表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
6/24

第2章−1話

「明日、ヒマ?」

金曜日の帰り道、別れ際にわたしは言った。

「うん。まぁヒマかな。あ、でも午前中クラブある」

「そうなんだ。じゃぁわたしもお昼までクラブだし、終わる時間はほとんど変わらないよね」

「まぁ、そうよね」

「じゃぁ2人で、午後からでいいからどっか行かない?」

もうこの時、麻里がわたしを裏切った事は発覚している。だからこそ、わたしはこんな誘いを持ちかけたのだ。

「どっかって、どこに?」

「さぁ・・・・・・。麻里が決めていいよ」

わたしはこのとき行きたい場所を決めていたけど、ついあと一歩を踏み出すことができず、話しの流れをあくまで自然に、自然に望む方向へもっていくことにした。

「麻里の行きたいとこって?」

「そりゃぁやっぱ、旅よ旅。電車乗って遠くいって・・・・・・」

「やだ、ぜーったいやだ。わたし今お小遣い止められてるの。ただでさえ高い電車賃は中学生になって2倍になったんだから、たまったもんじゃないの。だから、できるだけ無駄な出費っていうやつはしたくないの」

「あぁ分かった、この前のテストでしょ。そりゃあの点数じゃねぇ。自分が汗かき働いてかせいだ金を、ただのおバカさんに使われるなんて全く、たまったもんじゃないわねぇ」

「・・・・・・はいそうですよ、どうせわたしはバカですよ」

「そんな、冗談なんだから怒んないで」

「だってマジでやばかったんだもん、テスト。なのに『大丈夫だよ、これくらい』の慰めなしにバカバカばっかり言われて。言われたほうはたまんないよ」

話それてる。

出来れば、このままそれてほしい。

でも本当にそれたらわたしは壊れてしまう。ただでさえ、今我慢の限界なのにこれ以上耐えるようなことがあったら、わたしは何をするか分からないだろう。

「はいはい、ごめんごめん。特別に謝るからかわりに香織が場所決めていいよ」

思わず迷った。

チャンス、というものをわたしは自ら逃す性質なのかもしれない。もしくは変な優しさがあるのかもしれない。この前起こった事件、それをきっかけとして麻里を本気で恨んだ、はず。なのにまだわたしは麻里を許している。ひどいことをした麻里なんだから、どうなったって構わないのにわたしは躊躇している。

どうしようもない感情が体をかけめぐり、わたしは途方に暮れ遅刻した昨日の日のことを思い出していた。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ