All my hours (powers)waste away.
「綺麗だよ」
「またまたぁ」
「本当だって」
私の夫は13歳年上で、そのくせ大人なのに子どもみたいなところがあった。
一目惚れしたのは私?なんだかダンディで上品な感じ。
「幸人くん、ご飯食べよう」
「今日は何?」
「鶏肉のすり大根と梅肉をつゆで和えたもの」
「おいしいよ」
夫は1500万貯金があった。
お金に目がくらみそうになる。
二人で洋服や指輪を買いに行き、夫は良い時計をはめて、私が運転する軽自動車であちこちでかけて。
仕事もしながらだったけど、貯金からどんどん使っていった。
そのうち、私は年下の男の人に夢中になる。
こんな人がいたなんて!
私があと10年若かったら!
幸人くんに、子どもができないことを理由に離婚を迫る。
優しい幸人くんは離婚を承諾した。
「好きな人ができたの?」
「ううん」
振られた私は虚勢をはる。
白髪に白い髭が無造作に伸びている。
「また再婚しようか?」
「そうだね」
そんな話をした後、警察から電話がかかってきた。
「幸人さんが亡くなりました」
「嘘……」
「携帯の発信履歴であなたが一番多く話していたのでお電話しました」
「死因は?」
「心臓の大動脈剥離です」
ああ。苦しかっただろう。
夜中に目を覚ます。
鏡で容色の衰えた自分の顔を見る。
「綺麗だよ」
いつだったか、そう言ってもらえた日々ははるか彼方。
涙が溢れ、かけがえのない人だったと、そう思った。