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44 新居

 一階の広間には、リーナさんなど、カウンター美女軍団や、上級冒険者として集まったうちの二人、見たことがある人がいた。

 今夜ここで泊まった人らしい。

 みんな、なにがあったのか、と戸惑っている様子だ。



「なかなかこれは、とんでもないねえ」

 ソフィさんは言った。

「ご、ごめんなさい」

「いいよいいよ。まあ、割り振りと、建て替えでなんとかすればいいだろう。おもしろいし」

 ソフィさんが笑った。


「まだ、諦めなくてもいいんじゃないかと思うんですけど」

「ん?」

 ソフィさんが僕を見る。


 僕は、ソフィさんとダンジョンさんだけに聞こえるように言った。

「これがダンジョンさんが無意識にやったことだとして、もっとシャッフルすれば、最初の状態に近づけることができるんじゃないかと思うんです」

 ダンジョンはランダムだから、元通りになることだってあるだろう。


「まったく同じ道はなくても、同じような道になることはあるわけで、そういうのが出るまでダンジョンさんにシャッフル能力を使ってもらったらどうでしょう」

「なるほど」

「ダンジョンさんがシャッフルを起こす条件がわかれば、ですけど。ソフィさんが気づいたときはどんな感じだったんですか?」

「裏口を出て、ちょっと技の確認をしてもどったときだねえ」

「つまり、入ったとき」

「そうなるね」

「とすると、仮説としては、ダンジョンさんがギルドにいる状態で、誰かがギルドに入ってくると、シャッフルが起きる……」

「でも、あんたたちが部屋に入ったとき、出入りしている子たちはたくさんいたけどね」

「なら……」


「ダンジョンと同じようにみなすなら、人がたくさんいる間は、ひとつのパーティーが冒険を続けていると扱われ、それ以上のシャッフルが行われないのでは。そして全員が帰り、ギルドの入り口が閉鎖され、ひとつの冒険が終わったという状態になり、ソフィさんが出入りしたとき、新しい冒険が始まった、と考えるのはどうでしょう」


「なるほどねえ」

「おそらく、部屋に入るというのも似た行為として扱われるのでしょう。出入りした人がいるかどうか、きいてみてもらえますか」

「……あんた、意外とすぐいろいろ考えられるんだね」

「僕は、いかにモンスターと戦わないですますことができるか考えてきた男ですよ? いえ、ダンジョンさんのことだから考えられるのかもしれませんね」

「ナリタカ」

 ダンジョンさんがそっと僕に手を添える。

「その話は、あんたたち二人きりのときに勝手にやってくれる?」



 ソフィさんがリーナさんたちに話をきいたところ、ギルドが閉められてからは、今日は部屋から出てきた人はいなかったという。

 冒険者狩り関係で、いろいろ忙しく仕事をしていたこともあって、みんなつかれていたのかもしれない。


「じゃあ、僕らとみなさんに部屋に入ってもらって、ソフィさんだけで動いてもらうのが一番スムーズにできそうですね」

「あんた、年寄りに働かせるのかい?」

 といっても、各部屋の確認をできる権限を考えたら、ソフィさんしかいないだろう。

「僕がダンジョンで見つけた変なアイテムのせいでこんなことになった、ということにしましょう」

「はいよ」



 ということで、ソフィさんがみんなに説明。

 みんな部屋に入り、ソフィさんが何度も何度も出入りすることになった。

 


 コンコン。

「なんだあんたたちか」


 コンコン。

「お、あんたたちじゃない」


 コンコン。

「変なとこにいないでよあんたたち」


 それから何時間もコンコンコンコンコンコンコンコンノックされていて、日が昇ったころにやっと終わった。



「ひとつちがうけど、まあいいかね」

 とニコニコソフィさん。

 なんだかソフィさんは途中から楽しんでいた感じがある。

「はい……」



 やっと眠れる、と思ったけれど、僕らは部屋から出されてしまった。

 そりゃそうだ。このまま寝てたらシャッフル続行だ。


 あまりに眠かったので、僕とダンジョンさんは、一階の広間で、ギルドが開店するまで仮眠をとった。



 そして翌朝。

「おいしい!」

 ダンジョンさんは朝からバクバク食べ始めたので、ほどほどで止めた。

 また丸太みたいになられても困る。


「さて、今日は家を探さないとね」

 ソフィさんがわざわざ僕のとなりに座って言った。

「ちゃんと探しますよ」

「おねがいだよ? 毎日ギルドの中をかき混ぜられたらたまんないからね」


 かといって、どこの家でもいいというわけにはいかない。

 まず、シャッフルという理由でアパートは無理。

 あとは迷惑をかけたとき責任がとれないかもしれないから、借家よりも、買ったほうがいいだろう。


 女神の雫が預けてた分と合わせてあと二個と、あといろいろあるから20万ゴールド以上、2000万円分の予算はあるから問題ないけど、家を買うっていうプレッシャーがなかなかある。


 でも迷っている時間もない。

 宿に泊まったらシャッフルしちゃうだろう。

 とすると寝床がない。

 またギルドの広間の端の方を借りて寝るか、野宿かというのはちょっと。


 どうしようかな。

「買える家はいくつかあるけどねえ、ギルドから近いほうがいいだろう?」

「はい」

 そのほうが、ダンジョンさんと生活するにあたって、なにかといいことが多い。

 急にとんでもないことが起こるかもしれないし、誰かがいたほうが……。

 ん?


「ソフィさん、武器屋っていま、どうなってますか?」



「こんにちは」

「おおボウズ、どうした」

 武器屋のおじさんは、荷造りをしている手を止めた。

「他のところに行くらしいですね」

「おお。ちょうどいいところがあってな。ここもいいんだが、作業する場所がなくてな」


 元々宿屋の倉庫だったところを使っているので、武器類を置く場所はあっても、武器の調整や、僕に作ってくれたような道具を作るスペースの確保が難しいという問題があったらしい。

 また、貴重な武具はやっぱりセキュリティ的に、別室にしっかり保存したいということも。


 ということで、今後も宿屋と連携しつつも、新しい物件を探していたらしい。


「運ぶの手伝いますよ」

 浮かせれば楽々だ。

「わりいな。で、その子はなんだ」

 おじさんはダンジョンさんを見た。

「あ、ええと」

「妻です!」

 ダンジョンさんが言ったら、おじさんは鞘に入った剣を足に落としていた。




「いやー、妻は良かったな」

 おじさんはちょっとひょこひょこ歩きながら、武器屋の引っ越しを終えた。

 

 途中からカジルたちも加わって、一緒に引っ越しをすませた。

 テキパキと、武器の陳列が終わる。


「ボウズ、助かった。兄ちゃんたちも助かったぜ」

「いえいえ」

「水くせえっすよ」

「で、ボウスが兄ちゃんたちに話があるんだってよ」

「話?」

 スランスが言う。

「うん。おじさんが使ってたところ、僕に売ってくれないかな」

「あれを?」


 あの倉庫は、ある程度仕切りというか、区分けはされているけれども、細かく部屋に分かれているわけではない。

 ということはダンジョンさんの能力でも影響されないんじゃないだろうか。


「一応、お試し期間として何日か生活はしてみたいんだけど、それで良ければ」

「新居としてか? あんなところを?」

 カジルが言う。


「僕、ちょっと呪いにかかったっていうか、部屋数が多い家に住むのは難しい体になっちゃって。買えば、宿屋の経営も楽になるだろうし、一石二鳥じゃない? もちろん、ちょっと値引きはしてほしいけど」

「まあ、宿屋としては文句はねえよな?」

「そうだね。ナリタカ君ならおかしなことに使ったりはしないだろうし。リリさんに話をしてみよう」


「いいよ」

 あっさり購入が決まり、僕は倉庫だったところに、テーブル、椅子、ベッドなど、いろいろな家具を購入してどんどん揃えていった。

 武器屋のおじさんと宿屋のコネで、中古品を安価でさくさく買えた。



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