第6章−1話
半年前、いやそれ以前からわたしは孤独だったし、故にわたしはいじめられさらに独りになった。やがて麻里と出会い仲良くなりいじめもなくなり、しかし麻里に一度裏切られわたしは復讐を決意した。でも結局いつのまにか復讐心は消えて終了、今までの関係により新鮮さを加えたつながりを取りもどした。
そう。簡単に言えばそう。でもわたしは表しか見ていなかった。
その裏にある麻里の苦しみを、全く分かっていなかった。
自己中心。
わたしは視野が狭かった。
「いじめられてるの、わたし」
麻里の言葉に、わたしは言葉を失っていた。
「あとね、わたしうそついてた」
「うそ?」
「うん。ずーっと、香織にうそついてた」
「・・・・・・」
「あ、でも心配しないで。今から言うことは本当だから」
本当でもうそでもどっちでもいい。
ただ、無理に笑わないでほしい。
出来る限り笑顔でいようとさっきから尽くしている麻里を、わたしはこのままだとずっと直視できないかもしれない。自分の心の中をのぞいているような気がするから。今まで精神が崩れないように必死で負けてはいけないと自分に言い聞かせひたすら強がりでも実際は相手がいたからやってこれた、というただただ役立たずの自分を見ているようで嫌だった。決して麻里をそんなふうに思っているわけじゃないけど、でもどこか重なって見えた。そのぶん、わたしは麻里に深く共感できたしそれに麻里の頭をなでてあげたいと思った。
「香織って小学生のときどんな感じだった?」
小学生?
「うん。わたしと香織、違う小学校通ってたでしょ。だってわたし初めて香織のことを知ったとき、誰か分からなかったもん」
わたしも、分からなかった。
「じゃぁ教えて・・・・・・あ、普通はこういうとき提案したほうから言うんだよね。うん、そうだよ。あのね、わたし、小学校の時からずっと一人だった。そのときはいじめられなかったんだけど、なんかこれ、っていう相手がいなかったの。何て言うのかなぁ。難しいんだけど。うーん、違うかもしれないけど、嫌われはしなかったんだけど気にされなかったって感じかな」
それって・・・・・・グリーンピース?
「えっ?グリーンピース?あぁ、あの緑の丸いやつか。小っちゃいよねぇ、あれ。それにあんまりおいしくない。なんとなく苦いんだよね。でもいまいち嫌いな食べ物としての意識はなくて。存在感があんまり無いからな」
ねぇ麻里。
「何?」
「吐き出しちゃっていいよ、全部」
「・・・・・・」
「そうしないと、一生苦しむ事になる。感情的になってよ。無理に笑われたって、逆にこっちが悲しくなるよ。だからさ、お願い。わたしに全部ぶつけて。受け止めてあげるから」
沈黙が続くその後、麻里は泣き崩れた。
疲れきって、何も残っていないような麻里に、わたしは何か慰めの言葉を言う前に・・・・・・肩に手をまわして抱きしめていた。泣き叫ぶ麻里の口元での声がわたしの耳でこだまして苦しい。しばらくしてから、麻里は全てを話し始めた。