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大阪ガールズコレクション  作者: 大橋むつお
12/13

13『グーグルアース・馬場町・4』 


大阪ガールズコレクション:13


『グーグルアース・馬場町・4』   




 あれ?


 田中先生はマウスを握る手を止めてしまった。


「どうかしました?」


「ここって、馬場町だよね……」


「えと……はい、谷四から馬場町のあたりです」


 画面の表示を確認して返事をする。


「更地ばっかて言うか……JOBKないんだけど」


「JOBK?」


「ジャパン オオサカ バンバチョウのカド」


「なんですか、それ?」


「あ、大阪のNHK。馬場町の角にあるから、むかしからそう言うの」


「ハハ、おもしろおい(^▽^)! っていうか、NHKなら……ちょっと失礼します」


 先生からマウスを預かって、ストリートビューをグリンと回してからドローンビューに切り替える。


「あ、ここですよ。大阪歴史博物館と同居してる、このでっかい建物ですよ」


「……あ、ほんと」


 先生は再びストリートビューに戻し、マウスを転がして付近を散策。


「なんだか別世界だわ……ほら、法円坂とかも……日生球場も青少年会館もないし……そんな何十年も昔ってわけじゃないんだよ……なんだか、思い出たどるよすがもないよ」


「しばらく行ってらっしゃらないんですか?」


「うん……松屋町からも引っ越したし、間島先輩も彼女できちゃったし、なんとなく行かなくなって……十何年かな」


 落ち込んだ先生の気持ちを引き立てようと、グーグルアースで発見した見どころをいろいろ紹介する。


 先生は「へーー」とか「なるほど」とか喜んではくださるんだけど、なんだか気が入ってなくて、VR布教士のわたしへの義理立てという感じ。


「リアル馬場町に行ってみる」


「今からですか?」


「この目でリアルに確認してみる」


「付いていきましょうか?」


「ありがとう、でも、一人で行ってみる……グーグルアースに昔に行ってみる機能があればね」


 先生は「よし!」と気合を入れて図書室を出て行った。




 それが、先生を見た最後の姿になった。




 先生は、それっきり行方が知れなくなった。十日目には警察の捜査も入って防犯カメラや監視カメラのチェックで谷四の駅に着いたところまでは分かったが、その後の足取りつかめない。




 半月たって、先生のマンションの整理を行うことになった。京都の介護施設にお母さんが入ってらっしゃるんだけど、お体の問題でご自分では行けない。弟さんがアメリカにいるらしいが、すぐには戻ってくることもできず。職場でいちばん親しかったわたしが引き受けることになった。


 先生の部屋には、わたしが差し上げたオキュラスがゲームパソコンに繋がれたままだった。


「あれ?」


 パソコンはスリープのままになっていて、オキュラスのヘッドセットは――ちょっと休憩――という感じに伏せられたまま。


 スリープを解除してヘッドセットを付けてみる。


 やっぱり……復帰したパソコンはグーグルアースになっていた。


 え……これは谷四だ。


 地下鉄谷四の出口……でも、進んで行くと景色が違う。


 南に向かって建物が並んでいて、写真でしか見たことが無かったJOBKの建物が見える。


 交差点には通行人や信号待ちの人たちが映っていて、みんな珍しそうこちらを見ている。グーグルの全方位カメラは珍しいので、注目されることはよくある。


 でも、その中で、一人だけ正面を向いて信号が変わるのを待っている女子高生がいる。


 人間の顔には自動でボカシが入るようになっているので顔までは分からないが、二昔は前の制服だ。


 田中先生!?


 顔は分からないけど、雰囲気がそうなのだ。


 矢印を進めていくと、後姿だけでもカッコいい男子高校生が歩いている。さらに進むと、女子高校生が男子の直ぐ後ろに迫って、さらに進むと、ラノベの表紙絵みたいに向き合う二人。さらに進むと、ちょっと緊張しながらも並んで歩く二人。


 なんだか『君の名は』の二人みたいだ。


 さらに進むと……もう二人の姿は見えなかった。


 え?


 ストリートビューは、今の馬場町。


 JOBKは歴史博物館と同居している他は、大阪府警のビルがいかめしく、反対側はフェンスで囲まれた更地になっている。


 慌てて、元の道を戻ってみるが、もう昔の馬場町に戻ることは無かった。


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