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第3章−1話

復讐の作戦はこうだ。

わたしと麻里が制服を着てデパートに行く。次にわたしが万引きをする。ここで重要なのはわざと店員に見つかるくらい、のろまに商品をバッグに入れることだ。かなりの確率で店員に万引きを目撃される予定であるわたしは、予定通り店員に見つかりそして全速力で逃走。どうにか上手く店員から逃げきったであろうわたしは、一刻も早く麻里に万引きした商品をプレゼントだとか適当に言って渡し、デパートを何事もなかったかのように去る。おそらく店員は制服と学校を照らしあわせてわたしの通う学校にたどりつくだろうから、そのときになって万引きされた商品を持っている麻里は犯人の疑いをかけられるだろう。

もしかしたらこれは作戦じゃないのかもしれない。ていうか、誰が見ても作戦というよりはアニメの悪役なんかが密かに夢見る世界征服、というのに近いような気がする。そんなことどれだけの権力がある人にだって出来やしないし、おそらくしようとする人だっていないだろう。それくらい、成功率の低い希望なのだ。

失敗してもいい。正直、わたしはどうでもよかった。自分が何をしたいのかさえ不明だったし、目的すら分からない。ただ、想像力のないわたしにはこれが精一杯だった。麻里を痛めつけたい、苦しめたい、でもどこか違う。こんなことしたって、意味の無いように思える。

それでもわたしは止められなかった。

水晶はまだ光っている。あの不気味に、戸惑いながら光ったあの状態のままで残っている。だから、止められない。

クラブは休んだ。学校に来ているのに休むなんて、どうかしているだろう。自覚しながらもわたしはどうしても、この複雑な気持ちでクラブ活動に参加してしまったら、このまま麻里に会いたくなくなってしまうような気がした。

「今日、わたしは、万引きをするのかぁ」

口に出しても実感がわかないのは、わたしが今の中学生にしては珍しくコンビニもほとんど行かず制服もダラダラ着ず校則ですら守ったりする、万引きなんて犯罪とは無縁の生活をおくってきたからだろう。

振り返ればわたしは真面目すぎたのかもしれない。

勉強やスポーツクラブに励んでいたとかいわゆる品行方正という性格ではなかったけど、人並み以上は努力していたと思う。いじめられていたって、つまらないという理由だけで学校を欠席遅刻しまくっている人よりは確実に多く登校していたし、誰も見ていないところで悪事らしきものをはたらいた事もなかった。

じゃぁどうしていじめられていたの?

もう終わったことなのについ思い出してしまう。

わたしが浮いていたから?

ともだちがいなかったから?

誰かに問うて

「そうじゃないよ」

と慰めて欲しいけど、実際は自分の中でもう答えは分かりきっていて、これは事実でありまた認めないといけない弱さなのだ。

といったってわたしは自分に負けているとは思わない。

ただ、自分に勝っていたとしても他人には負けている。

これだけは認めたくなかった。

でも、今までの経験で嫌でも思い知ったことだった。認める以前に受け入れないといけない事実。

悔しい。

思わず唇を噛む。

うっすら血の味がした。赤い色ってこんな味なんだ、と思った。

瞬間、わたしはこのまま突き進んで大丈夫なのだろうかと、足がすくんでしまうくらいのいつか覚えた不安感に襲われた。

そのとき、雷の音がした。

ゴロゴロと空気を揺らしたあとピッカーンと空に亀裂をいれる。

空は一面暗い色で染まっていた。

幸いまだ雨の降る様子はなかった。でもいつ降ってもおかしくない、怪しい空の色だった。


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