067
「その海合宿の事詳しく教えてよ。」
毎年8月の初旬に道場に通う小学生を対象に
海の家を1軒借り切っての合宿。
「今年っていつ?」
「8月の2日3日。」
「泊まるのってその海の家で雑魚寝?」
「うん。二階があって子供達はそこで雑魚寝。大人達は酒盛りしてるよ。」
「例えば私達3人泊まるくらいの余裕はある?」
「あるある。結構広いから余裕。ただ問題は足なんだよ。」
「足って、交通手段ね。」
柏木梢はPDAを取り出し
「ちょっと紹実ちゃんの予定を」
「待てっ。」
それを止めたのは宮田杏。
「何だよもう。この際いいじゃない。」
「いや待て。三原がどうこうじゃない。とにかく待て。」
宮田杏もPDAを取り出しどうやら父親に連絡を取る
「夏休みっていつ?}
「うん。うん。ああじゃあさ、海行かね?皆で。」
「そう。いや泊まりで。泊まるトコは大丈夫。」
「わかった。じゃあ確認できたら。」
電話を終え
「アタシと両親、梢に椿にキズナ。それと桃(妹)。」
「弟と妹はそっちで連れて行けるんだろ?」
「あの2人は道場通いだからな。大丈夫だよ。」
「よし。何だったらアタシと父ちゃんくらい車ん中で寝泊まりできる。」
「うわっ。」
今度は南室綴が叫んだ。
「杏ちゃんに今きゅんてなったわ。」
「やめろっ。お前が言うと何か生々しいんだよっ。」
後日、エリクとルーを誘う。
彼なら足はどうとでも用意できるだろう。
「残念だけど予定が」
「オーーーーノーーーーッ。行きたい行きましょうっソッチ行きましょうっ。」
2人で何処か行くの?
「ウン。」
「イヤーーーッ男2人なんてイヤーーーーッ。」
夏休みになると2人はこの街から姿を消した。
「吸血鬼と狼男の二人旅とか不気味すぎる。」
「薄い本3冊分くらいの価値はあるけどね。」
「キズナは誘われなかったの?」
うん。
「トモダチなら誘えよな?」
トモダチだから誘わなかったんだよ。
僕はそれがただの観光ではないと知っている。
ただ時折届く写真添付メールを見ると。
実は本当にただの観光だったのか?と疑いたくもなる。
当日。宮田家に到着すると、宮田杏の両親と妹の桃ちゃんが荷物を積み込んでいた。
柏木梢も栄椿も既に荷物を積み、どうやら僕が最後だ。
宮田杏は両親に度々僕の話をしているようで
初対面から好意的に受け入れてくれた。
娘と橘結との関係にとても心を痛めていて、たまたま間に入っただけの僕に
どうしても直接お礼を言いたかったと手を取った。
「今度ゆっくりうちに遊びに来なさい。纏ちゃんの話しもしてあげるから。」
母は有名人だ。
「宮田家も母親公認かよー。」
「もって?」
「橘家と小室家からも親の認可受けてるんですよコイツ。」
認可って何。
それをどうして柏木さんが知っているの?
「綴が自慢してた。」
「今度改めてボクの家にもおいでよ。正装じゃなくてもいいからさ。両親に会わせるからさー。」
栄椿が何やら言っていると、宮田杏の妹の宮田桃が
「真壁さんて姉ちゃんのどこがイイんですか?」
はい?
「何聞いてるんだよお前っ。」
「だって姉ちゃん「アイツ絶対アタシに」」
「だーっおらっ。」
宮田杏は宮田桃を抱え口を塞ぐ。
桃ちゃんのお姉さんは楽しくてトモダチ想いでカワイイから
僕だけじゃなくて皆から好かれているよ。
「オマエも何言ってやがる。」
「照れるなよー。私も杏ちゃん好きー。」
「ボクも大好きだよー。」
荷物を積み終えワイワイしているが中々出発の合図がない。
何かあったのだろうかと心配していると
「もう1人来るから。お前の知り合いだぞ。絢にもちゃんと報告済みだ。」
そうなの?
「柚がその子誘った時にキズナも行くって言ったら超喜んだってよ。」
柚ちゃんて下の妹さんだよね。小学生の知り合いなんていたかな。
と話していると一台の車。
降りてきたのは敷島楓と彼女の両親。
両親は宮田両親に挨拶。娘がお世話になりますよろしくお願いします等々。
おじさんの言うことよく聞くのよ等々。
菓子折りを渡し大人の会話が終わると僕の元に来た。
「楓をよろしくね。」
敷島楓の母親はすっかり元気になった。
「今でも時々オムライス作ってくれるの。」
「近い内に遊びに来てね。今度は楓が絆君にご馳走するから。」
はい。ぜひ。
「ほんとよ?社交辞令じゃないからね?」
判りました。いつでも大丈夫です。都合の良い日を教えてください。
夏休み中は特に予定を入れていない。




