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06 冒険者として第一をクリア!


 パンを食べ終え、ダンジョンさんと出発した。



 床には色がついている。


「赤が敵で、青が宝箱だよね」

「そのとおり!」



 気をつけながら歩く。

 たまに、角を曲がったところに赤い床がある場合があるので、特に曲がり角では慎重に進んだ。


 敵は出ない。

 宝箱は出てくる。

 ダンジョンって、平和で楽なもの、と誤解してしまいそうだ。


 これといってなんの障害もなくすいすい進む。



 もう出口が見えてきた。

 今回は、前回より迷いなく歩けたし、多分二十分くらいしかかかってないんじゃないだろうか。


 今回出てきたお金は、15ゴールド。

 合計45ゴールドになった。

 パンを買ったから43ゴールドだけど。

 出たアイテムは、ポーションがひとつだけ。

 初回よりも成績が悪い。


 でも悪くない。


 20分で15ゴールドとしても、時給45ゴールド。

 円でいったら、時給4500円だ!

 二時間労働でも、日給9000円。

 午前、午後で二時間ずつ働けば、18000円!

 一ヶ月、二十日の労働で、36万円!

 

 いいぞいいぞー!

 

「本気で急げば、十五分もかからないでゴールできるかも」

「いい調子だね!」


 そのまま、出口前、通路が最後の直線に入ったとき、ポケットの中が光った。


「お」


 冒険者証が書き換えられていた。

 初心者冒険者という項目が、初級冒険者、になり、第一、とクリアダンジョン名が刻まれている。


「これ」

「やったね!」


 よしよし。


「この調子で、今日はあと五回くらいクリアしてもいいかも」

「それはあんまり意味ないと思うよ」

 すっ、と真顔で言われた。


「え? でも、稼いでおいたほうが、今後のことも考えて……」

「ダンジョンは、だんだん、アイテムもお金も、出にくくなってくるからね」

「うそ?」

「ほんと。だから、いろんなダンジョンに行かなきゃいけないんだよ!」


 え。

 聞いてないよ?


「でも次のダンジョンをクリアできない人はどうするの? 飢え死ぬの?」


「第一ダンジョンに入るのを一日一回にすれば、30ゴールドくらいは出るんじゃないかな?」

 彼女が言う。

「でもさ、30ゴールドじゃ生きていけないよ」

「どうして?」

「宿代が……、あ、そうか」


 よく考えれば、異世界だって、アパートみたいなものもあるだろう。

 宿で50ゴールドなら、一日30ゴールドあればなんとか生きていけるような気がする。


「それに、第十ダンジョンもそんなに難しくないらしいよ!」

「第十? そんな先の話しても」

「ダンジョン名は、一、十、百、千、って名前が変わっていくんだよ」

「あ」


 だから武器屋で、第百ダンジョン、みたいな話をしてたのか。


 百って、実質三番目なのか。



「じゃあ、新しいダンジョンで稼ぐしかないのか……」

「そうそう! 前向きになってきたじゃん、ナリタカ!」


 嫌なんだけどね。


「じゃあ、また明日だね!」

 彼女は言った。

「うん……」

「それじゃ、また明日」

「明日ねー!」


 ぶんぶん手を振るダンジョンさんに見送られ、僕は第一ダンジョンを出た。




 そしてまたまたギルドにやってきた。


 中に入ったが、カジルたちの姿はやっぱりもうない。

 とりあえず受付に向かう。

 

 リーナさんはまだ受付にいた。

 すでに笑顔で待っている。


「ナリタカさん、どうされましたか?」

「あ、ええと……」

 僕は冒険者証を出してカウンターに置いた。

「はい。ああ、もう第一ダンジョンをクリアされたんですね?」

「はい」

「え、おひとりでですか? すごい!」

「あ、ど、どうも……」

 おせじなんだろうけど、ほめられるとやっぱりうれしい。


 

「初級冒険者になった方には、有料ですが、戦闘訓練や魔法訓練を受けられるようになります。適性検査、初回利用は無料です」

「また無料」

「はい。それからこちらが宿泊クーポン十回分です」

「十回も」

「無料です」

「また無料」

 ギルドは無料のバケモノだ。

 

「こちらが、残り九個のダンジョンの場所が書かれた地図ですので、ご利用ください」


 この町を中心に、ダンジョンの入り口が分布していた。

 南側が街道に通じる町の出入り口で、あとは周囲を、岩山に囲まれるような立地になっている。


「第十、第百、第千ダンジョンが初級者用」

 ふむふむ。


「第万、第億、第兆が中級者用」

 ふむふむ。


「第京、第垓、第杼ダンジョンが上級者用、となっております」

 ふーん。


「間をとばして、たとえばいきなり第億ダンジョンに超背、といったことはできません。一、十、百、と順番にお願いします」

「数の単位なんですね」

 日本の。

「それぞれのダンジョンの難易度が変わっていく様子を、数の単位になぞらえています」


 垓はがい、杼、というのは、じょ、と読むらしい。



「じゃあ、第十は、第一の十倍難しいんですか……?」

「それはあくまでイメージです。十倍長いとか、十倍のモンスターが出るとか、そういうことではないんですよ。でも、新しい要素は必ずなにか、ありますね。新しいモンスターが出たり、階層があったり」

 階層、というのはつまり、一階、二階、とかそういうことだろう。


「脱出石は、同じように使えるんですか?」

「はい。また、ギルドで買取をしている物は、時期によって買取価格が変わることもあるので、貴重なアイテムは、活用する時期も考えたほうがよろしいでしょうね」

「そういう荷物を置く場所、あの、アパートとかってあるんですか?」

「ございますよ」


 リーナさんは別の紙を見せた。

「料金は、30日ごとに、1000ゴールドから1500ゴールドという部屋が多いですね。お安いところですと、10日で100ゴールド、というところもあります」

「え、30日で300ゴールドですか?」


 これなら第一ダンジョンだけでも生きていける!


「価格に応じたお部屋なので、快適さには欠けますが」

 日本円換算で、月に30000円でしょうから、覚悟はしてます。

「そこ、住みたいです!」

「手続きされます? 料金は先払いなのですが」

「あ……、またあとでお願いします」

「はい。第一ダンジョンをクリアされたナリタカさんならすぐでしょうから、お待ちしてます。担当している冒険者さんが出した成果が、私たちにも反映されますから、がんばってください。おうえんしてますね」


 そう言って、にこっ、と笑った。

 いままでの営業スマイルとちょっとちがう。

 素っぽい感じ。

 いろんな笑顔持ってるなあ。

 いいぞ!


「じじじゃあ、第十ダンジョン、に行ってみます」

「気をつけてくださいね?」

 首をかしげるリーナさん。

 リーナさん、自分のかわいさを調子に乗ってドンドン出してきたぞ。

 いいぞいいぞ!


 

 では。


 僕はパンを買って、第十ダンジョンに出かけることにした。



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