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Kiss of Monster 02  作者: 奏路野仁
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063

覚悟を決めろ。トモダチを助ける。きっと僕にしか出来ない。

いつもの彼らなら気付いただろう。

体育祭で熱くなりすぎた。

まだ威嚇し合っている状態だ。

お互いの視線を僕に向けさせ意識を逸らせればいいだけだ。

怖いっ。泣きたくなくるほど怖い。

2人の距離が少しずつ縮まる。

時間がない。

三原先生はどうやら女子2人を確保した。

皆は生徒達の避難を終えたようだ。

全校生徒が2人の殺意にあてられ泣き出す者もいる。

2人の名前を叫んだ。が反応しない。

お互いしか目に入らないとか恋人同士か。

これしか無いか。

僕は2人の腕を同時に取る。

同時に2人の殺意が僕に向く。

ひぃっ

何だよこのホラー。

睨まれただけで意識が飛びそうになった。

勝手に溢れるな涙を無視して歯を食いしばり、黒い影を引っ張る。

ゴムが本体に絡みついているような。

2人は身体を僕に向ける。何とも悍ましい影が広がる。

禍々しいほどのモンスター。

悲鳴が聞こえる。僕だって叫びたい。

2人が同時に一歩、たった一歩近寄っただけで僕の意識は飛んだ。

手が離れた反動で後ろに吹っ飛び、2人の生み出した竜巻のような意志が弾ける。

殺意の塊は2人を中心に球状に、爆発のように一瞬にして広がった。

ピシッと校舎の窓がいくつか割れる。

僕は結構な距離を転がった。お蔭で意識を取り戻し起き上がると2人は倒れている。

慌てて駆け寄って呼吸を確認した。

良かった。生きている。見た所外傷もなさそうだ。

ホッとした瞬間だった

目眩と同時に強烈な吐き気。

三原先生が駆け寄るが

僕より2人の様子を。

「気を失っているだけだ。人騒がせな奴らだ。」

「お前こそ大丈夫なのか?砂だらけで。」

見た目ほど酷くはないと思います。

と立ち上がると側頭部から頬を伝って血が滴る。

砂を落とすと腕やら足やら結構擦り傷がある。

外の水道で傷口を洗わされてから保健室に入れられた。

「おい。お前らキズナの手当頼むぞ。私は外の様子見てくるから。」

三原先生は実況席の南室綴と宮田杏に声をかけて外に出る。

見ると2人の女子は小室絢と橘結、柏木梢と栄椿がそれぞれ押さえつけていた。

後にそれは人形だったと教えてもらう。

傷の手当を受けていると、その4人も僕を心配して保健室に入る。

頭の傷は大した事ない。腕やら脚も擦り傷程度。

でもダメだ。目眩と頭痛で吐きそうだ。

トイレへ、

間に合わない。


治療してくれいる南室綴と宮田杏を振りほどいて

保健室の流しに駆け込み全部戻してしまった。

お昼前なのが幸いしたか殆ど何も出ない。

胃の中が空だから余計気持ち悪い。

情けない事に涙も止まらない。

このまま流しに突っ伏したら楽かも

「ちょっキズナっ。」

「先生呼んで来るよっ。」

待って。大丈夫だから

「大丈夫じゃ無いでしょ。」

いや本当に大丈夫。説得力はないけど。

口を濯いで、顔を洗いながら涙を拭い、

洗面台の端を掴み何とか顔を上げた。

振り返り、見えた皆の顔は「恐怖」。

無理もない。どう取り繕っても気分の悪くなる姿だ。

言葉を失い、茫然と化物を見ている。

その脇をフラフラと保健室から出るが誰も止めない。

外では三原先生がエリクとルーをテントの下に運んでいた。

あまりの静寂に見渡すと全校生徒と全教師が一人残らず倒れている。

どうして

「あの2人の殺意にあてられたんだろ。」

「ま、崩れるように倒れただろうから怪我してても大したことないよ。」

それでどうしますか?

「目を覚まさせるよ。」

皆パニックになりませんかね。

「大丈夫。そのヘンは考えがあるから。それよりアイツらどうした。手伝わせたいのに。」

保健室にいますよ。それより手伝いって?僕に何か出来ます?

「うん。この気絶の原因を全部突発した竜巻の責任にしようかと。」

目が覚めたらすぐに南室綴と宮田杏に放送させ

他の連中にも直接言い回らせる。

「て言うかお前まだ血が出てるぞ?顔も真っ青だしちょっとそこ座ってろ。アイツら何やってんだよ。」

と三原紹実が保健室へと。

皆に指示をしながら戻り、南室綴と宮田杏を席に着かせ、他の皆を適当に散らばセる。

「結はキズナの手当してやれ。」

三原紹実は1人校庭の中央へ。何をするつもりだ?

俯いて何かブツブツ言っている。遠くて聞こえない。

顔を上げ、右腕を上げ、その指をパチンと鳴らした。

波紋のように広がった一輪の風。

少し痛くて、冷たい。


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