嘘
総合評価が100を越えました。
これも読者の皆様のおかげです。
門へ近づいていくと依頼を受けて来た傭兵、物資を売りに来た商人、避難してきた領民といった多くの者たちが街に入るために列をなしている。
混乱が起きないようにするために、受付をする門番のほかに警備兵が動員されているようだ。
すると警備兵の一人が何かに気付いたようなそぶりを見せると、慌てて詰所の中にとび込んでいく。
少し経つと、他の警備兵より上等な装備をしたものが詰所から出てきて、こちらに向かってくるが、その顔は青を通り越して白くなっている。
おそらく、レイアに気付いた警備兵から知らせを受けた上司が対応をするために出てきたのだろう。
顔色が悪いのはレイアに対する引け目か何かを感じているのだろう。
そんなことを考えていると、目の前に来て声をかけてくる。
「お前たちは傭兵だな、身分証の提示とこの街に来た目的を言え」
命令口調ではあるが近づいたことでレイアと確信しているのか、声が隠し切れずに震えている。
身分証を提示して質問に答える。
「俺たちは依頼で、魔物の群れの討伐に参加するために来た」
そういうと顔の色が少しだけよくなったので、レイアが報復するために戻ってきたと考えていたのかもしれない。
「街に来た目的は分かったが、そのものを街に入れるわけには行けない」
「理由はなんだ?俺たちは特に何か問題を起こした覚えはないのだが」
大方予想はつくがこのままだと街に入ることができないので聞いてみる。
すると予想通りの答えが返ってくる。
「街には呪いに罹っているものは入ることはできない、そこいるものは呪いに罹っているはずだ」
あらかじめ考えていた答えを口にする。
「確かに呪われていたが、今は呪いなどない。疑うのなら鑑定系のスキルを持つものに確認させてみろ」
周りにいた警備兵たちは驚いた顔をしてレイアに視線を向ける。
注目を集めたレイアはというと、何を考えているのかわからない微笑みを浮かべている。
俺の言葉を聞いた上司らしき男は、後ろにいた二人の警備兵にそれぞれ何か命令するとこちらに向き直る。
「少し待つように、こちらで鑑定系のスキルを使えるものを用意する」
しばらくすると、命令されていたうちの片方の警備兵が一人の男を連れて戻ってきた。
「それでは調べさせてもらう、重ねて言うが呪いがあれば街に入ることはできないからな」
呪いが解けていることはないと思っているのか、顔には余裕が戻っている。
しかしその余裕は、連れてこられた男が調べ終わると即座に無くなる。
「この者は呪いに罹ってはいません、いたって正常です」
そう聞くと、上司らしき男の顔は初めて見た時のように白くなる。
「これで問題はないな、それでは俺たちは街に入らせてもらおうか」
「まっ!こんなことがっ・・・」
上司らしき男は何か言いたそうにしているが言葉になっていない。
俺たちは上司らしき男を無視して門へと向かい、何の問題もなく街に入っていった。
街に入ると、レイアを見た街の住人が驚きを顔に浮かべる。
住人の話に耳を澄ませると、死霊との戦いで重傷を負った、病気にかかっているなど理由は様々だが、最終的には領主の館で療養している事になっているらしい。
療養中であるはずのレイアが街にいて、傭兵らしき恰好をしていることに驚いているようだ。
レイアは住人の話している内容を聞くと、初めは驚いていたがだんだんと表情が険しくなっていく。
「レイア、大丈夫か?」
「無理はしないでくださいねレイアさん」
俺とサリアが声をかけると、レイアは硬い声で返事をする。
「少し時間が欲しいですご主人様、サリアも心配してくれてありがとう」
「サリアの言う通り、無理だけはするなよ。何かあればすぐに俺たちに言えばいい」
「そうですよレイアさん、私たちはヤコウさんの眷属なんですから」
とりあえずレイアの希望通り、時間をとるために宿をとることにする。
金の心配はないので、できるだけ高級な宿に決める。
宿では四人部屋をとることにした、分ける理由もなく領主が何かしてくる可能性も考えたからだ。
高級な宿だけはあり寝室など、いくつかの部屋に別れていたのでレイアを寝室に残しサリアとリビングで話をする。
「レイアさんは大丈夫でしょうか?」
「今はレイアの希望通りにしよう。レイアが復讐を望むなら手伝ってもいいし、何もしないのなら依頼を終わらせてここを去ればいい」
「わかりました。でもレイアさんが悲しい思いをしないようにしましょうね、ヤコウさん」
「そうだな、そんなことにならない様に気を付けようか」
サリアとの話が終わり、しばらくするとレイアが寝室から出てくる。
「ありがとうございます、ご主人様。気持ちの整理をつけることはできたと思います」
「そうか、それでレイアはどうしたい?このまま予定通りに依頼を終えて街を発つか、一族の奴らに復讐でもするか?」
「私は、これから私達に対して何もしてこないのならば、とくに何かしたいとは思いません。しかし一族の者がこちらに危害を加えてくるのならば決して許しません」
レイアは確かな思いを込めてそう口にする。
俺とサリアはレイアがもう大丈夫だと分かり、声をかける。
「レイアがそう決めたのならばそれでいい、もし何か危害を加えようとしてきても俺が返り討ちにしてやるさ」
「私もレイアさんもヤコウさんの眷属になって、前より強くなっているんですからきっと大丈夫ですよ」
俺たちの言葉を聞きレイアもいつものように微笑みを浮かべる。
俺はレイアの決めたように何もなければいいと思うが、きっとそうはならないだろうとこの街に来てからのことを思い出す。
レイアを見て顔色を変えた警備兵、奴隷になったことを知らされていない領民。
これ等のことから、領主にとってレイアが街にいることは都合が悪いと分かる。
そしてこの数時間後には俺の考えた通りになった。
夕食を終えて部屋にいると、宿の支配人が俺たちを呼びに来た。
領主の使いを名乗るものが来て、俺たちに領主の館までついて来るように言っているらしい。
宿の外に出てみると吸血鬼の男が、多数の兵を従えてこちらを待っていた。
「やっと来たか、傭兵ごときが俺を待たせるようなことをするな」
俺とレイアには侮蔑の視線を、サリアには欲に濁った視線を向けて明らかにこちらを見下した態度と口調でそう言うと、俺たちの返事を聞くまでもないと領主の館へ向かって歩き出す。
周りにいた兵が俺たちを囲み連れて行こうとする。
ここで全員を叩きのめすこともできるが、後でより面倒なことになると分かるので大人しくついていく。
領主の館に向かう途中で、吸血鬼の男が誰かとレイアに聞くと長男で次期領主ということが分かった。
ここまでくれば相手がこちらに気害を加えようとしていることは確定だが、何を話すのか興味もあるのでまだ手を出すことはしない。
それに相手が先に手を出してから返り討ちにすれば、貴族が相手だとどうなるかは分からないが後々都合がいいだろう。
しかしレイアやサリアに手を出し、危害を加えてくるのなら
俺の力の全てを持って
この世の地獄を見せてやろう
死すらも救いと思えるほどに
領主の館が見えてくる、これから館で起こることは館に使えていた者たちから伝わり、後に街の住人によって語り継がれることになる
一人の魔王の逆鱗に触れた愚かな貴族の話として
決して怒らせてはならない一人の魔王の話として
しかしそれはまだ未来の話
これから起こる惨劇をまだ誰も知らない
知る者がいれば惨劇が起こることもなかったのだから
領主の館で起こったことは
前書きでも書きましたが、総合評価が100を越えました。
ありがとうございます。
これからも少しずつですが頑張っていきたいと思います。
次は少しだけ戦闘描写にチャレンジします。
優しいまなざしで読んでくださるとありがたいです。