初日終了.7
又しても視線が私に集まる。
挙手したときは自分からなためあまり意識してなかったけど、いきなり向こうから来ると少し疲れる。
「……人間力を備えた市民……となる……基礎や…………国家及び社会の形成者として……必要とされる基本的な資質を……養う……ため」
義務教育について教えて貰った事をそのまま言う。
そう言えばこの事を私に教えていたキリの口調がいつもより硬かったのを思い出す。あのときはまだキリのことを信用していなかったから気には止めなかった。
今思えばもしかしたらあのときからこの学園と関わりを持ち始めたかもしれない。
「、そうですね。合ってます」
淡々と返される言葉。概ね分かっていた返しだけど言い方に違和感を感じた。
「今彼女が言って下さったように言うなれば"自立的に生きる基礎"を培う教育期間です」
短くまとめられた言葉に一つの仮説が浮かんでくる。
「皆さんもお気づきかと思いますが、これが理由の一つになります」
もしかして
「皆さんにはこの満天星学園で個々の主体性を育み、自主性の元生きる力をつけて貰います」
あの人はルールを知らなかった……?
「待って下さい。もしその理由が本当ならわざわざそれを伏せる意図はなんですか?」
再度さっぱりした人が、聴き耳を立ててしまうような質問をした。
今は仮説を仮説として受け入れるのに時間が欲しいため耳に入って来る情報に集中する。
「簡単です。それは――実験だからですよ」
小さい溜めの後に聞かされた真実に一瞬思考が遅れる。周りもそれに呼応するかのように一瞬で場が静寂に満ちた。
「我が校のコンセプトはご存じですか?」
「……多種多様」
「はい。その通りです」
校長先生の問いの後にも続く静けさ。
その為か眠気が顔を出し始めたので速く話を回したい私はボソッと答える。あまり大きくない声でも拾ってくれて少し安心した。
「"多種多様"。それは種類、性質、状態、現象などがさまざまであること。中学生は心身共に最もこれに影響される時期にあります。いい意味でも悪い意味でも。」
影響される時期……。そう言えば最近、やけに眠気が襲う。
まあ、原因は分かっているけど、もしかしてこれも今だから起きやすくなっているっこと?
「なので我々はその性質をいかにコントロール出来るかを考えました」
話の風向きがドンドンおかしくなっていく。
「そうしてたどり着いたのが義務教育の改変です」
感情が籠もっていないかのような声の音調から出された言葉に、心なしか周囲の温度が下がるのを肌で感じる。
若干の肌寒さに眠気が攫われつつ思い起こす。
「な、何を言っているんですか?」
初めて聞くさっぱりした人の動揺した声。けど私も少し共感できる。だって
「義務教育は国が定めた法律ですよ」




