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31 再襲

「くそ、脱いでやる」

 ドラゴンスーツは晒されアイテムと知ったいま、着ている意味なんてない!

「待ってください!」

 リーナさんが止める。


「次は第兆ダンジョンですが、中級ダンジョンの最後です。失礼ですが、ナリタカさんはハンター能力に偏っていて、スレイヤー的な能力にかなり欠けているでしょう? ですからこのドラゴンスーツは必要です!」


 リーナさんの必死の説得に、僕は思い直した。



 ドラゴンは待っててくれたから良かったけど、先手必勝タイプのモンスターだったら死んでただろう。


 ライトさんの言っていたことが確かなら、僕は一回死んでも生き返れる魔法を腕輪と一緒にかけられてるみたいだけど、冷静に考えてみると、生き返ったところで連続攻撃を食らって即死、っていうこともありえるんじゃないだろうか。


 ん?

 連続で生き返れても連続で殺されたらどうなるんだろう。


「あの、ちょっとギルド長さんってどこにいます?」

「ギルド長はいま……、あのすみません。ギルド長がいまなにをしているのかということについては、ギルドの安全の観点からも、申し上げるわけには……」

「あ、すいません」

 ふつうの注意を受けた。


「ええと、じゃあ、今日はもう帰りますね」

「はい、かしこまりました。ではまた、お待ちしてます」


 ギルドで食べて行こうかとも思ったけれど、直接、カジルたちの宿に行こうと思い直した。

 久しぶり、でもないけど、話もしてみたい。

 武器屋の調子とか、宿屋の調子とか。



 宿屋に泊まるといえば、今朝のことを思い出す。

 ダンジョンで一晩明かして、体はバキバキ。

 なんとかなったけど、やっぱりダンジョンは泊まるところじゃないよね。


 いま、武器やってどうなってるんだろう。


 焼けた武器屋の横を歩くと、中を調べている人がいた。

 大工さんかな?

 それとも魔法で修復する人かな?


 うまくやってくれるといいんだけど。



 すると、僕に気づいて中の人が出てきた。

「あ、どうも、おつか」

 と言いかけたとき。


 その人が近づきながら剣を抜き、僕を両断していた。



 いや、ドラゴンスーツによって、逆にその人の剣が折れて飛んだ。

 するとその人はまた別の剣を抜き、フードを外している僕の頭部に切り込んでくる。

 というか、その動きは速すぎて僕には見えなかった。

 それを横から現れた剣が受け止めてくれたので、頭部を切られそうになったのだと気づいたのだ。


 剣が跳ね返されると、その人は飛び退く。


「ライトさん」

「かぶってな」

 ライトさんはフードを僕にかぶせると、男に向かっていった。

 

 というところで足元がゆれた。


 地面から強烈な光がライトさんを空へ吹き飛ばすように。

 いや。

 ライトさんはそのまま燃え尽きてしまった。


 男がまた僕に狙いを定め飛んでくる。


 そこを、別のライトさんが三方向から切りかかった。

 分裂していたライトさんだ。


 男はライトさんの剣に、串刺しにされた。

 と思ったら男は丸太に変わった。



 そして僕の前に、いきなり現れている。

 ライトさんは間に合わない。


 だけど男の狙いは僕にもわかった。

 フードのすき間、のどを剣で突き刺す、これだろう。

 そんなふうに思っていたから、僕に向かってくる男が見えた瞬間にはもう、ドラゴンスーツの機能を使って火を吹くと決めていた。


「グオオオ!」


 全力でやったせいか、大きな炎は男だけでなくその後ろにあった、武器屋も巻き込んで燃え上がった。

 


 だが男はまた丸太になって、いなくなる。

 ライトさんが僕の横に追いついた。


 男は襲ってこない。


「逃げられたか」


「だいじょうぶか」

 ライトさんが来る。

 僕が吹いた炎で、武器屋の残った部分が大きく燃え上がっている。

 

「あ……」

「ナリタカ君!」

 ライトさんの強い声に、はっとした。

「はい」

「あれは君を襲った三人のうちのひとりだ」

「はい……」

「そして、これは隠しても仕方ないから言うが、ひとり捕まえた仲間には、すでに逃げられている」

「え?」


 ライトさんを見ると、うなずいた。


「ボクらは、彼らについて見誤っていたようだ。冒険者を脅して金品を奪うケチな泥棒というわけではない。相当の実力者だ」


「……」

「そして、なんらかの方法で、ナリタカ君。君が貴重な品を持っているとわかったようだ。スキルかもしれない、別の方法かもしれない。ギルド長から聞いている。君は特殊なアイテムを手に入れているそうだね」


 ギルド長に聞いた、ということで判断するなら、合成小袋のことだろうか。

 ギルド長はあれを高く評価していた。


 魔法使いがやってきて、炎の消化が始まる。

 先導しているのは、二人のライトさんだ。



「彼らは君にかなり、恨みを持っていて、そして恨みで行動を決めるタイプのようだ。利害関係で動いていない」

「はい」

「だから、君の近くにいる者も命を狙う対象になるかもしれない」

「……」

 武器屋のおじさんが巻き込まれたのも、そういう理由だろうか。


 

「ライトさんでも、倒せないんですか」

「……まあ、そのうちわかるだろうから言っておくと、ボクは分裂をすればするほど一体あたりの能力が落ちる。だから集めて戦えば勝てるだろう。だけど、そうなると、手が回らない場所でなにをされるかわからない」

 だから無限に分裂する、みたいな作戦が使えないんだ。

 

 そんな弱点を教えてもらえるなんて。


「……あの、僕のスキルは」

「言わなくていい」

「でも」

「それより、やつらをどうにかするには、 ナリタカ君の協力が必要だ」


「……僕で釣るんですね?」

「残念ながら、そうなる」

 ライトさんは言った。



 このことが片付くまでは、宿屋へは近づかないようにしよう。

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