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目がみえないから夢を見る  作者: muro
始まりの入学
5/21

初登校.5

 久しぶりの外出。ほとんど夜にしか外に出ないため、太陽の日差しが強く感じる。その為、車までのほんの数メートルさえ少しダルい。

 気落ちしながらトボトボと歩いていると


「ユメお嬢様、こちらをどうぞ」


 肌にチクチクと当たる暑さが消えた。何をしたのかを不思議に思っていると


「こちら日傘になります。今日みたいに日差しが強い場合に使いますので、遠慮なく申しつけ下さい」

「……ん……ありがと」

 

 日傘……。使ったのは初めてだけどすごく快適。さっきとは違いスタスタと歩ける。


「お手をどうぞ」


 車の前までついたらしく「ガシャ」と車のドアが開く音がした。

 キリへと左手を前に出す。ゆっくりとキリにエスコートされながら、足を起点とし体を入れる。無事座るにことが出来た。

 

 楽な姿勢になろうとしていると、キリが私にシートベルトを着けて入念に安全のチェックをしてくれる。


「では、満天星学園までお願いします」


 一通り済んだのか運転手に発進の合図を出す。


「ユメお嬢様。いってらっしゃいませ…………どうかご無理のないように」


 いつもなら私と一緒に車で出かけるのに……。わかってる。これも条件の一つなのだから。

 そこに居るだろう人に"初めて"言う。


 いつもより少し声が硬く、低いあなたに。


「いってきます」



 * * *



 車が動き出すエンジン音、時々起こる浮遊感、左右に揺れる体。

 実は車に乗るのは苦手。否応なしに起こるそれらは、私の不安を駆り立てる。


「……」


 自然に左の方に意識が向く。


 いつもなら必ず居てくれる人。不安定な私に手をそっと握ってくれる人は今はいない。

 左手で右手を包む。いつもの温もりを求めながら。


「お嬢様。間もなく到着します」


 キリから事前に到着予定時間は聞いていた。

 なのでもう車を出る準備は出来ている。


「到着しました。夢お嬢様」


 車の中からいろんな声が聞こえる。

 笑い声や只でかいだけの声、車内なので大声しか聞こえないけど、今まで聞いた事ないほどの数の声が外にはあった。

 

 これから行く所には、いろんな人が居るんだろうなと思いながら耳にある物を付ける。


「お手をどうぞ」


 運転手がドアを開けに来てくれた。

 いつもはキリが開けてくれた為、無意識に待っていたみたい。

 私はそれを無視して外に出る。


「ここまでありがと……帰りもお願い」


 運転手の人は少し固まっていたけど「了解致しました。行ってらっしゃいませ」と言い、声の出所が下に下がった。

 たぶんお辞儀をしていると思い、「行って来ます」と返した。


「あ、いた~。今年も同じクラスみたい! よろしくね!!」

「おまえ何の部活入る?」

「やっと光輝先輩に会える!! 楽しみ~」

「これから高校生になるのか……。不安過ぎる……。」


 人だかりがある方へ歩いて行く。

 確かまずはクラス表が張り出されていて、自分のクラスを確認してその教室へ向かう。

 

 私は、あらかじめ自分がどのクラスかを知っているから、そのクラス表の横にある正面玄関に行けばいい。そう思いながら歩いていると、周りの空気に違和感を持つ。


 何でだろうと考えながら、人にぶつからないように白杖や鈴の音で周りを把握して進む。


「ようこそ! 満天星学園へ!!」


 人の少ない端を方を歩いていると一人の男性が声を上げる。

 その瞬間、音が消える。何百という声がピタッと途絶えた。


 



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