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11 僕はレアアイテムに好かれてる?

「こんなにもらっていいのかな」

「どうぞどうぞー」


 出口に近くなったころには、荷物がかなり増えていた。

 脱出石が四つ、ポーションは六個。

 現金は100ゴールド硬貨が八枚もある。

 日本円で8万円だ。

 とんでもないな。

 いや、でも通常は命がかかってるわけだから、そうでもないのか?



 あとは、第十ダンジョンで見かけたのとは別の腕輪、あと宝石がついたネックレスと、弁当箱を入れるような巾着袋があった。

 ネックレスは宝石がついてるからいかにも高そうだし、また腕輪が万単位ゴールドだったらどうしよう。

 巾着袋は、布がさらさらして手ざわりがいい、くらいだけど。


「ポーションでも入れておこうかな」

 ポケットにジャラジャラさせておくと、割れそうでこわいと思っていたのだ。

 と思って、一個、二個、と入れてみると。


「あれ?」

 なんか変だ。

 ……そうだ、中でビンが当たってる音がしないんだ。


「それ、合成小袋ですよー」

「合成小袋?」

「入れたものが合成されるんですー。出してみてください」

 中に入っていたのは、ポーションの二倍の大きさのビンだった。

 中身も二倍の量。


「倍ポーションです」

「はあ」

「あと二個入れてみてください」

 というので入れて、出してみると。


 ビンの大きさはポーションだけれども、中身の色がキラキラ光っている。

「ハイポーションです。腕が切られたりしても、くっつきますよー」

「すご」

 六個も拾ったから四個が省スペースになって良かったし、万が一のときは役立ちそう。

 

「その袋に入るものなら合成できると思いますー。できない場合もありますー」

「なるほど」

 あとでいろいろ試してみるか。



「でもナリタカさん、他の人とちょっとちがったアイテムが多いですねー」

「というと?」

「ふつうはもっと、武器とか、防具が多いんですけど。それも実践的なー。ナリタカさんは、装飾品とか現金が、多いですねー」


 たしかに。


「……本人の希望が反映されるとか?」


「それはちょっとあるかもしれません。他の人があんまり欲しがらないものを欲しがる人には、レアアイテムが出ることが多いですー」

「本当ですか?」


 冒険者はふつう、いくら稼ぎたいと思っていても、強くなりたいという気持ちがなければ、生きていけないだろう。

 そのあたりがどうしても、武器、防具などに反映されるのかもしれない。


 そこへいくと僕なんて、敵にあわないことが一番、とか考えているところもあるからね。


 僕はそうじゃなくて、もうかりさえすればいいから、レアアイテムだってバンバン出るのかもしれない。

 そういう金の亡者なのだ。


「誰が金の亡者だ!」

「はいっ?」

 彼女がびくっ、となる。

「あ、すいません」

 つい冷静さを失ってしまった。



「でも、こんなにもうかるってことは、第百ダンジョンって、もしかして、結構難関ダンジョンなんですか?」

「ナリタカさんは特別ですよ。ふつうは宝箱自体も出にくいですから」

「あ、そうか」


 たしかに、青い、宝箱が出る例の床の面積がかなり小さくなっていた。

 500円玉くらいの大きさしかない場合もあった。


「ふつうは、多くてお金が500ゴールドくらい、あとは武器とか、盾とかが、一個出るかどうかですねー」

「すくないんじゃ?」

「モンスターが、第十と比べると強いらしいんですよー。わたしはわかりませんけどー」

「第百さんには比べられないですからね」


「新人さんは苦労してますねー。必ず一回は出てくる、ウォージャイアント、っていうモンスターが強いらしいんですー」

「命の危険があるくらい?」

「はい。だから、第十ダンジョンに行ったほうが安定して稼げるっていう人も多いですねー」


 僕みたいなやつの場合、第一、第十である程度毎日稼いで、脱出石があまってきたら、ちょっとなにか拾えるかもって感じで第百に顔を出す、というやり方になるだろう。


 僕はダンジョンさんと知り合えて本当に良かったな……。

 

 ……あ!


「やばい」


 第一ダンジョンさんに会いに行くの、忘れてた。

 また行くよ、とかいってすっかり。



「僕はこれで行きますので」

「そうですかー、本当にー、ありがとうございましたー」

「どうも! うわ」


 出口付近で冒険者証が光った。

 そうか、クリアだ。


 中級冒険者、第一、第十、第百、と書き換えられていた。


「そうだ。また遊びに来るかもしれないので、そのときなにか欲しいものってあります?」

「え? ないですけどー」

「じゃ、通路の壁を防ぐようなものとか、なにかあったら持ってきますね。またケガしたら大変ですし」

「あらあら、すいません」

「じゃ、また」



 ダンジョンさんに好評な、パンでも買っていこうかな。

 そう思いながらダンジョンを出て、ダンジョン入り口のほうに歩きだした。


 するとそちらから、すごい速さで赤いものが近づいてきて、僕の目の前で止まった。


「うわ!」

「おい」

 さっきの赤い女性だった。


「お前、この槍をいつまで預けるつもりなんだ? ああ?」

 女性は僕をにらみながら、折りたたみの槍を返してくれた。


「す、すいません……」

「お前はわたしをなんだと思ってるんだ……」

「すいません」

 全然使ってないけど、槍。


「それとだな。いま、出口が光らなかったか?」

「光りましたけど」

「ダンジョンが復旧したのか?」


 あれ? 面倒なことになる?

 落ち着こう。


「あ、そうみたいですね。最後の方に、宝箱がちょっと出ました」

 僕はポケットから小ビンをひとつだした。

「ハイポーションが出たのか?」

「あ、え、まあ」

 たまたまハイポーションが出てしまった。

「ずいぶんめずらしいな……、まあ、不具合のあとだ、なにかあったのかもしれんが……」


 彼女がひとりでぶつぶつ言っている。 


「じゃあ僕は」

「待て。モンスターはどうだ」

「えーっと、僕のときは宝箱だけ出ました」

「うん?」

 彼女が僕を見る。


 なかなかの美人なのだけれど、モデル系というか、変な迫力がある顔で、ついつい怒られているような気になってしまう。


「あ、じゃあ、僕はこれで」

「そうか。また会うことになるだろう」

「はい」



 てきとうな返事をして、僕は第百から離れた。

 あの人、なんなんだろう。

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