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43 よく食べてよく寝る

 サーチャー、の検出した人間などの生き物を、ギルドの人たちが手分けして調べていった。

 そして数に問題がなく、住民はちゃんと身元がしっかりしているか、冒険者は冒険者証を持っているか、どういう経歴なのか説明は、とたしかめていった結果、怪しい人は見つからなかったらしい。

 さいわいというか、ライトさんは大量に分裂できるので、人不足になることはなく、テンポよく情報は集まり、夕方までかかったけれどもその日に終わった。


 そして僕とダンジョンさんはギルドで夕食をとった。

 流れでギルドに行く人が多く客でにぎわっていたが、その中でもダンジョンさんは目立っていた。


「これおいしい! これおいしい! これおいしい!」

 ダンジョンさんはどれでもおいしそうに食べてくれるので、注文してあげるだけでもとても楽しい気分になる。

 それはまわりの人も同じで、白ワンピース黒髪美少女が、むっしゃむっしゃと豪快に食べている様子は、自然にみんなの注目を集めてしまう。


「これなんていうの?」

「シチューだよ」

「おーいしー! これなんていうの?」

「ハンバーグだよ」

「おーいしー! これなんていうの?」

「これは……、魚をどうにかしたやつにチーズをなんかおしゃれにかけたやつだよ」

「おーいしー!」


「これも食べな!」

 まわりの席から、からかい半分なのか、他の客がダンジョンさんにいろいろな料理を持ってきてくれた。

 ダンジョンさんがそれをひょいっと全部食べてしまうので、みんなおもしろがってどんどん注文してくる。

 ダンジョンさんはうまくやっていけそうだな、なんて安心していた。


 そしてつい、ライトさんもいるし、だいじょうぶかなってちょっと席を外して、ソフィさんと話をしたり、ちょっとトイレに行ったりしていた僕。

 三十分も離れてなかったんですけど。


 もどるとダンジョンさんが大変なことになっていた。


「うーん、うーん。苦しいよー」

 腹がパンパンにふくらんで、こう、なんていうか、極太の丸太みたいになってた。

 食べすぎた人って、ふつうは洋梨みたいな感じのシルエットになると思うんだけど。

 腹も背中側も全部が中から押されてふくらんで、円柱形になっている。

 

 丸太人間に白いワンピースをすっぽりかぶせたようなものができあがっていた。


 どうしてこんな状態になるまで放っておいたんだ!


「どうしたのこれ!」

「おいしいものは、たくさん食べれば幸せになれると思って、一気に……」

「なんてことだ……」

 あの美少女がゆるキャラみたいになってしまった。

「ナリタカ、私、病気になったのかもしれない……」

「食べすぎだから」

「せっかく生きのびられたのに、こんなことでお別れになるなんて……」

「いや、死なないから」

 と思うけど、ここまで食べた人を見たことないので断言はできない。


「最後に、このサンドイッチを食べるね……」

「やめなさい!」

 僕はダンジョンさんからサンドイッチを奪うと、杖でダンジョンさんを浮かせて、奥の部屋へと連れていった。

 

 ベッドに寝かせた、というか置いた。

「ふう……」

 ダンジョンさんは細く息をついた。

 胃薬もらってきたいところだけど、この世界、胃薬とかあるのかな。

 

「ちょっとここで待ってて」

 僕はドアを開ける。

「なにやってんだい」

「うわ!」

 ソフィさんが立っていた。


 ソフィさんが、ひょい、と部屋の中をのぞく。

「なんだいありゃ」

「ダンジョンさんです」

「ええ?」

 ソフィさんはベッドまで行って、ダンジョンさんのお腹をさわっていた。


「やわらかいのかと思ったら、かたいね。食べすぎて、むしろ中身がみっちり詰まってるのかねえ」

「うー……、うー……」

 ダンジョンさんがうめいている。

「ちょっとソフィさん」

「これでも飲んでみな」

 ソフィさんは、ポケットから出したビンから粉薬をてきとうにビンのフタにサラサラ盛ると、それをダンジョンさんに飲ませて、近くにあったコップの水を飲ませた。


「にが……」

「がまんしな」

「……がくっ」

 ダンジョンさんが目をつぶった。


「ちょっと横になってりゃ良くなるだろ」

「ありがとうございます」

「じゃ、また明日な」

「はい、ありがとうございました」

「はいよ」

 そう言ってソフィさんはドアを閉めた。


 そこでやっと気づく。

 ダンジョンさんと二人きり。

 高校生の男女が二人きりで、ちょっと大きめのベッドがひとつだけ。

 

 これはあれですよ。

 寝よう寝ようと思っても眠れないやつですよ。

 年頃の男が、すやすや平気で眠れなくなってしまってあれやこれやのやつですよ!

 

 ……ダンジョンさんが丸太になってなかったら。


 僕は抜群の冷静さを保ったまま、ウンウン言っているダンジョンさんと一緒にベッドで眠った。

 たまにお腹をなでてあげると静かになったので、僕も自然に眠っていた。



 はずだったけど、夜中に起こされた。


「やっと見つけた! ちょっとあんた、起きな!」

「なんですか」

 目の前にはソフィさんがいた。

 花柄のパジャマを着ている。


 ダンジョンさんも、むにゃむにゃいいながら目を開けた。

 気づけば普通体型にもどっている。

 どういう消化器官だ。


「大変なんだよ!」

 僕らは寝ぼけまなこで部屋を連れ出された。


「うわ、え?」


 まだ寝ぼけてるのかと思った。

 部屋を出たら、いきなり一回の大きな広間なのだ。

 テーブルがたくさんならんでいて、奥にはカウンターがある。

 廊下を通って二階に上がってさらに行ったところの部屋なはずなのに。


「部屋がめちゃくちゃになってんだよ!」


 ソフィさんによれば、部屋のならび、廊下の位置、ドアを開けた先、と建物の中があっちこっちぐちゃぐちゃにシャッフルされたみたいになってしまっているんだという。


「それって、まさか」

「そりゃそうだろ」

「私?」

 ダンジョンさんが自分を指す。


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