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Kiss of Monster 02  作者: 奏路野仁
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「ちょっと。」

「皆の事を相談に来たのに何でキズナに聞かれたくないか言え。」

「皆の事だからとか関係ないわよ。」

「じゃあ何でだ。それ聞いて納得したら2人きりで聞いてやる。」

「でも。」

「キズナだってお前を心配して駆け付けたんだぞ?」

南室綴は僕をチラっとだけ見て目を伏せた。

「キズナの事は私が守るって言ったから。」

「は?」

「だから、私が守られたり頼ったりしたらダメなのよ。」

「またそんな事言って。ホント可愛くねえよな。」

「そうよそんな事承知してるわよ。」

「姫や絢ちゃんみたいにもっとカワイイ女の子だったらキズナだって」

「そうじゃねぇよ。全く。ホント揃いも揃って。」

揃いも揃ってって僕の事だろうか。

「可愛く無いってのは可愛気が無いって意味だよ。」

「何よそのカワイゲって。」

「もっと甘えろ。もっと頼れ。お前女子高生だろうが。」

「南室の両親に甘えるの恥ずかしいなら私だっていいよ。キズナだっていい。なあ?」

え?うん。

「だから紹実ちゃんにだけはずっといろいろ相談してきたじゃない。」

「相談はされたけど甘えられた事なんて無いぞ。」

「仕方ないでしょ甘え方なんて知らないんだから。」

と、南室綴の真剣な答えに三原紹実は笑い出す。

「あーそれでか。」

「お前ら似てるなあと思ったけどソレが何なのか判らなかったんだ。」

「今判ったよ。」

「なるほどなぁ。綴。今はキズナの方が素直だぞ。」

「は?何よ突然。」

「キズナは抱きしめたら抱きしめ返してくれるようになったぞ。」

「何よそれ。知らないわよそんな事。」

「綴は私が抱きしめてもそのままじゃないか。」

「今のキズナはちゃんと私の事を抱きしめてくれる。」

「それが甘えるって事なんだよ。」

こいつも最初はそうだった。ずっとそうだった。と言って続けた。

「コイツ抱き心地いいからついつい抱きしめちゃうんだけど。まあそれはいいや。」

「綴はいつまで経っても私を抱きしめないよな。」

「やっぱり紹実ちゃんもそうだもんね。」

南室綴の目には涙が溜まっていた。

零さないように耐えている姿が堪らなく痛々しかった。


「やっぱりって何だよ。」

南室綴は答えなかった。答えられないのだろうか。答えたくないだけ?

「言えよ。お前そういうのちゃんと言え。私もキズナもちゃんと聞いてやるから。」

少しキツメの先生の言い方に、南室綴は涙を零してしまう。

そして同時に、想いも溢れ出た。

「紹実ちゃんはキズナのお母さんのトモダチなのよね。キズナとも小さい頃会ってるって。」

「絢ちゃんも親同士知り合いで、親友で、赤ちゃんの頃の写真も見せてもらったわ。」

「2人で仲良く並んで寝ていて。」

「姫だってそうよ。子供の頃夏祭りでトモダチになって。ずっとトモダチのままで。ずっと風船の子。」

「私には何も無いのよ。キズナと何の繋がりも無い。」

「ズルイじゃない。不公平じゃない。ワタシにはいつも最初から何も無い。」

「せっかくワタシが手に入れようとしているのに。」

皆がいる時、必要以上に僕に近寄るのも、

揄われていると勘違いしてしまう程のその態度も、

彼女はずっと僕と「皆と同じような繋がり」が欲しくてそうしていた。

でも、どうして僕なんかの事をそんなに想ってくれるのだろう。

いやそれは想いとかじゃない。

ただ隣の子をの持っているオモチャを羨ましく思っているだけ。

両親に捨てられて、幼い頃からずっと1人で、

ずっと誰かとの繋がりを感じる事なく大きくなって、

「我儘も言わずイイ子」だと言われ続けたからって、

本当に本人がそれを望んでそうしたとは限らない。

彼女はずっと何かを欲しがっていたんだ。

僕に対する想いだって?

何を自惚れた事言っているんだ。

彼女が言ったのは全く逆の事じゃないか。

初めて見る彼女の涙に僕は動揺して勘違いするところだった。

彼女が親友だと思っていた小室さんも

守り続けたいと決意した橘さんも、

自分を救ってくれた素敵な魔女との間にも

彼女の繋がり全てに僕が割り込んでその関係を壊してしまっただけじゃないか。

ああ、なんて事をしたのだろう。

僕は何て申し訳ない事をしてしまったのだろう。

ごめん。ごめんなさい。

俯く彼女に、僕はそれしか言えない。

ごめんなさい。僕がこの町に来たばかりに。

ごめんなさい。

僕が南室さんと皆の繋がりを壊したんだ。ごめんなさい。

「なっ。ち、違うっ。」

彼女は顔を上げ、取り乱したように否定して、

僕が自分でも気付かない内に零していた涙を拭ってくれた。

その脇で三原先生が笑い出した。結構本気で笑っている。

そしていつものように僕の頭を撫でる。

「お前はまったくもう。笑っちゃったよ。」

「綴が悪いぞ。自分の口で説明しろよ。」

南室綴を見ると彼女は呆れたような顔で僕を見ていた。

「説明って。」

彼女は座ったまま僕の手を取って、少し引き寄せて、それから困ったように、そして静かに言った。

「ワタシはね、キズナが来たからキズナに皆を取られてしまう。なんて事を言ったんじゃないのよ。」

彼女は僕の体に腕を回して引き寄せ、僕の薄くて頼りない胸に顔を埋めた。

「皆、キズナとの想い出があって羨ましいって、そう言ったの。」

「ちゃんと話聞きなさいよ。ワタシにはキズナとの繋がりが無くて、だから皆ズルイって言ったでしょ。」

「ワタシはアナタを独り占めしたいだけなのよ。」

彼女は僕の胸で涙を拭くように何度か顔を擦り付けていた。

三原先生が僕の肩を叩いて彼女の頭を顎で指した。

僕は初めて彼女の頭を撫でた。

いつも皆が僕にそうしてくれるようにそうした。

彼女は僕を強く抱き締め返してくれた。

こんなに薄い胸じゃ頼り甲斐も甘え甲斐も無いと思うけど

守られたくないなんて、頼りたくないなんて言わないで。

僕はいつだって南室さんを助けたい。

僕に出来る事なんてたかが知れてるけど、僕に出来る事なら何だってする。

「うん。判ってる。キズナの気持ちはちゃんと判ってる。」


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