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Kiss of Monster 02  作者: 奏路野仁
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086

冬休みに入ってすぐ、僕達はサーラの家にお呼ばれされた。

(残念ながらルーは家族と新年を迎えるため帰国した)

以前のホテルの廃墟ではなく、

二つ隣の町の大きなマンションの最上階。

一体家賃はいくらするんだろうと考えずにはいられない広さ。

中は見事なツリー(どうやって運んだんだ?)に綺麗な飾りつけ。

ただ呼ばれただけの僕達は

何の手土産も用意していない事に後ろめたさを感じながら素晴らしい料理を堪能した。

大きなモニタで皆で持ち寄った修学旅行の写真を見ながら

ついこの前行ったばかりなのに、まるで「思い出」のように語り合った。

サーラはずっと僕の横にいて、ずっと腕を組んでいた。

写真を見ている間はそれには無関心かと思われた。が、

「アーッ。ダメだっ集中できんっ。」

「オイコラっ蝙蝠娘っとっととキズナから離れろっ。」

「蝙蝠娘って何よ。この猫娘。」

「それはアタシんだっ。」

「だからっ。ボクのだっての。」

またはじまった。誰のものとか何を言ってるんだろうかこの人達。

「前から聞きたかったんだけど。」

「サーラはキズナの事本当に好きなの?それともただの遊び?」

「好きよ。遊びじゃないわ。」

は?何で?

「何でって。」

あの時君を助けようとしたから?

あれは僕じゃなくてもそうしたよ。

サーラはそれを錯覚しているだけだと思うわっ

サーラは僕の胸倉を掴み

「あそこに居たのがキズナ以外の誰かで、」

「その人が同じように私を助けてくれたのならその人に惚れたかも知れないわ。」

「でもそこに居たのはキズナで、アナタがそうしてくれたから惚れたのよ。」

「コレは何でそんな事が判らないの?」

聞かれた皆は笑う。

「そもそもよ、キズナ以外の人があの場に居る事自体があり得ないのよ?」

「そうそう。それ、実は私その話詳しく知らないの。」

「サーラちゃんはどうしてその時キズナ君と一緒にいたの?」

「どうしてって。その、えーと誘拐して脅迫しようとしたらから。」

モジモジと申し訳なさそうに釈明するサーラに

一瞬皆はキョトンとして、揃って皆笑い出す。

「あの時はそうするしかなくてっ。」

「待って違うの。」

「違うって何。」

「私達も皆そうなの。」

「え?」


最初はエリクだった。

僕と橘結との繋がりを誤解し利用しようとしていた。

「ボクも脅迫したんだよ。キズナも気付いてたのにトモダチになってくれたんだ。」

「プリンセスを守るためにね。」

あれ?言って良かったの?サーラには

「もう全部話したよ。」

橘結を吸血族に迎え入れようとした事実。

サーラは帰国後兄から全てを聞いた時、彼を叱ったと言った。

「私は一目見て貴女がお姫様と呼ばれている理由が判った。」

「ごめんなさいねユイ。兄が怖い目に合わせて。」

「え?いえそんな。」

サーラに謝られた橘結は明らかに動揺していた。

サーラは橘結に微笑み、それ以上何も言わなかった。

「キズナはロゼ家の者からユイを守ったのよね。」

守ったのはエリクだよ。あの時僕は腰を抜かして

「それでその時この小さな勇者にお姫様が惚れたのね?」

聞いてくれって。僕は勇者なんかじゃなくて

「姫はもっとずっと前からキズナの事好きだったんだよな。」

「え?どういう事よ。」

南室綴と小室絢が、僕と橘結の幼い頃の話をする。

トモダチになって、また会いに来ると約束した「風船の子」

「何それ。何よそれー。いやーん。素敵だわっ。」

「それなのにコイツ再会してもしばらく姫の事忘れてたんだぜ。」

「ヒドーイ。」

「最っ低。」

「クズね。」

クズ扱い。

「その後コイツを呼び出して姫とトモダチになりやがれって絢ちゃんが脅したのよね。」

「髪の毛掴んで引っ張ってきたのよ。」

「うっ。イヤあれは違う日で、その時はだって、アレはそのー。ゴメン。」

「うわっ髪の毛毟るとか怖すぎるっ。」

「毟ってはいない。」

「ワタシはその前日にコレに助けられたの。」

と南室綴があの日の事を話し始める。

「連れ出して脅していたの。」

「それ本当?私と全く一緒じゃない。」

「なのにワタシの事守ってくれて。震えて泣いてるくせに心配までしてくれて。」

「挙句にワタシが姫の為にそうした事までちゃんと判ってて。」

「そうっ!そうなのよっ。私の時もエリクの為にそうしてるのコレ判ってたのよっ。」

「ワタシもうソレでキュンキュンしちゃって。」

「いやーんもう一緒。全部一緒。」

サーラと南室綴が手を取って笑っている。

「私もコレを車で連れ出して脅すつもりでいたの。て言うか脅している最中だったの。」

「メデューサの蛇から私を守ってくれて、車の中でも私を抱きかかえてくれて」

「逃げろって言ったのに逃げないで私の前に出るのよコレ。フラフラしてるのに。」

「私はその時まだ気付いていなかったんだけどね、」

サーラはチラと僕を見てから続けた。

「その後、トモダチになってあげるっ言ったとき、コレがにっこりしながらよろしくね。って。」

「ソレ見て、ああ私コレの事が好きになったんだ。て。」

さっきからずっとコレ扱いだけど褒められてるのか?

いやそもそも本人同席しているのにする話なのか?

「で?アナタたちは?」

とサーラが宮田杏と栄椿に催促する。興味津々だ。



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