初日終了.3
「、え」
どこかからか乾ききった喉から絞り出したような掠れた声が体育館内に放り出される。
その声に乗せられた感情は多分ここにいる人達とほとんど似ている気がした。そのぐらい校長先生から放たれた言葉は深い影響力があるものだったらしい。かくいう私はそれとは別の想いに考えを向けていた。
「続きまして、二つ目「ちょっと待って下さい」
前の方から床や椅子から急に重みが無くなるような軋み音がし、自分も含め明らかに座っている人よりも高い位置から声が響いた。
聞き覚えがありさっぱりとした印象のある声が話を遮る。
「"学園内から出ることを禁止"とは一体どういう意味ですか?」
私もその話しには凄く興味があるので意識をそこに逸らす
「どういう意味も何もそのままの意味で捉えて頂いて大丈夫です」
そのままの意味……。この不穏な空気に対する断定しない濁った答えに訝しむ。
人それぞれの考え方や捉え方は違う。しかもこんな張り詰めた雰囲気が流れているのだから余計ネガティブな方に考えそうなのに。
真偽の欠片もまだ掴めていない問いに悶々としていると、さっぱりとした人が切り込んだ質問をした。
「それは、一日の学校スケジュール内の話しですか?」
「はい」
校長先生の返答はさっきとは違い短く簡潔としたものだった。
けれど多少簡素な部分とは反対に明るい雰囲気に少しずつ変わっていく。
「なんだ、びっくりしたー授業中の話かよ」
「もーなんか急に真剣になったと思ったら、今度は学校から出れなくなるとか言われて超焦ったんだけど」
「いやまぁ流石に少し考えたら校舎に閉じ込められるとか普通無いよな、ないない」
周囲の所々から安堵な声が上がっていく。……確か学校には例外もあるが一般的には登下校。この満天星学園も同じ筈。
「皆さん、お静かにお願いします。佐藤君、貴方が不審の思っているであろうルールに対しての諸々な詳しい内容は最後に話させて頂きます。続きをさせて頂いても?」
「……わかりました。話を遮ってしまいすみませんでした」
さっぱりとした人は案外あっけなく引き下がった。
多分どこかしらに納得出来る部分があったんだと思う。けど何故か言葉の端からこの人が何かに失望したような、そんな想いを初めて感じた。だからという訳ではないけど
「では話しに戻り……まだ新入生の容姿や名前については把握できていないので名前を呼ぶことはできません。なので特徴を掻い摘まんで呼ばせて頂きます」
今ここで私の答えを確かめないといけないような気がする。
「どうかしましたか?白いハチマキが似合うお嬢さん」
私は人生で初めて人に対して挙手をした。




