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Kiss of Monster 02  作者: 奏路野仁
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修学旅行は楽しかった。

学校での「旅行」に参加したのは初めてだった。

「初めてって?中学の時はどうしたんだよ。」

保健室で三原先生にお土産を渡しながら

ついつい余計な事を言ってしまった。

行ってません。

この人に言っていなかった。ずっと言わなかった。

言わなくてもいいかと思っていた。僕の大好きな人にはあまり知られたくない過去。

「何で。病気でもしたのか?」

行きたくなかったから。行けなかったから

行くべきではないと、行ってはいけないから。

「どうして。」

僕は小学生の頃から、学校に通うようになってからずっと

ずっと1人で居ました。

だから小学生の頃から旅行には行かなかった。

旅行だけじゃない。行事らしい行事は全部休みました。

「一人でって、もしかしてイジメられてたのか?」

そうです。僕はずっとイジメられてきました。

「なんで。」

ボロボロの身体と、見えない「何か」を見てしまうから。

僕が不気味な存在だから。

クラスメイトだけじゃない。教師も見ないフリをした。

「そんな。」

僕がこの町に越して来たのだって、今まで居た場所から離れたかったから。

僕の事を知っている人が居ない場所に行きたかっただけなんです。

僕の告白を聞いて彼女は少し言葉を詰まらせ、そして何かに納得したようにつぶやいた。

「ああ、そうだったのか。」

彼女の中で、きっと全てが繋がったのだろう。

僕がこんな言葉遣いなのも、

無駄に料理が得意な事も、

他人からの好意を素直に受け取れない事も

そして彼女が魔女だと打ち明けても驚かなかったり、

人ならず者と平気な顔でトモダチ付き合いしている事も。

きっと全て「説明が付く」に違いない。

僕はまた彼女を泣かせてしまった。

「私はずっと纏ちゃんの事だけがお前をそうさせたんだと思い込んでいたんだな。」

「だからお前アイツらと居るのか。いやアイツらとしか居られないのか。」

人ならざる者同士、異端者同士、傷付いた者同士。

大人達に受けた酷い仕打ちは多分一生忘れないだろう。

同級生達が僕にした日々の嫌がらせも忘れない。

だから僕は人を信じない。大人も子供も、誰も味方になんてならないと知っている。

この街に来るまでは。

素敵な人達に出会い、僕は少しだけ変わる事ができた。

信じられる人はいる。味方になってくれる人もいる。

今の僕はそう言える。目の前の、僕なんかの為に泣いてくれる女性もいる。

しかし、変わらない部分もまだ残っている。自分ではどうにもならない。

すみません。内緒にしているつもりでは無かったのですが、言わずに済むならそうしたかったので。

「いや。謝らなくていい。よく言ってくれた。」

彼女はまたいつものように僕を抱きしめてくれた。とても強くそうしてくれた。

「お前が皆とトモダチでいてくれる理由が本当に判った気がする。」

「皆がお前を必要だからだと思っていたけど、お前にも皆が必要だったんだな。」

それは彼女達が僕の正体を知って、それを黙っていてくれるから。ではない。

同じような想いを、同じような傷を負って今に至ったから。

皆との出会いが事故みたいなものだったとしても

皆が僕をトモダチの一人としてくれているから。

本当は修学旅行もサボるつもりでいたんですよ。

でもそれを察したみたいで

「ムリにでも連れていく。」

「首輪嵌めてリードで引っ張って連れていく。」

「折りたたんでスーツケースに詰めて。」

「手荷物扱いで。」

「空輸のが楽でしよ。」

「いやだめだ。目の届く処に置きたい。」

「死なない程度に痛めつけて弱らせて担ぐ。」

もう散々脅されて。

「うん。それならよかった。本当によかったな。」

彼女はしばらく僕を離さなかった。

「オラーッ」

保健室のドアが物凄い勢いで開く。

そして宮田杏が叫ぶ。

「痴女魔女めっ。キズナから離れろーっ。」

「またすぐそうやって本当に。魔女てよりただの悪女よね。」

南室綴は呆れているが、小室絢が異変に気付く。

「って紹実ちゃん泣いてる?」

「煩い。あーっもうっ。」

「な、なによ。悪かったわよ悪女だなんて言って。」

「騙されるな綴っ。コイツはただの痴女だっ。」

「黙れっ化物どもっ」

どもって

「いいか。お前ら。キズナと仲良くしろよ。」

「コイツを裏切るような真似をしてみろ。私がソイツを燃やす。」

「怖っ」

「チョ目がマジすぎる。」



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