初日終了.1
夢を見るタイミングはどこ?
寝て直ぐなのか、時間を少し空けてからなのか、それとも起きる直前に見るのか。
別に大したことのないその答えをわたしだけは持っている。…………だからこそ私はこんなにも今か今かと待ち遠しい思いを抱えていた。
* * *
「…………お――…………い…………お――……い……――――おい」
急に体が左右に揺れる。
肩にかから運動エネルギーに振り回されながら自覚する。
そっか……私、寝たんだっけ……。じゃあ今起きたんだ。
「そろそろ反応をして欲しいんだが?」
「……おはよぅ……ござい…………ます」
比較的に低く野太い男の声。少し掠れていてけれど一音一音がはっきりと聞こえるその声から、普段からどれだけ喉を使っているのかを窺える。声の出所的に背も結構高い。
「おはようさん。まぁ、挨拶は出来て大変素晴らしいが……」
パチン
男の声が途絶えてすぐに額から後頭部にかけて衝撃は突き抜ける。
「………………いたい……」
衝撃地点たる額を手の平でさすりながら呟いた。
苦情というよりかは只、今まで額をピンポイントで攻撃された事が無かったので正直少し不思議な気分から漏れ出た言葉だった。それに少し大げさな音のわりに痛みはそれほど無く頭が後ろにやや倒れたぐらい。
「ほんとは寝ている状態で運ばれてきた状況を説明して欲しいんだが」
そう言葉を区切られる。
すると、ふと周の所々から小さな声や椅子が軋む音などがしていることに気づく。そしてその音達が静かに反響している事も。
「もう少しで始まる。だから静かに待て!」
やや後ろからさっきまでとは比べものにならない程の音量での声が放たれる。ただでかい声というわけでは無く、力強く張りがあるそれは、一瞬で場を支配した。
そして幸いの事に声の反響音で今どこにいるのいかがわかった。
「……えーそれでは、これから学校説明並びに校長挨拶そして開式の言葉を行います」
高い位置から発せられる声が"体育館内"を響き渡る。
発生源とは距離が離れていた為ちょうどいい音量。だけどマイク越しからなのか少し無機質に聞こえたそれは、もう一度眠気を呼び覚まそうとしてくる。そんな葛藤の中、聞こえてきた内容から一つ引っかかる所があった。
「ではまず学校説明から始めます」
違和感を探すように記憶を掘り起こそうとしたとき、次の言葉が耳に入ってくる。
「と言っても予めこの学校に関する資料を各ご家庭に送らせて頂いたので大丈夫だと思いますが、改めての確認と"まだ説明していない部分"の公表をさせてもらいます」
確かに満天星学園の大まかな事は家でキリに教えて貰った。まあ、さすがに校舎内にある備品や家具の具体的な場所とかは分からない。だから"まだ説明していない部分"に興味が向いていた。




