表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
37/50

37 裏で進行中だった

 ライトさんの剣に刺された瞬間、僕の体が光った。

 これが、復活、なんだろうか。

 血に染まった剣を持ったライトさんを見つつ、僕は転送の腕輪を発動させた。


 続けてライトさんが攻撃を仕掛けてきたが、僕の体を包む光に弾かれた。


 ライトさんは僕に、続けて攻撃を仕掛けようとしたが、止まる。


 僕らの周囲に、たくさんのライトさんが現れていた。

 百人以上いるんじゃないだろうか。


 しかも、僕を刺したライトさんと、増えたライトさんは別だ。


 いつもの白い鎧を着ているのは、僕を襲おうとしたライトさんで、まわりにたくさんいるのは黒い鎧を着たライトさんだ。


 ライトさんがいっせいに言う。

『そいつは偽者、分裂できるボクが本物。わかるよね?』

 いっせいに、僕にウインクしてきた。

 

『ナリタカ君、ギルドへ』

 白い鎧のライトさんはなおも僕への攻撃を続けるが、僕の周囲にただよう光によって剣は折れた。

 折れた剣がくるくる回って地面に刺さる。


「ん?」

 僕のまわりの光が薄くなってきた。

 転送の腕輪でギルドへ飛んだ。



 ギルドの前に着地し、走ってギルドへ入る。


「ソフィさん、ソフィさんはいますか!」


 入っていった僕に、なにごとかと冒険者たちの視線が集まる。


「どうしました!」

 カウンターでリーナさんが立ち上がった。


「ライトさんに襲われて、いや、ライトさんじゃないみたいなんですけど」

「いらっしゃい」

「うお!」

 振り返ると、ソフィさんが背後に立っていた。


「あ、あの、いま」

「どこに出たんだい?」

「第京です。第京ダンジョン」

「第京だ」

 ソフィさんが指示すると、ギルドの中にいたうちの三人が立ち上がり、走って出ていった。


 なにがなんだかわからない。

「なにがなんだかわからないって顔してるね。来な」



 ギルドの奥の部屋に入った。

 奥には大きな机、手前にはゆったりしたソファがある。


「まあ座りな」

「はあ。あの、第京に行ったらライトさんに刺されて、刺されたと思ったら、別のライトさんがたくさん現れて」

「落ち着きな。リーナ、茶をいれておくれ」

「はい」


「で、ライトに刺されたって? そりゃ『変装』だな」

「『変装』?」

「この前捕まえて、逃げられたっていうのは『変装』スキル持ちだったみたいなんだ。会ったことのある人間、誰にでも化けられるみたいだね。まったく見分けがつかないらしい。そいつが、あんたを追いかけて、あんたがダンジョンに入ったところでライトを殺って、化けて待ってたんだろうよ」

「そんなことが……」


「ライトさんが負けたっていうのは、分裂してたからですよね?」

 たしか、分かれれば分かれるほどひとりあたりは弱くなる、と言っていた。

「かもしれない。相手が強いのかもしれない」

「さっきライトさんが、ものすごくたくさんに分裂してたんですけど」

「時間稼ぎだろうね。確実にやるために」

「なるほど……」

「あの、お茶をどうぞ」


 リーナさんがお茶を入れてくれた。

 一口飲むと、いい香りが広がる。

「おいしいです」

「よかった」

 リーナさんがにっこり。

 僕もすっかりリラックス、はさすがにできない。


「では、ごゆっくり」

 リーナさんは出ていった。



「これで二人だ」

「二人?」

「さっき、仲間を別のところで捕まえたんだよ。月の宿の近くだったね」

「月の宿?」

 カジルたちのやっている宿屋だ。


「どうしてですか?」

「そりゃあんた、あんたが仲良くしてる人たちを襲おうとしたっていうことだろう」

「え……」

「考えればわかるだろう。あんた自身をやるのもいいが、あんたが大切にしているものをやるのもいい。あんたを確実に殺るっていうよりは、どうにかして、あんたが嫌がることをしてやろうっていうやり方をしてるね」

「なんで、僕が仲良くしてるってわかったんですか」

「聞き込みだろう」

 ソフィさんは当然のように言う。


「……、それって、あの、月の宿が襲われるのを防げたっていうことは、ソフィさんたちはそうなるってわかってたんですよね」

「そりゃそうだね」

「でも、昨日の会議ではそういう話じゃなくて、その、あくまで僕を囮にして敵を釣ろう、っていう話しかしなかったですよね」

「そうだね」

「どうしてですか」


 と言いつつ、答えは出ている。

 僕に詳しい話をしたところで意味がないから、限られた話だけしておいて、ギルドはギルドで動いていたのだ。



「あんたには悪いと思ったけど、勝手にやらせてもらったよ」

「……ありがとうございました」

「ん?」

「みんなを助けてくれて……」

「……気にしなくていいよ」


「それに、僕を生き返らせてくれて」

「うん?」

「僕を死なせても、捕まえること自体はできるじゃないですか」

 魔法だかアイテムだか知らないが、金銭的に、相当の費用がかかっているはずだ。

「そういう方向にはしないよ。うちの方針としてね」

 ソフィさんは言った。


「けが人は多少出ても、死人は出さないようにする主義なんだ」

「そうですか。ありがとうございます」

「あんまり礼ばっかり言うもんじゃないよ。人が安くなっちまうからね」

「……はい」



 そのとき。

 遠くで、ドーン! という音がして、地震のように床がゆれた。

 大きなものではなかったし、すぐ止まったので地震とはちょっとちがう。


 そして足音が近づいてくる。

 ドアが開いた。

「ソフィさん! 大変です!」

 リーナさんだ。


「なんだい」

「ダンジョンが攻撃されてます」

「なんだって?」

「第一ダンジョンが、爆発のような攻撃を受けています!」

 その言葉に、僕も立ち上がった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ