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第2話 悪霊と人間

 家にたどり着き、俺は自分の部屋で着替えを始めた。服を脱ぐ度、俺は今の現実に疑問を投げかけずにはいられない。右の鎖骨よりやや下にある烙印。黒い線でくっきりと浮かび上がっているそれは、俺がジーラの“相棒”である証だ。あの時あいつが現れたから――



 あの時も、俺はいつものように下校していた。

 その辺の不良が誰かに集団で暴力をふるう。関わりたくないのはやまやまだが、俺は放っておけなかった。

「やめろ。」

突然の男の登場に、不良どもは振り向き、次々に不機嫌そうな声を出す。

「ぁあ?何だてめえは。」

「兄ちゃん、その年でヒーローごっこか?」

おちゃらけた冗談に、不良が笑う。そんな言葉にいちいち反応していたらキリがない。

「偽善者は黙ってろ!」

怒鳴ると同時に、拳が振り上げられた。だが、それは俺に当たることなく進んでいった。何人かの不良が繰り出す拳を、俺は難なくよけていく。そうして、俺は彼らにイジメられていたおじさんを担ぎ、なるべく人気の多いところへ走っていった。おってこないのを見計らい、おじさんを道に降ろす。

「大丈夫ですか?」

「大丈夫なものか!だいぶ殴られたわ!…しかし、君には感謝している。ありがとう。」

怒鳴りはしたがおじさんは丁寧に頭を下げる。そして帰って行った。


 家に着くと、俺は自分の部屋に上がる。いつも通りの平穏は、しかしそこで途切れた。

「よう。お前さっき通りで不良からおっさん助けたよな?強い上に優しい。オレの“相棒”にぴったりだ。」

「…誰だ。どこから入った?」

不意にかけられた男性の声に、俺は弾かれたように振り向いた。そこには、俺と同い年くらいで、同じ高校の制服を着ている男がいた。

「どこからって…どこからでも入れるぜ?だってオレ、悪霊だし。」

見れば、男の足下は霞がかったように消えて見えない。その上、向こう側が若干透けて見える。試しに拳を出すと、手応えもなくその体を通り抜けた。…なるほど。これなら家の壁も通り抜けられるだろうな。だが、問題はそこじゃない。

「何で悪霊がここに来た?」

俺の言葉に、悪霊だという男が思い出したような顔をする。

「そうそう。オレの名はジーラ。ちなみに、生前の名前は城戸田(きどた)(けん)だ。世界に溢れた悪霊が人間と協力して、アスタークを殺そうとしている。オレはあのアスタークを守りたい。…とにかく、オレには人間の相棒が必要なんだ。」

ジーラと名乗った男は口早に述べた。簡潔にまとめすぎて何の事やら分からない。

「…分かった。とりあえず帰ってくれ。俺には関係ない。」

踵を返し、俺は部屋を出ようとする。が、ジーラは慌てて泣きついた。

「ちょっ、待ってくれ!お前オレの話をどう聞いてたんだ!」

こんな訳の分からない話があるはずがない。恐らく夢か何かだ。声なんか聞こえない、聞こえない…

「ッ…!そっちがそのつもりならオレにだって考えがあるぞ!」

ジーラは俺の前に回り込むと、人差し指と中指を揃えて俺の右胸にあてがった。彼に触れられたところに焼け付くような激痛が走る。耐えかねて、俺は思わずうずくまった。服には、傷すらない。慌てて服をめくると、そこにはくっきりと烙印が浮かび上がっていた。

「へへっ、これでお前はオレの相棒だぜ!」

こうして俺は、ジーラの相棒になってしまった。

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