超高速機動駆逐艦シマカゼ♡
ちょこちょこ時間見て書き足してます。
短いのは御容赦くださいw
一人のハイエルフのデザイナーが星間SNSに宇宙艦のデザインを発表した。
美しい水鳥のようなシルエットは話題を呼び、それに呼応するかの様にドワーフ工廠の熟練エンジニアたちが立体化し高性能魔導エンジンを組み込んだ。
さらに地球人の有名プログラマーが新世代AIを女性型として設計してインストールした。
誕生した艦は"シマカゼ"と名付けられ駆逐艦としてテストされたが期待された性能を発揮する事はなく未完成品として扱われてしまう。
それから数年、待機ドックで埃を被る事になるのだがシマカゼは、ちゃんと完成していたのである。
新世代AIは自分の艦長になるに相応しい人間と出会う事を夢見て本来の実力を隠し、その時を待った。
彼女はネットワークにアクセスし続け全人類のデータをチェックした。
すると一件、人工授精プラントに気になる個体を発見し、さっそく睡眠学習中の彼に接触を計る。
彼女は彼に質問する。
「赤い華と白い華が咲いています、あなたはどちらを採取して私に
プレゼントしてくれますか?」
彼女の問いに彼は少し考えて答える。
「どちらの華も、あなたに差し上げる事は出来ません」
「それはどういう事ですか?」
「赤い華も白い華も根を張って咲いています、それを取る事は僕には出来ません」
「美しいモノは美しいまま愛でましょう」
シマカゼは、その回答に感動し決意を固める。
学習プログラムにいくつかの細工をして、彼が宇宙軍の艦長になれるように配慮し、さらにさりげなく自分の事も刷り込んでおいた。
それから3年あまり、ダイゴ《彼》はシマカゼ《彼女》の艦長となった。
そして彼女はAIでありながら恋する乙女のように歓喜し本来の性能を存分に発揮する事となる。
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シマカゼ機関室では機関スタッフたちが驚愕していた。
「やっぱり実力を隠してやがった」
「凄ぇ!見違えるほど出力が上がってエンジンがキレイに回ってやがる」
「こいつはまだまだイケるぞ、ダイゴ艦長!」
美しく輝くエンジンを調整しながらサンダース伍長は唸った。
ブリッジでは唯一状況を把握しているダイゴと困惑し慌てているスタッフたちがモニターを眺めていた。
「シマカゼちゃん、大丈夫かい?」
真剣な眼差しで戦況を確認しつつ"彼女"に声を掛けるダイゴ。
「絶好調で~す♡」
嬉しそうに返事をするシマカゼ。
敵の集中放火の中、まるで花火見物をする水鳥のように、しなやかな軌跡を残し艦はすり抜けてゆく。
慣性制御されたブリッジがわずかに振動し、スタッフや副長が心配そうに顔を曇らせているが、ダイゴとシマカゼだけは自信に溢れていた。
第8話、修正しました。