第十三話 消えたカリカリフードの怪
私の家から少し離れたところに公園があって、その公園の隣に住んでいる上品そうなおばあちゃんの家で飼われている茶トラ猫のチャコネちゃん。
チャコネちゃんは、そのおばあちゃんに作ってもらったクロマグロのリュックサック型ぬいぐるみをいつも背中にかるっていて、その姿はとても可愛くて、そして物静かでいつも礼儀正しくて言葉遣いが丁寧な子なんです。
ある日のこと
夜勤明けで朝帰ってきて、さてちょっと寝ましょかねってお布団に入った途端に…
聞こえてきましたわぁ…。
「チャコネは帰れウニャー!チャコネよそでご飯食べよるたいウニャー!あっち行けウニャー!」
とウニャキジちゃんのネチネチです…。
ドア開けるとウニャキジちゃんと珍しくチャコネちゃんですわ。
「あれ?チャコネちゃんどうしたの?こっち来るの久しぶりね。」
「はい。突然の訪問ごめんなさいでしゅ。うちのおばあちゃんが息子さんのところに5日間泊まりに行ってるんでしゅ。お孫さんの結婚式に出るらしいでしゅ。本当はボクも一緒に泊まりに行く予定だったんですが、ボクあんまり息子さん知らないし、前会った時なんか怖くて…行きたくなくてでしゅ…。だから泊まりにいく前の日に外遊びに行ってから家に帰らなかったんでしゅ。そしたらおばあちゃん、息子さんのところに一人で行っちゃったでしゅ。でもカリカリフードを外にたくさん置いてくれてたんですが、いつの間にかその日のうちに消えちゃっててでしゅ。おばあちゃん帰ってくるのは明後日なのでしゅ。もう3日何も食べてないんでしゅ。何か食べ物をもらえませんでしゅか。どうかよろしくお願いいたしますでしゅ。」
とチャコネちゃん。
相変わらず丁寧な物言い。
「そういう事なら仕方ないね。黒缶食べる?」
私がそう言った途端にウニャキジちゃんたら…
「嫌ウニャ!嫌ウニャ!あげんといてウニャー!黒缶はウチが食べるウニャ!チャコネは中野のおばあちゃんにいつも高級そうな物もらって食べてるウニャ!あげんといてウニャ!ウニャーウニャー!ウニャーウニャー!」
とわがままさんっ!
(´・ω・`)チャコネちゃんちのおばあちゃん中野さんていうんだ。知らんかった。
「ウニャキジちゃん、意地悪言わんの!チャコネちゃん、3日もご飯食べてないんだから黒缶くらいあげても良いでしょ!ウニャキジちゃんとチャコネちゃんは仲間なんだから仲良く!」
私、お説教ですよ。
前も言いましたが、最近しつけに厳しいのです。
(`・ω・´)
しかし、ウニャキジちゃんは
「やらんといてウニャ!チャコネは仲間じゃニャいウニャ!猫のくせに猫言葉使わんでおかしかウニャ!うちチャコネ大っ嫌いウニャー!チャコネのばかぁ!」
と必死ですわ…。
「こらぁー!ウニャキジちゃん、言い過ぎ!チャコネちゃんに謝りなさい!チャコネちゃんはウニャキジちゃんに何も言わんでしょ!謝り!」
私、ウニャキジちゃんにさらに説教ですよ。
「ゴメね…チャコネちゃん。ウニャキジちゃんには困ったもんよね…。…あれ?チャコネちゃん?どうしたの?震えてるよ?大丈夫?」
とチャコネちゃんに私が声を掛けると
「…このクソが。アタシの事大嫌い…?バカだと…?……ウゥゥ…………ガーーー!こぉのクソガキウニャキジぃ!アタシだってテメェの事大嫌いだってんだニャン!あ゛?死にたいニャン?テメェはアタシの必殺技で死にたいのニャン?アタシに上等こいたテメェがバカだニャン!!覚悟しろニャン!」
とチャコネちゃん豹変しました!
もちろんウニャキジちゃんだって黙ってません。
「本性見せたウニャ!ウチ負けニャいウニャ!ウチは成長期!育ち盛りウニャ!かかってこいウニャー!!」
と相手を挑発です…。
「もぅ…またケンカ?はぁ…私止めないからね。」
子供のケンカにシャシャリ出ないと決めてた私は見守る事にしました。
バトル開始です…。
「食らってくたばれウニャ!ウニャキジ怪音波!ウニャーウニャー!ウニャーウニャー!」
とウニャキジちゃんの先制攻撃!
「うわっ!ウニャキジちゃんそれは止めて!近所迷惑!」
この怪音波で日本国民の約90%の人がイラッとしたとか…。
「うにゅうぅぅ…イライラするニャン。このガキとんでもない技持ってやがるニャン。あの声はもはや兵器ニャン。今のうちに潰しておいた方が良いニャン。行くニャン!マグロニャルドモードチェンジ!!」
とチャコネちゃんがマグロニャルドを両手に持って頭の上に構えましたよ!
そしたら
『近接バトルモード:ニャルニルにチェンジします』
とマグロニャルドが機械音で喋りおるんです!
あれ?マグロニャルドでっかくなってるよ!?
さらにマグロニャルドの目が赤く光る!
『「猫神の鉄槌ニャルニルハンマー!!」』
チャコネちゃんとマグロニャルドの声がハモると同時に振り下ろす!
ごん!!!!
ウニャキジちゃんの頭にモロにヒット!!!
「うわぁっ!ぬいぐるみのはずなのに、なんか鈍器の音がしたよ!!?ちょ!!ウ、ウニャキジちゃん!!大丈夫なの!!?」
ウニャキジちゃん白目剥いて気絶でノックアウト。
(´・ω・`)良かったウニャキジちゃん息しとる。
少しして…
ウニャキジちゃん頭に氷嚢を当てて家の中で寝とります。
「ウニャ?……………ここはたまおしゃんの家?ピギャ!ヒ、舌噛んどるウニャぁ。あぅぅ…頭も痛かたぁい…。うにゅぅ…たんこぶもできとるウニャ。…ウチ涙が出てくるウニャ。ヒック…ヒック…うにゅぅ…。」
とウニャキジちゃん起きて泣きべそさん。
そしたら
「ウニャキジ…謝罪するでしゅ。お腹減りすぎて気が立っててやりすぎたでしゅ。ごめんでしゅ。」
とチャコネちゃん。
しかしウニャキジちゃんは
「痛かウニャぁ…ヒック…マグロニャルド凄く怖かったウニャ。涙が止まらないウニャ…うにゅぅ。」
と泣き止みません。
「もう…仕方ないですね。今日は黒缶にチュルチュールをかけてあげるから二人でお食べ。」
私がそう言うと
「チュルチュールウニャ!?やったウニャ!!やったウニャ!!ウチ、チュルチュール大好きウニャ!!!ほら、チャコネも一緒に喜ぶウニャ!!!」
と、ウニャキジちゃん一瞬で泣き止みました。
(*´▽`*) 流石チュルチュール。
でも、チャコネちゃんは
「チュルチュール?ボク、チュルチュール知らないでしゅ。」
と、首を傾げてます。
「ああ。おばあちゃんもしかしたら、い◯ばシリーズ知らないのかもですね。とってもおいしいらしいんで食べてみて下さい。」
(゜▽゜*)ほっぺ落ちるかも
そして二人にご飯をあげると
「ヒギャ!舌に染みるウニャ…。でも、うまいウニャ!幸せウニャ!」
「チュルチュールかけたら凄くおいしいでしゅね。ウニャキジ食べるの早いでしゅね。足りないみたいでしゅね。ボクの少しあげるでしゅ。」
「チャコネありがとウニャ!!遠慮なくもらうウニャ!!チャコネ大好きウニャ!!」
「やりすぎたお詫びでしゅ。」
そんな光景を見て私がほっこりしとりましたら
「そういえば、ボクのカリカリフードなくなったのなんでだろでしゅ。おばあちゃんたくさん置いて行ってくれてたのに、不思議でしゅ。」
「カリカリフードって、銀のフォークのカリカリフードウニャ?」
「そうでしゅ。ボクが寝てるうちに無くなってたでしゅ。ウニャキジ知らないでしゅか?」
「知ってるウニャ。あれうまかったウニャ。ウチ食べたウニャ。」
「あ゛っ?食べた?ウニャキジ、犯人はお前ニャン……?」
「だ、だって、おばあちゃんが外にカリカリフード置いてる時に会ったら『ちょっとは食べていいから、チャコネにも残しておいてあげてね。』って言われたウニャ。だから、食べたウニャ。でも、ちょっとウニャ。全部じゃないウニャ。あんなにたくさん食べきれないウニャ。信じてウニャ。」
「うん。ちょっと食べただけならいいでしゅ。でも、全部盗んだ犯人は誰でしゅかね。」
ホント5日分のカリカリフードはいずこへ?
(´・ω・`)
…
…
…
…
スタ、スタ、スタ。
「あ、ブルマちゃんこんにちは。今日はいつもより早い時間ですね。」
ブルマちゃんはなんだか難しい顔してしてます。
「チャコネに用事ニャ。チャコネ。お前ここで今後も食べる気ニャ?」
「違うでしゅ。やむを得ずお世話になったでしゅ。皆さんには迷惑かけたと反省してるでしゅ。おばあちゃんが帰って来たらここに迷惑かけないでしゅ。」
「本当は今回も許せないがニャ。今回は見逃すにゃ。貴様もカリカリフードなくなって大変だったようだしニャ。」
「なんでカリカリフードの事知ってるでしゅ。」
「実はニャ、俺様少しカリカリフード拝借したニャ。あれうまかったニャ。でも、少しだからニャ。貴様のとこのおばあさんにたまたま会ったら、ちょっとは食べていいって言ってたからニャ。そしたら拝借中にカラスがやってきたんで追い払ってやったニャ。でもニャ。夜に貴様の家の前通ったらカリカリフードはもう全部なかったニャ。犯人はたぶんカラスニャ。」
「そうだったんでしゅか。十中八九カラスでしゅね。きっとあの憎きブラック団でしゅね。団長はラスカーとかいうクソカラスでしゅね。子猫の時に襲われた事があるでしゅ。」
「そっかぁ。カラスかぁ。それにしてもブラック団って、ふざけた名前ですね。…ん?ブラック団?どっかで聞いたような?」
(´・ω・`)なんだっけ?
「はぁ…ヤレヤレニャ。ここに団員いるけど自覚ナシニャ。」
・ω・ ブラック団…?私やっぱりなんか聞いた記憶があるよ?
2日後…
ウニャキジちゃん、草むらをテッテケ走ってます。
「あ、ウニャキジちゃん、たんこぶは?もう大丈夫なの?」
私が声を掛けると
「たんこぶ、中野のおばあちゃんが帰ってきたから治してもらったウニャーーー。一瞬で治ったウニャ。ウニャハハ。たまおしゃん、またあとでご飯寄るウニャー。」
とウニャキジちゃんはモグモグしながら草むらの中に消えました。
(´・ω・`)あの怪我を治してもらったの?一瞬で治せるの?おばあちゃんは凄腕の獣医さんなの?