初日終了.2
「――――……以上が学校説明の内容となります」
話が終わったのかマイクのスイッチがカチッと切り替える音がする。人が変わるのかなと思いながら感じた違和感について考えた。
話の中身としては予めキリから教えて貰った内容とほぼほぼ同じだったので、頭をカクンカクンと揺らしながら聞いていた。
少し異なる部分としては今現在"音楽室"が使用禁止されているらしい。その理由について何故か触れられはしなかった。そのことにも疑問は覚える。けれどここではない。
引っかかっているのは分かっているのに対処できないまるで尾を引くような気持ち悪さ。
そんなもどかしい思いを抱えているとき、次の言葉で眠気が覚めた
「えーでは変わりまして、この学校の責任者である校長先生からお話をもらいます」
そう……これだ。
カツン カツンと足音が進んでいき、壇上へと上っていく。
小柄な体型なのかそれとも力バランスが上手いのか、聞こえてくる音は儚く消える。けれど何故か印象に残る音に耳を澄ましながら確信した。
事前に情報を貰っている中、明らかに知らない項目がある。
「あーテステス……聞こえてる~」
静かな音を奏でていた人とは思えないぐらいの高く明るい女性の声。
でもなんで? 何故かその差が在る事に妙にしっくりときた。
「どうも初めまして。私がこの学校で一番偉い校長で~す。」
校長先生……。確か校務を統括し、所属職員を監督する学校の最高責任者。…………にしては軽い印象を覚える。もしかしてそんなものなの?
「いやーまさかこんなにも入学してくれるなんて……私もー泣きそ!」
泣くには陽気過ぎる声色を纏いながら言う。
確かに周りを確認したときにも思ったけど、かなりの人数がこの体育館にいた。
「ほんとはこの感動を熱く語りたい所だけど、あまり長話はできないの」
声のトーンは変わらないのに何故だろう。その音に寂しさが含まれているように思えた。
「さて、じゃあ本題に入りましょう」
空気が変わった。肌がひりつくような雰囲気が流れる。
「これから皆さんにはこの学園に通うに辺り、ある三つのルールを設けさせて頂きます」
「三つのルール?」
「もしかしてそれが公表されてない部分ってやつ?」
「私けっこう抜けてる所があるって言われるんだけど……大丈夫かな?」
先程までとは明らかに違う声色で知らされた事や、新しく出てきた校則になりゆるものに周りがざわつく。
三つのルール。多分これがまだ公表されていない部分。
「大丈夫ですよ。普通に生活していく分には問題ないですから」
声色は変わっていないけれど、安心させようとする言葉に周りから安堵の声が聞こえた。
私はその言葉にどちらかと言うと少し心がざわつく。
私にとって普通は普通じゃないから。
「では一つ目から公表させて頂きます」
少し不安が残るけど、それよりもどんなルール?が定められるのかが気になった。
「"学園内から出ることを禁止致します"」




