25 火事の後始末
白い人に拘束された男は、フードのようになっていた部分を上げられた。
知らない男だ。
目つきが鋭く、僕をにらみつけている。
「知ってる人かな?」
「いえ……」
「そうか。まあ、詳しい話はギルドで聞かせてもらうことにしよう」
白い人は、男を引っ張って歩いていく。
「なんだあいつは」
武器屋のおじさんが言った。
「僕、ダンジョンから出たとき、あの男に強盗にあいそうになって」
「なんだと?」
「アイテムで逃げたんですけど……。顔を覚えられて、恨みを晴らそうとしていたのかもしれないですね……」
僕ははっとした。
「すいません、もしかして、僕の巻きぞえでおじさんまで殺されていたかもしれない……」
「兄ちゃんが謝ることじゃないだろうよ」
「でも」
「じゃあなにか? 兄ちゃんがダンジョンで途方もない宝を見つけたら、俺はその何割かもらう権利でもあるのか? ああ?」
「……いえ」
「そうだろう。頭のおかしいやつが悪いんであってな、なんでもかんでも謝りゃいいってもんじゃねえんだぞ」
「……ありがとうございます」
「おい」
おじさんは、僕の顔をつかんで無理やりおじさんに向けさせた。
「礼は、俺が売ったものに関してだけ受け付けてる。わかったか」
「ふぁい」
ほっぺたを持たれているので口がつぶれて変な声になった。
おじさんは僕の顔を開放した。
「まあ、とはいってもどうしたもんかな」
武器屋は全体的に火が広がってしまい、かなり燃えてしまったように見える。
「いったん中の物を移して、商品、建物、それぞれ調べてみたいが」
「なら、ちょっと待っててください」
僕はギルドに向かった。
「リーナさん、あの、白い鎧の人はどこですか」
「ライトさんでしたら、容疑者を奥の部屋に連れていきましたが」
「ボクを呼んだかな?」
白い人が現れる。
ライトさんて言われてるのか。
かなり白推しなのに、ホワイトさんじゃないんだな。
「あ、ライトさん、いま時間ありますか」
「デートかい? 悪いけどボクは女性しか愛せないんだ。ごめんね」
「さっきの武器屋の件で、中の物を運び出したりしたいんですけど、また変な人が来ないように警備する役がほしいと思って」
「分裂しろと?」
白い歯キラリ。
「お世話になってる武器屋の力になれたらと思ったので。ライトさんなら分裂してもらえれば手があいているんじゃないかと思ったんですけど、そうですよね。有名スレイヤーの方は忙しいし、無理ですよね」
「……そんなこともないが」
「え?」
言うが早いか、ライトさんはもう二人に分かれていた。
ギルド内で、おおー、という声が上がる。
「ライトさん、負けず嫌いなところもあるんだよ」
とリーナさんからの、ささやき声が聞こえた。
「ナリタカ君。ボクはそのへんの分裂能力者とはわけがちがうのさ。何人くらいに分裂できると思う?」
「何人ですか?」
「秘密」
うざ意味わからん。
ライトさんを連れて武器屋にもどる。
「なんだ、スレイヤーが来てくれたのか」
おじさんは驚きながらライトさんを出迎えた。
「よし、とりあえず中の物を出すか」
「手伝いましょう」
とさらに三人に分裂したライトさん。
「よし」
「待ってください。あなたが入るのは危ない」
ライトさんが止める。
中の強度がどれくらいかわからない状態で入るのは、事故に発展する可能性がある。
「中に入らないで武器の扱いがわかるかよ」
おじさんが言った。
もっともな意見だ。
「でもどうしたら」
「あれがあるじゃないか」
「あ」
僕は鉄壁の腕輪を取り出した。
これをつければ、急に物が落ちてきても安心だ。
「じゃあ、これをつけて入ってもらって、荷物を、裏の庭みたいなところに持ってきてもらえば、僕らで監視してるからだいじょうぶですよ!」
僕が言うと、なぜかおじさんは苦笑いを浮かべた。
「わかった、そうしよう」
おじさんは鉄壁の腕輪をつけて、武器屋に入っていった。
「なんですかね」
「君は素直だって言っただろう?」
「はあ?」
「ふつう、冒険者相手に、武器屋の主人が店の商品を任せるなんて、なにを盗まれるかわかったもんじゃない、っていうところがあるんじゃないかな。でも君は、そんなこと考えもしなかっただろう? だからあの人は、思わず笑っちゃったんだね」
「あ、ええと。でも僕、泥棒とかしませんよ、本当! だって武器屋の武器盗んだら、おじさんが困るじゃないですか! まあ、でも、どうしてもお腹がすいてパン屋のパンを盗んだり、とかはありえたかもしれないですけど……」
と僕が話をしていると、ライトさんは、肩をゆらして笑っている。
「なんですか」
「いや、なんでもないよ」
笑いながら言う。
「はい?」
「君は平和でいいね」
「は?」
なんかイラッとする。
この人イラッとする。
ライトさんの労働力もあって、さっさと、無事に商品が庭にならんだ。
「結構な量ですね」
外から見た武器屋と、商品の数がなんか合わない。
剣だけで二百本近くあるし、槍、弓、あと特殊なやつとか、高級品っぽいやつとかも合わせるとかなりの数になる。
他にも装具を作ってくれるための工具などもある。
さいわい、火の被害にあったものの数はすくなく、またススや汚れなど見た目の被害だけで、実用の際には問題なさそうだということだ。
「どうしましょうか」
「中に置いておいて、家がくずれたり、雨漏りがしたら問題だからな。かといってこんなところにいつまでも広げておけないだろう」
「ギルドに置かせてもらうとか?」
「物が物だからな。重いぞ。民家に置いて、床に穴開けるわけにもいかん。ギルドに置かせてもらうっていっても、タダってわけにもいかんからな」
「タダでいい、って言われたらタダでいいんですよね」
「そういうわけにはいかん」
おじさんは深い腕組み。
いいっていうならいいと思うんだけど、そこは、なんか受け入れられないものがあるのか。
頑固おやじってやつか。
「……あ!」
僕の声に、二人がこっちを見る。
「どうしたんだい?」
「あ、ちょっと、あのすぐもどるんで、ちょっと、行ってきていいですか?」
不審そうな顔の二人を置いて、僕は走った。
第一ダンジョンに到着した。
「ダンジョンさん? いる?」
すっ、と現れる。
「ナリタカ! どうしたの?」
「ここに、物を置かせてもらうことってできる?」




