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魔王になって復讐を  作者: 桐生紅牙
魔王の誕生
8/13

サリアとレイア

『前門の虎後門の狼』ということわざがありますが、今回は意味が少し違うでしょうか?


「どうしてこうなった」


 今考えればこうなることの前兆は確かにあった。

 もし過去に戻ることができるなら、俺は万難を排してこの状況を回避しただろう。

 そう思ってしまうほど今の状況は俺にとって詰んでいる。

 前には、いつものように笑顔を浮かべてはいるが何とも言えない威圧感をまとうサリア。

 後ろには、微笑みながら優越感をまとったレイア。

 そして周りにいる傭兵は同情の視線を俺に向けてくるが、俺の味方はいない。

 中には状況を楽しんでいるものもいる。


「本当にどうしてこうなった」


 そして俺は、こんな状況になるまでの過程を思い返した。




「此処がギルドですか?ご主人様」


「ああ、レイアはギルドに来るのは初めてか?」


「はい、仕事で傭兵に会うことはありましたが、ギルドの建物に来るのは初めてです」


 レイアの武装を整えた後、予定通りにギルドに着いたがレイアはギルドに来たことがなかったようだ。


「はい、死霊の討伐でも多くの傭兵を雇いました」


 そういうとレイアは少しだけ悲しそうな顔をする。

 死霊の討伐の後に起こったことを思い出したのだろう、気づかないふりをして明るくレイアに話しかける。


「それじゃあ中に入って登録をしようか、そしてクランのメンバーの一人目なってほしいな」


 俺がそういうとレイアは悲しそうな顔の代わりに微笑みを浮かべて返事をする。


「はい、ご主人様」


 レイアを伴いギルドに入る、するとレイアを見た者の目に欲望の色が浮かぶ。

 しかし先に入っていた俺の連れだと分かると、一瞬にしてその色が消える。

 傭兵たちがこのような反応をするのには理由がある。

 それは、俺がこの七日間でからんできた傭兵を全員容赦なく叩きのめしているからだ。

 サリアの人気は高くゾンゲのように命を狙ってくるものはいなかったが、サリアと親しそうにする俺が気に入らず、決闘を仕掛けてきたのだ。

 中にはAランクの傭兵もいたが、死なない程度に力は抑えて地面に頭をめり込ませえてやった。

 そして今では俺に絡んでくるものは、仕事に出ていて俺を知らないものや、自分なら勝てるという自信を持った阿保だけだ。

 傭兵たちからカウンターに視線を向けると、サリアがいつものように笑顔を浮かべてこちらを見ている。

 しかしどことなくいつもより笑顔が固い気がする。

 気にはなったがレイアの登録をしなければならないので、カウンターに向かいサリアに話しかける。


「連れの登録を頼みたいんだが、それとクランの設立手続きも頼む」


「登録は問題ありませんが、クランの設立ということはその人がヤコウさんのクランメンバーですか?」


 俺が返事をしようとすると、いつの間にか俺の斜め後ろに立っていたレイアが先に返事を返す。


「はい、私はご主人様の物でレイアと申します」


 微笑みを浮かべながらレイアが爆弾を投下し、その言葉を聞いた瞬間にサリアの浮かべていた笑顔が凍り付く。


「ヤコウさんの物というのはどういうことでしょうか?」


「言葉の通りです、私の心や体といったすべてはヤコウ様の物です」


 瞬時に返された答えを聞くと、サリアから威圧感が発せられ始めた。

 俺は不穏な空気を感じ始めていたので、話を速く進めてしまおうとサリアに話しかけるが、サリアとレイアに


「ヤコウさん(ご主人様)は少し黙っていてください」


 と抗うことのできない迫力を持って言われてしまい黙るしかない。


「ヤコウさんのクランのメンバーではないのですか?」


「いいえ、私はご主人様の物ですが同時にクランメンバーでもあります」


 そこでサリアはレイアの首にあるチョーカーの意味に気付く。

 この世界では奴隷に首輪などをつけることが義務付けられてはいないが、ほとんどの奴隷は首に何かをつけている。

 俺は義務でないのならつけようとは思わなかったがレイアがどうしても欲しがったのだ。

 理由を聞くと自分が俺の物であると、周りにもわからせたいと言っていた。

 俺は首輪は嫌だったので普通の人でもつけているチョーカーを勧めた。

 レイアは首輪のほうがいいと言っていたが、赤い宝石がついたチョーカーがレイアに似合うと褒めるとチョーカーにしてくれた。


「ヤコウさんの奴隷ですか?、それなら何の問題もないですね」


 サリアの顔に普段の笑顔が浮かび、威圧感も収まってきた。

 しかしレイアが二つ目の爆弾を投下する。


「確かに私はご主人様の奴隷ですが、私とご主人様の間には強固な絆があります」


 サリアから発せられる威圧感が元に戻る。

 レイアの言う通り眷属になったことで俺とレイアの間には強固なつながりがある。

 だがここでサリアが逆襲をする。


「私とヤコウさんの間に絆と呼ばれるものはありませんが、ヤコウさんと一番親しい女性は私ですよ」


 



 ここまでが現在の状況に至るまでの過程である。

 先に言ったように今はお互いが相手を伺い膠着(こうちゃく)状態にある。

 ここまでくれば確信しているが、サリアとレイアは俺に好意を寄せている。

 今まで女性との付き合いが少なく、自分の中で何かと理由をつけてそんなことはないと考えないようにしていたが、きちんと考えなければならない。

 そう思っているとレイアが口を開いた。


「私はご主人様を愛しています、そして共に歩み支えていこうと誓っています。ギルドの受付の貴女では無理でしょう?」


「私だってヤコウさんのことが好きです、それにもともと私は傭兵で、クランが解散した後に受付になったので一緒に行くことに何の問題もありません」


「ただの傭兵にはついて来ることはできません」


「私はもともとAランクです、いいですよねヤコウさん」


 そういって俺に聞いてくる、元Aランクなら実力も確かだろうし俺もサリアのことは嫌いではない、それどころか好意もある。

 復讐をするためにも強いものはいた方がいい。

 とりあえずサリアのステータスを見てみることにする。


ステータス

名前:サリア

種族:中位悪魔

称号:『特殊個体』『魔の才』


スキル:【並列思考】【思考加速】【火魔法】【水魔法】【風魔法】【水魔法】【土魔法】【闇魔法】【魔力強化】【無詠唱】【杖】



 文句のつけられないような強さである。

 あえて悪い点を挙げるとすれば近接戦闘の薄さだろうが、補って有り余るほど中・遠距離が強い。

 ゾンゲに困っていたのも、室内や人の多い場所で魔法を使うことを控えていたからだろう。

 それぞれの効果はスキル名どうりであり、組み合わさることで強力な効果を生み出している。

 【並列思考】【思考加速】【無詠唱】があれば魔法で弾幕を張ることができる。 さらに使える属性が多いので様々な状況に対応できる。

 俺はサリアを迎え入れることにして、レイアの説得を始めた。

 レイアの説得をしている間に、サリアはすぐに辞職してきた。

 そんなにすぐに辞められるのかと疑問に思ったが、好きな時に辞められることを条件に働いていたようだ。

 その姿とサリアのステータスを聞きレイアもサリアを迎えることを納得してくれた。

 もともと貴族の令嬢であり、強い男が複数の女性を娶ることもよくことなのだ。 レイアが気にしていたのは有象無象が集まることで、サリアはレイアからみて合格だったようだ。

 そうしてレイアはギルドに登録し、三人でクランを作った。

 クランの名前は決めていない、しっくりくるものが思いつかなかったのだ。

 ギルドを出た後はサリアの荷物をギルドの寮から宿に移した。

 この後はサリアに俺のことを話さないといけないだろう。

 それに俺は、レイアに話していなかったこともすべて話そうと思っている。

 二人の気持ちを聞いて隠し事はしたくなかったのだ。


 すべてを話し終えたら俺からも彼女たちに伝えよう

 二人のことを、俺も愛していると

 

  

夜行の告白、しかし平穏に波乱の影が忍び寄る


読んでくださった皆さま、ありがとうございます。

予想してくださった方もいましたが、夜行くんは修羅場に巻き込まれました。


戦闘描写も難しいですが、登場人物の心情をうまく表すことは素人には難しいものですね。

今回は特に遅い投稿になりましたが、少しづつ書いていくのでこれからもよろしくお願いします。

ブクマ、評価、感想をくれた皆様、読んでくれた皆様に感謝を。




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