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「アタシとコイツともう一人、今留学中の奴なんだけとさ、三人でコイツ拉致ったんだよな。」
「ラチッタ?」
「アンタと同じ誘拐だよ。」
「その頃ボク達は姫ポン達とはあまり仲良くなくてさ、って言うか敵でさ。」
「んでコレが兄と姫とどっちとも仲良さそうにしているの見て利用できないかなって。」
「うわヒドーい。」
「どっちがだ。」
「で?で?」
「でも連れ出したらコイツ普通の人の子でさ、やっぱり巻き込んだらカワイソウだよなって思って。」
「でも面白そうなヤツだからとりあえずトモダチになれって杏ちゃんがいきなり言って。」
「だってアタシ達が自己紹介しても全然驚かないんだぜコイツ。」
「そうっ」
エリクが突然口を挟んだ。
「ボクの正体を知ったのに全然驚かい。恐れもしないし。何より疑わない。」
「だよな。コイツちょっとオカシイ奴だって思うよな。」
「その後一緒に出掛けてその時憑き物に襲われたんだ。」
「ボク達三人の盾になってくれたんだよ。ガクブルしながら半べそかきながら。」
「そりゃ惚れるっつーの。」
「アレは感動したよねー。」
でも最終的にはエリクと南室さんや小室さんに助けられたんだけどね。
「そうな。ボクあれだけだったらキズナに惚れて無かったかも。」
「アタシはもうあの時やられてたね。コイツはアタシのモンだって決めてたね。」
「ボクはね、あの後姫ポンとお友達になれて。」
栄椿がポロポロ泣き出してしまった。
「ボクもう嬉しくてさ、全部キズナのお蔭で、うわーん。」
橘結がそんな彼女をあやしながら
「私と椿ちゃん達をトモダチにしてくれたのもキズナ君なのよ。」
とサーラに言った。
「敵対してたとか言ってたわよね。」
「私がね、椿ちゃん達に酷い事したの。」
「ち、違うよっあれはボク達がっ」
2人の言い合いを遮るように南室綴が
「そんな事情知ってるくせにコレが「お前ら俺のダチなら仲良くしやがれ」とか言うのよ。」
そんな言い方してない。誰なんだそれ。
「エリクも皆と和解できたのってキズナのお蔭だって言ってたわよね。」
「そうだよ。キズナがボクのトモダチだから皆はボクを信じてくれたんだ。」
ちょっと持ち上げ過ぎな。僕はそんなに大した奴じゃない。
「考えて見ると凄いのよね。神の巫女にキャットウーマンに雪の女王に」
「今ここには居ないけど蜘蛛女もコレに惚れてるよ。」
「あと痴女な魔女もな。」
「私達なんて吸血鬼よ。何て言ったかしら。えーと、そう魑魅魍魎。」
「難しい言葉知ってるのね。」
「そんな連中に慕われている人の子なんて他に知らないわよ。」
「その恋人の私が最強つて事ね。」
「ああっ?どさくさに紛れて何言ってやがる蚊トンボめ。コレはアタシんだぞ。」
「フン。仔猫は大人しく魔女に飼われていればいいのよ。」
「にゃんだとっ。」
「2人ともソレはもう既にワタシのだから。」
「違うな。ボクのだな。」
「日焼けした雪女が何言っても説得力ないわよ。」
4人でワイワイ始めたのを見兼ねて
「時々お前が可哀想に思えるよ。」
と小室絢が同情してくれた。
「あんな妖怪連中に言い寄られて大変だな。」
「一番人間離れしてるお前が言ってんじゃねぇよっ。」
と宮田杏が僕の腕を引っ張る。
「そうよ。貴女人間の化物じゃない。」
サーラまでそう言って小室絢から僕を奪い返す。
「覚悟するのね。私達みたいなモンスター相手に唇を狙われているのだから。」
唇って何。
「あ、コレ言っちゃダメなんだっけ。」
クリスマスパーティーのような部屋の飾りや料理に感心していると
「私達明日から一度国に帰るからその前に皆とクリスマスをしたかったの。」
フィンランドのクリスマスは特別だと言った。
「12月をJoulukuu月って言うくらいだから。」
「皆だって当日は家族と過ごすのでしょ?」
日本では家族で集まるのって子供が子供の頃だけじゃないかな。
「夜中にこっそりサンタが忍び込んで朝起きたら枕元にプレゼント置いてあるってやつね?」
「ないない。うちなんてケーキ食いながら晩酌してる父ちゃんがその場で配るよ。」
「去年なんて図書カードだぞ。これで参考書でも買えって。」
「小さい頃からずっとそうだったからサンタさんの話なんか無かったな。」
「何そのサンタさんの話って。」
「サンタさんて何歳まで信じてた?て話よ。」
「信じるも何もフィンランドにいるわよ。」
サンタクロース(フィンランド語ではヨウルプッキと呼ぶらしい)は、
コルヴァトゥントゥリの山中で妖精トントゥと一緒に住んでいる。らしい。
「サンタクロース村だってあるのよ。ねえ、一度だけ連れて行ってもらってわよね。」
「うん。行ったね。そこね毎日サンタがいて一緒に写真撮ってくれるんだよ。」
「テーマパーク?って言うのかしら。観光施設ね。」
そう言えばサンタの国だったね。
「そうよサンタが堂々と玄関から現れてプレゼントを配って一緒に歌ってもてなすのよ。」
「もちろん子供達は皆サンタとかトントゥの格好してね。」
「それで来年もイイ子でねって帰るの。」
「玄関から「悪ぃ子いねぇがー」て現れる風習は日本でもあるじゃん。」
「あんなサンタ怖いわ。」
帰ってくるのは新学期が始まってからになるだろうとエリクが言った。
日本での年末年始を経験できないのは残念だがイロイロと忙しい一族。
気を悪くされると思ったので黙っていたが
フィンランドの人はパーソナルスペースが広いとか
他人と話す時目を見ないとか聞いた事があるがエリクとサーラに当てはまらない。
所謂ステレオタイプなのだろうからあてにはならないと思っていたが
どうやら社交界に出席する事が多いので矯正されたらしい。
丁寧な言葉遣いもその振る舞いも王子様とお姫様。
吸血一族とは言うがとても由緒ある家で、政界や財界にも相当顔が効くとか。
となると本人はともかく一族の主な活躍はアメリカであったりEU諸国であったりするのだろうから
国際的な風習とか生活に慣れていても不思議ではない。
もしかしたらサーラが日本に留学したのも、日本での活動を行うための足掛かりだったりするのかも知れない。
「日本のニューイヤーとかってどうするの?」
大抵は家族で過ごすんじゃないかな。
一緒に年越し蕎麦を食べて除夜の鐘を聞いて、初詣に行って、お節やお雑煮を食べる。
「何だか知らない言葉がたくさん出て来たわ。」
「クリスマス終わったらすぐ戻って来ようかしら。」
忙しいでしょ。移動だって大変だよ。
「それもそうね。」
と、その時は笑って済ませていたのだが。




