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皆根が真面目で妥協を知らないからこその衝突。
ただそれは多分、他の誰かに対して腹を立てているのではなく、
思い通りに演奏できない自分に対して不甲斐なさを感じているだけ。
それぞれがそう思っているからこそ衝突しているように見える。
少しピリピリしている。
慣れたのかな。怖くはない。微笑ましいくらいだ。
僕は皆の前に歩み出て
えっと一つ聞きたいんだけど。
いや本当はあまり聞きたく無かったんだけど
練習しているの聞いててあれ?って思って
「何だよ。」
いやあ思い過ごしだと恥ずかしいから聞きたくなかったんだけど
もしかして、僕の事歌ってる曲ある?
「バレたっ」
だって見えない何かより私を見詰めて的な事が
「ギャーッ言うなっ。歌になってるから許されるんだぞっ。」
恥ずかしいのはこっちだい。
「歌詞なんて恥ずかしいくらいでいいんだよ。」
「ソング大変だったよ。凄いのあったね。子猫ちゃんなんて」
「黙ってろワン公。」
気になる。
「スキスキダイスキアースキスキ」
小室絢が棒読み
「黙れっっ」
「少しは捻れ。」
「ユイも相当だったけどね。」
「な、何よ。サーラちゃんだって私達が判らないからって母国語使って。」
「そうそう。それ聞いてたら兄が怒っちゃって。」
「いやソレがかなりキワドイ言葉でね。」
「何よ。アメリカあたりのラブソングなんてこんな感じでしょ。」
「とにかくどの曲もキズナと皆の事が少なからず絡めてある歌になったんだよ。」
「作詞センスは意外な事に絢ポンがイチバンだったって言うね。」
「絢ちゃん本読むの好きだしね。」
「まさかの乙女ポエマー。」
「お前はスキスキ言ってろ。」
皆に笑顔が戻った。
でも。と僕は続けた。
僕の事歌ってくれるなら楽しい歌がイイなぁ。
学校に戻って作業を再開。
文化祭の準備は佳境に突入。各クラブは作業に追われている。
南室綴もまだ残っているだろう。
会議室には誰も居なかった。
溜まっている筈の書類の束は全て片付いていた。
体育館や校庭屋外ステージでの設営作業現場にも姿は見えない。
作業はまだ続けられているから帰ってしまうなんて事はあり得ない。
一瞬、昨年の事が思い浮かぶ。まさかまた倒れてしまったとか。
探し回る前に、保健室に駆け込んた゛。
そこに南室綴はいた。
倒れてはいなかった。三原先生と向かい合って座り話をしている。
もしかして保健室で寝ているかも。と思っていた僕は
静かにドアを開けたので彼女を心配して駆け込んだ。とは思われず済んだ。が、
「どうした?」
南室さんの姿が見えなかったので。
「あ、ゴメン。心配した?」
余計な事を言ってしまった。姉に会いに来たとでも言っておくべきだった。
あいやその心配と言うかまあ他に居なかったし帰る筈無いと思ったのでもしかしてと
「ホント嘘吐くのヘタだよなお前。心配したなら心配したって言えよ。」
うっいやまあ。はい。少し。
「ゴメンね。ありがと。でもキズナって結構心配性よね。」
「お前が去年倒れてるからだろうが。」
「そうでした。」
まあ何とも無いならそれで。あ、書類整理ありがとうございました。
「何よそれが気になって早く戻って来たの?皆の様子どうなのよ。」
判りません。
「ええっ判らないのに戻って来ちゃったの?」
火は点けたと思います。
そこの姉曰く小賢しい方法を使い、煽った。
皆がどのような決断を下すのかは知らない。
それでその、南室さんは大丈夫なんですね?
「え?ああ。うん。大丈夫。倒れて運ばれたわけじゃ無いから。」
「皆の事に責任感じて相談来たんだよ。」
「ちょっと何で言うのよ。」
「いいじゃないか。キズナにも聞いてもらえよ。」
「ダメよ。」
「ダメって何だよ」
「何って、ダメなものはダメなの。」
「お前ねぇ、私にだけ言ったって結局キズナに全部話すのは当たり前なんだぞ?」
「何よその当たり前って。教師なら生徒の悩み事は秘密にしておきなさいよ。」
「教師である前にキズナの姉だからな。姉は弟に全て報告する義務がある。」
何かいつもと言ってる事が違うな。
あの、席外しますよ。
「うんおねが」
「ダメだ。」




