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第1章 2節 始まりは突然に

松尾芭蕉は自由人である……風に身を委ねる雲のように…旅を愛し、句を愛す。


そう言えば格好良いですが、要は「俳句は読めるが、空気は読めない男」でした。容姿はすこぶる良いお方ですが…。

そんな芭蕉を制御できるのは、弟子の中でも「河合ソラ」という娘だけなのです。


そのソラは朝からバタバタと準備に追われておりました。今も芭蕉庵売却の為に、大家さんの元に出掛けている途中です。

それもこれも芭蕉の「ちょっと“みちのく”へ旅に出る」発言の為でした。


「先生の気まぐれにもほどがあるわ!!何が『道祖神呼ぶんだよね~』よ!」

路地中で急に昨日の芭蕉とのやり取り一人コントが始まり、それを見ていた町人がざわつきました。

「もう!むかつくーーーー!」

怒りと羞恥とでほっぺが大きく赤く膨らんでいました。ソラはそそくさとまた歩き始めます。


しかし、さすがは芭蕉の右腕と言うべきソラでした。

今回の旅はいつもと違う…と、何かを感じていたのです。


それは「路銀ろぎん(今でいう旅行費)」と「関所届」の問題がすべて済んでいたこと。

庵も売りに出すし、日本中に門弟とファンがいる芭蕉の事ですから、路銀は何とか調達が可能ですが、関所はそうはいきません。現代でこそ県境を考えず自由に他県へ行き来できますが、この時代「県」は「国」であり、他県への移動は海外旅行に近いものでした。当然、一俳人に簡単に許可が下りるとは到底思えません。ましてや芭蕉のあの性格上、彼がまめに役所に交渉、手続きに行ったとも考えにくい…のです。


「やはり…」と言うべきか、ソラは昨日迎えにきた駕籠の存在が怪しいと踏んでおりました。

そしてソラの推測通り、今回の旅は「芭蕉の気まぐれ」から生まれたものではなかったのでありました……。

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