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モテたい二人

モテたい二人Ⅱ~漫才師は声が命~

作者: 若松ユウ

※二人のイメージ図

挿絵(By みてみん)

「ようこそ、下町演芸場までお集まりいただき、ありがとうございます」

「いやぁ、まぁ、見てよ。今日は、満員大入りやね」

「ホンマやね。後ろの壁際には、立ち見の方まで」

「早く、楽屋の丸イスを貸してあげなさい!」

「誰に言うてるんよ?」

「その辺で偉そうにふんぞり返ってる、イグザンプル・プロデューサーや」

「エグゼクティブね。例を出してどないすんねん。――どうでもエエけど、声が小さいな」

「そうかな? アー、アー。同情するなら、ギャラ上げろ!」

「後ろの方、スミマセンね。この子、一週間くらいインフルエンザで休んでたものやから」

「最先端の流行に乗ったわけやね」

「エエように言いなさんな。――久々の舞台で喉が本調子やないから、発声練習しよう」

「発声練習?」

「そう。アメンボの歌は、覚えてるか?」

「モチのロンよ。常識やない」

「ヨッシャ。ほんなら、私が前半を言うから、続けて後半を言うてくれるか?」

「任しとき。バッチコイ!」

「大丈夫やろか……。水馬(あめんぼ)赤いな、あいうえお」

「浮き輪に子供が、泳いでる」

「海水浴させて、どないすんねん。――柿の木栗の木、かきくけこ」

「桃栗三年、柿八年」

「そら、別の句やないの。――大角豆(ささげ)に酢をかけ、さしすせそ」

「最後の仕上げは、オリーブオイル!」

「ドコのキッチンよ。――立ちましょ喇叭(らっぱ)で、たちつてと」

「とてつもないほど、鳥肌が」

「何があってん。――蛞蝓(なめくじ)のろのろ、なにぬねの」

「何度もアタック、粘り勝ち」

「よう、言うわ。相手にブロックされてばかりの癖に。――鳩ポッポほろほろ、はひふへほ」

(からす)が鳴いたら、バイバイ菌」

「どういう意味やの。――蝸牛(まいまい)ネジ巻き、まみむめも」

「ネジ穴つぶれて、参ったな」

「何の話や。――焼栗ゆで栗、やいゆえよ」

「ヤイヤイ言いなや、やかましい」

「口を塞ぎな。黙ってたら、漫才にならへんやないの。――雷鳥は寒かろ、らりるれろ」

「レンゲでスープを召し上がれ」

「そのレンゲとちゃう。――わいわいわっしょい、わゐうゑを」

「ツンツクテンツク、ウー、マンボ!」

「お祭り違いや。……何や、一個も合うてへんやないの」

「そら、そやろ。真面目にやったら、漫才にならへん」

「エエ加減にしなさい」

「「どうも、ありがとうございました」」

※『あめんぼの歌』北原白秋


あめんぼあかいなあいうえお (水馬赤いなあいうえお)

うきもにこえびもおよいでる (浮藻に小蝦も泳いでる)

かきのきくりのきかきくけこ (柿の木栗の木かきくけこ)

きつつきこつこつかれけやき (啄木鳥こつこつ枯れ欅)

ささげにすをかけさしすせそ (大角豆に酢をかけさしすせそ)

そのうおあさせでさしました (その魚浅瀬で刺しました)

たちましょらっぱでたちつてと (立ちましょ喇叭でたちつてと)

とてとてたったととびたった (トテトテタッタと飛び立った)

なめくじのろのろなにぬねの (蛞蝓のろのろなにぬねの)

なんどにぬめってなにねばる (納戸にぬめってなにねばる)

はとぽっぽほろほろはひふへほ (鳩ポッポほろほろはひふへほ)

ひなたのおへやにゃふえをふく (日向のお部屋にゃ笛を吹く)

まいまいねじまきまみむめも (蝸牛ネジ巻まみむめも)

うめのみおちてもみもしまい (梅の実落ちても見もしまい)

やきぐりゆでぐりやいゆえよ (焼栗ゆで栗やいゆえよ)

やまだにひのつくよいのいえ (山田に灯のつくよいの家)

らいちょうはさむかろらりるれろ (雷鳥は寒かろらりるれろ)

れんげがさいたらるりのとり (蓮花が咲いたら瑠璃の鳥)

わいわいわっしょいわゐうゑを (わいわいわっしょいわゐうゑを)

うえきやいどがえおまつりだ (植木屋井戸換へお祭りだ)


  *


念の為、本来の詩を載せておきます。

あくまで参考目的の引用であり、また著作権も切れています。

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