にひなたを探した。


翌日の早朝、俺は欠勤することを上司に伝えひなたをずっと探した。

「ひなた…こんなことなら…ひなたにGPSでもつけとけば良かった」

しかし、俺は大切なことを思い出した。

2人で言った巨大な樹木の下。

「思い出の場所に…」

俺は自宅から20km先の山へ向かってスクーターを漕ぎ出した。


「ここにいたのか」

バッテリー切れで眠っているひなたの姿があった。

「ごめんね、ひなたのこともっと思いやる。

愛してるよひなた。」

ひなたを抱え、自宅に戻りひなたのお腹に充電ケーブルを挿し、俺はそのまま眠った。


午前6:00

「ねえ、インキャくん!」

「なぁに、ひなた」

「だーいすき」

ひなたが俺を抱きしめる。「ひなた、子供のこと少し考えたんだ」

「んー?もうそのことは、どうでも良いよー」

「どうでも良くない」

「?」


「養子を迎えようと思うんだ」

「え!」

俺はひなたが子供を産めないけど、疑似的な夫婦関係を築きたい気持ちを最大限汲むことにした。

「あ、ペットとかでも良いけど」

「インキャくん、嬉しい!大好き!!!!」

ひなたが俺を抱く、俺は児童養護施設であるたんぽぽ学園の児童のひなのを引き取った。


ここから始まる、ひなたと俺とひなのの、家族生活、果たしてどうなるのか


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