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15 第千ダンジョンは出現ポイントだらけ


 僕は、カジルたちと一緒に第百ダンジョンを進んでいた。


 

「おいおい、お前のスキルとんでもねえな! あんなに苦労した第百がこんなにあっさりかよ!」

 カジルは大声で言った。

「なにも出ないスキルなんて、想像もしなかったよ」

 スランスは言う。

「ほんとだぜ!」

「アイテムがなかったのは残念だけど、これでスキルをもらえるよ。ありがとう」

「いや、はは」

 僕は、カジルたちにすべて正直に言ったわけではなかった。



 スキル発動中の条件として、僕の歩いたところと同じところを歩けばなにも出ないとして、最初から最後まで進んだ。

 三人とも、僕を信頼してくれたようで、うっかりモンスターや宝箱が出るということは一度もなかった。



「よかったですねー」

 横を歩いている第百ダンジョンさんは言った。


 彼女の姿はもちろん三人は見えていない。



 僕は、僕のスキルを、ダンジョンのモンスターと宝箱を不出現にできるスキル、と説明した。

 そう言ったところでカジルたちには嘘だとはわからない。



 なんとなく、すべてを正直に話す気にはならなかった。

 信頼していないわけではない。

 なんていったらいいだろう。

 

 正直に言ったら、カジルたちは、引き続き、ダンジョンで利益を得たいと思うだろう。

 僕はそれをやらせてあげる。

 そうすることで、友達関係ではいられなくなるような気がする。

 金が絡んだ関係になった時点で、僕らは対等ではなくなってしまうんじゃないか。


 カジルたちがそうしなかったとしても、カジルたちはダンジョン収入をたくさん得たいのに、がんばって耐えることになる。

 だったら、教えないほうがいいというか。


 そんな感じだ。


 

 ダンジョンで利益を得ていくつもりの僕がそう考えるのも変な話だけど。

 でも、ダンジョンで過剰に宝箱を開けていくことも、なんだか、ダンジョンさんたちに悪い気がするのだ。



「もうすぐ出口ですよー」

 ダンジョンさんが言う。



 角を曲がると、先の方に、出口の光が見えた。


「うっは! ほんとにクリアできるぜ!」

「それじゃ、ギルドにもどってスキルをもらってきなよ」

「お前はどうすんだ」

「僕はまだなんのスキルもらうか決めてないし、ちょっと第千ダンジョンの下見をしてくる」

「先にクリアだけしておいてもいいかもしれないね」

「うん」

「もう行こうぜ! 早い方がいいだろ!」

 

 カジルが出口へと走っていくと、出口付近でカジルの冒険者証が光った。

「ごめんね、頼っちゃって」

 スランスの言葉に、僕は首を振った。

「早く行ってあげなよ」

「うん、ありがとう」

 

 スランスとミミは、カジルを追いかけていった。



 僕はついていかず、その場にとどまる。


「……ダンジョンさん?」

「はいー」

「ごめんね、無視しちゃって」

「だいたいのことはわかりましたよー」


「あと、壁に、剣が刺ささらないようにするアイテム、まだ持ってきてないんだけど」

「そんなのいいですよー」

「ううん、かならず持ってくるよ。ダンジョンあっての僕だから、なんとかしたいんだ」

「……はいー、お待ちしてますー」

 

「じゃあ、僕はこれで」

「あ、まだそこの床押せますよー!」


 ダンジョンさんが走って、最後の直線に入ったばかりところで手を振る。


 僕ももどっていくと、たしかにぎりぎりに青い床があった。

 手のひらサイズの青いポイントを押すと、出口の前あたりに宝箱が現れた。」


 なんだか細長い。


 開けてみると、杖が入っていた。



 太さは長さ三十センチくらいだろうか。

 先に、小さな赤い宝石がついている。


「なんだこれ」

「それ、魔法使いの杖、ですよー」


 そりゃそうだろうと思ったら、魔法使いの杖、という名前の杖らしい。


「武器類、って言っていいのかわからないけど、初めてこういうの出たなあ」

「一緒に来た人たちの影響かもしれませんねー」

「なるほど」


 みんながミミのために来たともいえる。

 そういう意味で、ミミに適したものになった?


「その杖、振り上げて、出ろ、って念じると、なにか出るらしいですよー」

「出ろ?」

 僕は振り上げて、念じてみた。


 すると、ぼわっ、と炎が出た。

「あっつ!」


 一メートルくらい離れたはいたけれども、一瞬、バランスボールくらいの大きさの炎が出た。


「びっくりした」

「炎が出る杖ですねー」


 魔法が出るタイプの杖ですねー、とダンジョンさん。


「え? でもこんなに一瞬で、モンスターを倒せるのかな」

「念じ続ければ、出続けると思いますよー」

「それに危ないと思うんだけど」

「もうちょっと遠くに出せばいいんじゃないですかー?」

「ふーん」


 遠くに出すイメージで。

「えい」


 ぼわっ、と一メートルくらいの場所に出た。


「あつっ」


 もうやだ。



 僕は、右手に槍、左手に杖というよくわからない格好で第百ダンジョンを出た。



 まだ時間が早いので、そのまま第千ダンジョンを見に行くことにした。


 僕はギルドでもらった紙を見ながら歩いた。


 一度分岐点までもどって、それから北へ。

 林の中の道を、一キロくらい歩いただろうか。


 道順にそってロープが張ってあったのでわかったけれども、なかったら余裕で迷っただろう。


 林を抜けたところからちょっと下ったところ、鍾乳洞の入口みたいなのがあった。

 第千ダンジョン入り口、という看板を見つけてほっとする。


 鍾乳洞のほうが、ダンジョンっぽいな、うん。

 第一から第百までは、遺跡っぽい。

 ……、まあ、それはそれでダンジョンか。


 入り口から入っていく。

 中に入っても、やはり鍾乳洞っぽい。


 天井が高くて、五メートルはあるんじゃないだろうか。

 幅はもっとある。

 


 入ってすぐ、でこぼこのかげに、女の子が横になっていた。

 はらばいで、ほおづえをついて、つまらなそうにこっちを見ている。

「あ、こんにちは」

「……ん?」

 女の子は僕を見る。


「こんにちは」

 もう一度言うと、女の子はさっ、と立ち上がった。


 ノースリーブにショートパンツという、夏の小学生のような格好をしていて、顔も童顔なのか、すごく若く見える。

 だが大人だろうとも思う。


 なんというか、お胸がかなり大人で、立ち上がっただけでゆっさっさー、とゆれているのだ。



「いまあたいに言ったか?」

「はい」

 あたい?

「なんであんた、あたいのこと見えんだ?」

 と歩いてくる。

 ゆっさり、ゆっさり。

 


「体質、ですかね」

「はえー! びっくりしたあ。はえー。ならちょうどいいや。ちょっと一緒に来てくれねえか?」


 彼女は僕の腕を抱きしめるように持つ。

 そうなると、僕の腕はお胸に埋もれてしまった。

 あたたかくて気持ちいいし、視覚的にはパニックだ。

 腕をくるんで血圧を測るやつの、最上位機種は、きっとこんな肌触りなんだろう。

 

「はい……、すべておまかせします……」


 彼女は僕の腕を抱きしめるようにしたまま、ぐいぐい歩き出す。


 ふらふらとついていく僕。

 煩悩マックスである。


 ……はっ!


「あ、ちょっとすいません!」

 僕は立ち止まった。

「んだ?」



「あの僕、モンスターと戦ったりできないので、あんまりかんたんに進んで、モンスターが出ると、命の危険が危機一髪で危ない気がするんですけど」

 そろそろやばいモンスターも出るだろう。

 胸に心を奪われて死んだらバカすぎる。

 ある意味本望だけど。


「なら、ほれ!」

 床に、赤い部分が現れた。


「やった」

 ここでも出してもらえた。

 なんとかなりそうだ。

 と思ったけど。


「これでわかんべ」

「いや、ちょっと待って!」


 赤い部分が現れたのは現れたけど。

 


 ゆるやかにカーブしていく道。

 三メートルくらい先から、床というか、地面というか、下全体が真っ赤なんですけど!


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