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16 床がだめなら浮いてみよう


「これ全部、モンスター出現の床じゃないですか!」

「んだ」

「僕はモンスターは倒せないって言いましたよね」

 えらそうに言うことじゃないけど!


「んだな。どうすっか」

「……ダンジョンさんは、平気なんですか」

「なんもねえよ」


 というダンジョンさん、言ったとおり、赤いところを歩いてもモンスターが出てくることはなかった。


「あんた、おんぶしようか?」

「え?」

 そんな手が?


 いや、でも僕を背負えるのか? なんて思っていたら、彼女はあっさり僕を背負った。

 ダンジョンさんの背中は小さく、体がほっそりしていて、お胸とのバランスがいよいよどうなっているんだという僕の煩悩。


 軽々と立ち上がった彼女は僕を背負って赤い床の上を進んでいく。

 モンスターが出た。


「うわ!」

 出るのか!


 剣を持ったガイコツっぽいシルエット。

 僕はすぐ脱出石を握って念じた。


 一瞬にして外へ。


「ふうー……」


 危なかった。 

 いきなり攻撃をしかけてくるタイプだったら死んでたかもしれない。


 でもどうしようか。


 他の冒険者は戦うつもりだろうからいいだろうけど。

 いや、あのガイコツ剣士が大量に出てくるんだろうか。

 大量に出るということは、一体一体はそれほどでもないかも?

 いやいや、僕は圧倒的にそれほどでもないので、すぐデスってしまう。


 どうするか。

 

 敵が出ないスキルだと説明してしまったので、カジルたちに事情を話すわけにもいかなくなってしまった。

 どっちにしろ頼るつもりはないけど。

 ん?

 カジルたち……?


 なんか引っかかるな。

 ええと……。

 あ、そうか、それがあった!

 



 ギルドに到着。

「こんにちは」

「どうされました?」

 リーナさんの笑顔はいつも良い。


「第百ダンジョンクリアした人がもらえるスキルの冊子を、もう一回見たくて」

「はい、どうぞ」


 とわたされた小冊子。

 一気に最後のページを見る。

 あった。


 空中浮遊(3)


「これって、それに浮かべるスキルを三回っていうことですよね」

「はい、そうですね」

「時間はどれくらいですか」

「えーと、時間、ではなく……。足をつくまでですね」

「足をつかなければずっとですか?」

「はい、そのようです」


 いいぞ!


「じゃあ、これください!」

「かしこまりました」


 リーナさんは、こぶし大の宝石をカウンターに置いた。


「高そうな宝石ですね」

「これは、宝石としては価値はほとんどありませんよ。こちらを持って念じますと、スキルが発動します。三回しか使えませんのでお気をつけて」

「念じればいいんですね?」

「脱出石のようなものですが……、ああ、その杖と同じことですよ」

 リーナさんは腰に差しておいた魔法使いの杖、を目ざとく見つけていたようだ。


「これと……?」

「あれ?」

 リーナさんは立ち上がる。


「その杖の宝石、回数無制限ですか? まさか、魔法使いの杖ですか?」

「はあ、まあ」

「ですと、ギルドの買取価格は5000ゴールド、武器屋の販売価格は1万ゴールドの、高級な杖ですよ」

「え、そんなに?」


 と思ったけど、腕輪とかより安いし、炎が出し放題ならそれくらいは当然か?

「覚えておきます」

「はい、それでは」




 そしてまたまた第千ダンジョンへ。


「ダンジョンさん?」

「お、来ただな?」


 ゆっさり現れるダンジョンさん。


「空を飛べるようになったので、もう一回協力してもらってもいいですか?」

「いいよ」

「では」


 僕は、ギルドでもらった宝石を持って、念じる。


「うわっ」


 ふわ……、と浮き上がった。

 と思ったら体がくるりと縦に回転。


「うわわわ」

 じたばたしてたら足がついてしまった。


「あー……」

「練習したほうがいいんじゃねか?」

「ええっと、そうだとは思うんですけど……、これ、三回しか使えないんで……」

 あと二回。

「ほうか。がんばれ」


 がんばれがんばれ、と体をゆさゆささせながら応援してくれるダンジョンさん。

 波打つ胸に、雑念しか生まない。


 浮いて、その体をダンジョンさんに引っ張ってもらおうとかとも思ったけれども、それじゃきっと背負われているのと同じことだろう。


「いくぞ」

 と念じて、ふわり。

 くるり。

「うわわわ」

 足をついた。


「さっきと同じだな」

 とダンジョンさんから痛恨のひとこと。


 たしかに。


 僕の学習能力はどうなってるんだろうか。



 あと一回。

 これは絶対足をつくぞ。

 そういう気しかしない。



 どうしよう。


「これと同じように、無制限だったらなあ」

 僕はしみじみと魔法使いの杖を見る。

 それからふと思った。


 ポケットの中から出したのは、合成小袋だ。

 第百ダンジョンで拾って、ポーションを合成したっきり、すっかり忘れていた。


 これ、使えないだろうか。


「どうしただ?」

 ダンジョンさんがやってくる。


「合成小袋って、なにかルールってあります?」

「できるものは合成できる。できないものはできない」

 でしょうね。


「他にはなにか、その、二つ、別の種類を入れたら、どっちが基準になるかとか」

「先に入れたもんだな」

「じゃあ、たとえば……」


 僕が言うと、ダンジョンさんは感心してくれた。


「そんなこと、考えもしなかった」

「やってみます」


 僕はまず、小袋に魔法使いの杖を入れた。

 袋は小さいが、杖も三十センチくらいなので、無理やり入れると、ギリギリ杖の先が布に覆われた。


 そして次に、空飛ぶ力を持つ石を入れる。


 

 取り出すと……。

 杖だけが残っていた。


 杖の先についている宝石は、炎を生む赤い宝石と、空飛ぶ宝石の乳白色が、ちょうどくっきり、半々に色分けされていた。

 いいぞ。


 頼む……。


 まず、炎を起こすように念じてみる。


「あつっ」


 またおなじみの炎が一瞬出た。


 そして今度は、空をとぶように。


「うおっ」


 浮いた!


 またもやくるりと体がまわってしまったから、足をついた。


 そしてもう一回。

 浮いた。

 二回、三回、四回、とやっても使える。


 やった。



 魔法使いの杖が基準となったおかげで、回数制限なし、炎を出す、という部分が元となり、空を飛ぶ力、という部分だけが合成されたのだろう。


 回数制限なしが基準になったため、空飛ぶ石の回数制限部分が書き換えられたのだ!


「これでいけます!」

「やっただな!」

「はい!」


 僕はそれから三十分くらい練習して、やっとグラグラしながらも、浮いて、思った方向に動けるようになった。

 歩くのの、半分くらいの速度だけど。


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